国語施策・日本語教育

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次第 議事(1)今後の運営について

前田会長

 ただいまの説明についてご質問があれば承りたい。なければ,これからの審議会の運営等についておはかりしたい。前期では,総会のほかに 漢字・かなの両部会と審議会全体の運営に関する運営委員会,それに基本問題を最終的に諮問の方向において検討するための小委員会が設置されていた。このうち,小委員会は,その審議経過報告からもおわかりのように,おおよその任務は終わったと思われる。そこで,わたしとしては,今期は,まず漢字とかなの両部会を設け,そこで専門的な検討をお願いしたいと思うが,これについて御意見を承りたい。

山田委員

 部会の構成について質問したい。ただいまの話では漢字部会・かな部会の2本立てということであるが,このうち,送りがなの問題をかな部会にいれているのは理解できない。送りがなはかなだけに関することではなく,漢字とかなに関する問題であるというように考えると,漢字・かなの両部会のほかに送りがな部会を設けるのが望ましいのではないかと思う。さらに根本的に考えると,音訓の手直しと関連して国語の正書法,つまり,国民が日常生活に使うところの基本的な立場で,どの部分を漢字で書き,どの部分をかなで書くかといったような正書法部会というものが,最も必要なのではないかというように考えられる。

大野委員

 山田委員の意見はまことにけっこうだと思うが,第8期で漢字とかなの両部会に分けられたのは,どちらも正書法ということをうたってはいないけれども,基本的には,正書法ということを常に考えに入れていたものであると思う。しかし,具体的にいえば漢字とかなの問題だということから結局はそうなったものである。そして両部会の共通の意識としては,それぞれの部会でかなり具体的な案が出てから,互いに持ち寄って正書法をどうするかということを検討するという考えが根底にあったと思う。音訓の問題についても,かなり細かいところになると送りがなの問題とも関連するので,いずれかな部会と合同で審議しなければならないというようなことは漢字部会長も考えておられたように思う。ただ正書法部会を一つ置けばよいということになると,かえって問題を区分けできない結果になるし,また今期は前期の作業をより深め,広めていくかという趣旨からいっても,あらためて正書法部会を設けるということは,かえって事の進行がはかどらなくなるのではないかと思われる。

前田会長

 ほかに御意見はないか。わたしとしてはさきほどの山田委員の御発言やそのほかのことも考えて,今期は,四つぐらいの部会なり委員会なりを設置してはどうかと思っている。つまり,前期同様に運営委員会および漢字とかなの両部会を設置する,さらに前期の基本的な事がらに関する小委員会に代わって,ただいま議論の出たようなところを総合的に調整していく一種の総合小委員会(仮称)といったものを設置してはどうかという私案をもっているわけである。この考え方に同調していただけるかどうか。まず,審議会の運営にかなりの成果を上げている運営委員会を前期どおり設置することについてはどうか。(異議なし。)

前田会長

 それでは,運営委員会の設置をまず決定する。次に,漢字部会・かな部会の設置についてはどうか。(異議なし。)

前田会長

 なお,前期では,会議の運営に関して,漢字・かなの両部会の審議にだけ重点を置くことには,当初かなりの議論があった。最終的には,総会が部会の報告を受けて全体としての審議を行なうというたてまえをとったわけであるが,率直にいって,総会は人数が多く,また,各委員の出席を求めるのにもかなりの困難があった。そこで今期は少なくとも審議会全体の意見の調整や運営の基礎的方向づけに関しては,ただいま御賛同を得た運営委員会が行なうこととし,そして審議の専門的事項については漢字とかなの両部会を設置してこれを中心に進める。そのためには,従来,つまり第61回総会で申し合わせた「両部会の委員の数は10名程度とすること。」というのを改めて 少なくとも20名程度にふやすことが必要ではないかと考えている。そうすれば,実質的には,それぞれの委員の意見を両部会に反映させていけるものと思われる。そこでおはかりするが,この各部会の委員の数を20名程度とするということについては御賛成願えるか。(賛成。)

前田会長

 こういう形になると,部会の開催回数も,当然,総会よりもより多くなってしかるべきではないかと考えるし,またそういう意味では,この部会を通じて総会の方向を内容的に具体化していくという方法をとりたいと思う。もっと詳しくいえば,今期は部会の開催はかなりひんぱんであっても,総会は必ずしもひんぱんである必要はないという考え方をとりたいということであるが,どうか。(賛成。)

大野委員

 賛成であるが一言申したいことがある。前期の漢字部会での経験からいって,部会での実質的な審議時間数を相当にふやす必要があると感じた。ところがこれに関連して,部会委員の数を倍にするということもたいへんけっこうなことだと思うけれども,定足数という問題が生じてくる。つまり,国語審議会令第7条には「審議会は,委員及び議事に関係のある臨時委員の過半数が出席しなければ,議事を開き,議決をすることができない。」という規定があり,この規定は部会にも準用されているのである。もし,これからの2年間のうちに漢字部会が新しい音訓表を決定し,漢字の字数に関しても相当な審議を進めようとすれば,おそらく週に1度ぐらい会合するつもりでないとできないと思う。はたしてこういうことが可能かどうか,定足数に満たない場合が相当にあるのではないかというようなことも考慮に入れて,いまの問題を考えてほしい。

古賀副会長

 会長の御提案の方向に進めることには賛成であるが,また,大野委員の心配されるような点もよく考慮しなければならないと思う。そこで,この問題を解決する一つの方法として,もし今期,部会の人数をふやすという会長の御提案が受け入れられるとしたら,各部会では,さらに細かい問題について班に分かれるとか,分科会を設けるとかの形式で仕事を進め,ある時期に部会としてのまとめをしていくという方法をとれば,大野委員の心配されるような点も救われ,かつ,作業も並行して行なわれて,能率的でもあるかと思うが,どうか。

山田委員

 ただいまの問題は,わたしがさきほど申し上げたことと相当に関連する。たとえば部会でやる仕事が多くなったから人数をふやすというのではなくて,最初からかな部会なら送りがなとかなづかいというような二つの小部会に分けて,それぞれ10人ぐらいの構成でやっていかれるほうが望ましいのではないかと思う。ただこのように部会を細分化した場合に考えられることは,あまり討議の内容が専門的になりすぎて,全体の方向を見失うことがありはしないかということである。この点を調整し,運営するものとして正書法部会が必要ではないかと,さきほどから申し上げているわけである。

前田会長

 ただいま,各委員から御指摘の点は,運営の実行上,じゅうぶん考慮するということで,基本的な組織のあり方等についてのわたしの提案を御承認願えればまことに幸いである。

木内委員

 部会の人数が20名程度ということは,当然,専門家でないかたも含まれるということを予想するものと思うが,部会での専門家と非専門家の役割についてどう考えるのか,また,総合小委員会についてもう一度御説明願いたい。

前田会長

 たしかに。専門家だけを20名選ぶという考え方ではない。しかし部会である限り,やはり専門的な事がらが中心となって審議が行なわれなければ結論が出にくいというような点も当然あることだと思っている。ただ,委員の数を20名にふやしたから,すべて部会に一任するのだというような簡単な割り切り方はわたし自身考えていない。次に総合的な小委員会については,実のところ,その正式な名称も,どういう目標に焦点を合わせるかといったようなことも,まだ具体的に考えていない。ただ,これまでの議論にも出ているように,両部会に関連する共通の問題や,あるいは両部会の審議目標の谷間にある諸問題について審議する一種の総合的な調整の役割を果たす小委員会を設けることが望ましいのではないかと考えるわけである。もし,この小委員会の設置に御賛同が得られるなら,今後,さらにみなさんの意見をも承わってここでの審議の内容を豊かにしていきたいと考えている。

大和委員

 会長のいわれるとおり,前期の小委員会の任務は終わったとも思われる。しかし世間の一部には,小委員会がその報告に掲げた国語の美しさ,豊かさ,正しさ,厳密さといったものの意味。内容について,もっと煮つめたものがほしいという声もあるし,基本的な問題について,もう少しその輪郭をはっきりさせたほうがよいということもある。これらについて総合小委員会が,両部会の谷間にある共通問題も含めて,討議の対象にしてはどうかと思う。結論としては,総合小委員会の設置には賛成である。

西島委員

 前期の小委員会の委員長を勤めたが,小委員会そのものは,任期終了まぎわに設置され,とにかく大急ぎで国語施策の問題点と取り組み,いちおうの結論を得てその任務を終えたわけである。今後・漢字・かな両部会からなんらかの結論が出,それを国語施策として取り入れていく場合,どういう方法,形態をとるかといったような問題が必ず起きてくると思われる。そのときにあわててまた小委員会を設置するということのないよう,平生から基本施策について考えておく機関を置いておくほうがいいのではないかと思う。なお,部会の審議を促進する意味でも国語審議会令で認めている専門調査員を置くことについて考慮してほしい。

前田会長

 わたしの提案した総合小委員会(仮称)は,ただいままで御意見を承わった問題をも含めて今後2年間継続して問題を明らかにしていくというたてまえにしたいと考えている。また専門調査員についても必要に応じて置いていくようにしたい。もし,ほかに御意見がなければ。あらためて審議会の運営のしかたについて確認したい。まず,前期どおりに運営委員会を設置すること,部会は漢字・かなの両部会とし・審議会の中核とすること,部会所属委員は各20名程度とすること,むろん必要に応じて部会委員以外のかたも部会に出席して意見を述べることは自由である。さらに,審議会の基本的方向が狂わないように,また両部会の谷間にある共通の諸問題等,これらを総合的に検討するために,正式な名称はともかく総合小委員会といったものを設けること,以上の考え方に対して賛同いただけるたらば,とりあえず会の根本運営の方針を決定したいと思うがどうか。(異議なし。)

前田会長

 では,そのように決定する。なお,運営委員会の委員については,今期は前期の継続であるという考え方から,もしみなさんの御賛同を得られるなら,ほぼ前期どおりとしたい。まず,会長。副会長のほか,木内,菅原,西島,細川,森戸の各委員,これに漢字・かなの両部会長と総合小委員会の委員長が決定ししだい加わるということで御了承願えるか。
(賛成。)

前田会長

 次に,漢字部会,かな部会,総合小委員会の委員については,さしつかえなければ会長に一任していただきたいがどうか。(賛成。)

前田会長

 では,そのように取り計らう。後日,各委員の御意見も伺いながら決定したいが,さしつかえないか。(賛成。)

安達文化庁次長

 部会の所属については,会長に御一任いただいたわけであるが,もし,各委員の中で所属部会について御希望があれば事務当局まで御連絡いただきたい。

平林委員

 前期には漢字部会に所属していたが,どうも専門的なことばかりでわたしにはよくわからなかった。今期は辞退したいという希望を申し添えておく。

前田会長

 部会には専門家でないかたも必要なので,ぜひ御協力願いたい。本日のおもな議題は,まず審議会の組織,運営の方法等について決定することであった。まだ,時間もあるのでこれからの全般的な問題について,御自由に御意見を承りたい。

遠藤(慎)委員

 さきほど大野委員から部会の定足数の問題で指摘があったが,部会委員の数が多ければ多いほど,過半数に達しないという心配が起こるのではないか。

古賀副会長

 前期では,部会委員全員が一つの問題をいっしょに審議していたが,これでは,たしかに部会委員が10名から20名になればそれだけ欠席率が高くなるかもしれない。そこで今期は,部会の中で班に分かれ,分業で並行して二つの問題を取り上げ,しかるべき時期に部会として全体の意見をまとめるというような方法をとれば,そういう問題もあまり起こらず,作業の能率化もはかれるのではないかと思われる。

遠藤(慎)委員

 国語審議会令にある定足数の規定を適用しないですむ方法はないのか。

安達文化庁次長

 ただいまの古賀副会長のお話のように,部会の中に研究班を設け,問題を分割,あるいは同じ問題を手分けして審議する,むろんこの中に専門調査員も加える,そして審議の全体の方向や考え方は,部会の出席者が過半数に達する見込みのもとに部会を開いて,専門家でない人の意見もじゅうぶんに聞くという方法をとれば,部会の開催回数は減ることになるが,これまでの総会審議と部会審議の長所を取り入れることにもなり,うまくいくのではないかと思われる。

吉国委員

 他の行政機関では,部会の内部に小委員会なり分科会なりを設け,その小委員会なり分科会なりでいちおうまとめた案を,部会で審議して部会としての意思を決定するという方法をとっている。だから,部会で小委員会なり分科会なりの案を御審議になるときに過半数の出席があればよいのではないか。

前田会長

 ただいまの意見のような方法で進めてほしい。

吉田委員

 前期の漢字・かなの両部会の審議に国立国語研究所の研究調査がどの程度参考になっているのか伺いたい。なお,今後,部会審議が具体的になってきたとき,国立国語研究所の基礎調査が,ますます効果的に参考に供されるよう希望しておきたい。

前田会長

 国立国語研究所の研究資料は,これまでの審議に非常に寄与してきたと思っているし,今後もその研究成果が,この審議会の方針決定に大きな位置を占めるものと確信している。

李家委員

 今期新しく委員に任命されたものであるが,本日,灘尾文部大臣の名によるなんらかの新しい諮問が出るものと想像していた。しかし,これまでのところでは,昭和41年の中村文部大臣の諮問を引き継ぐということであるが,この諮問理由は,いまから2年前の理由である。それに前期の経過報告を拝見すると,非常に詳細にわたっており,残る問題はあとわずかのような気がする。第9期に対して,改めて大臣諮問が別個の理由で出ることはないのか。この点御説明願いたい。

安達文化庁次長

 昭和41年6月13日の諮問は中村文部大臣の名義にはなっているが,あくまで文部大臣としての諮問であり,かつ,第9期には委員の多少の異動はあったものの,審議会そのものは継続しているわけである。前期では,この諮問にある「検討すべき問題点」のうち,音訓と送りがなの問題について審議したが,それもまた最終的結論には至っていない。したがって諮問そのものは,現在もなお継続しているのである。

前田会長

 ほかに意見はないか。なければ,次回の総会の開催予定についてみなさんのごつごうを承りたい。

大島委員

 前期の最終総会で,各部会等からの審議経過報告を承ったおり,この報告内容は妥当なものと思っていたが,最近,この報告内容に対して非常な反撃をしているパンフレットを見た。これを読むと,またもっともだと思われる点がわたしにはある。こういう点について一度専門のかたがたにお話を伺いたいと思うので,次回の総会は少し早めに開いてほしい。

前田会長

 それでは,部会所属委員の任命等の関連もあるので,よければ次回は7月29日(月)に開きたい。

安達文化庁次長

 前期の最終総会(第69回)の議事要旨の確認については,前期からの委員のかたがたの中で,特に御意見があれば御指摘によって訂正するということで,御了承願いたい。

前田会長

 本日はこれで閉会する。

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