国語施策・日本語教育

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次第 自由討議

前田会長

 引き続いて,自由討議にはいりたい。

木内委員

 まず,この第9期でどういう仕事をするかということだと思う。そのいちばん大事なことは,前期の小委員会の報告を煮つめていく方向の討議をすることだと思う,あれでだいたい方向は出ているが,ふえんすべきことは多い。また,あれは,特殊な必要上できた小委員会だから,必ずしも全面的に問題を扱っていない。それを取り上げることがこの第9期のなすべきことのいちばん大筋であろう。
 次にこれは討議の内容のことではなくて,討議の効率化の問題である。前期の両部会は,総会が問題を指定してその委託を受けて審議するということになっていたが,総会ははっきりした委託をしたことはない。こんどは,前期の小委員会で大筋が決まったから,もっとはっきりした委託ができるのではないか。これを,部会の構成が変わったこととも関連して考えていけばもっと能率の高い審議ができるのではないか。
 第3点は,全く種類の違うことである。第9期の審議の結論が出るのは,こういう会議の性質上2年先になると思うが,2年先まで全部を待たなければならないということは必ずしもないのであって,それまでになすべきことがあれば,この審議会が所要の手続きをとって推進できると思う。一例をあげれば,例の戸籍法関係である。これは,新しい当用漢字表をどれくらいの字数にするかというようなことが決まらなくてもできることかもしれない。そういうことは推進を図るほうがよいと思う。また,いつも問題になるのは,教育との関係である。前期の小委貴会では,これまでの制限から基準とするというように,大筋が決まったわけである。その基準とは,一般社会の基準であって,教育の基準ではない。しかし,わたくしは,教育とは義務教育に限らないが,基準を立てる必要のあるのは教育であるという趣旨を申してきた。
 前期の小委員会では,むしろ一般社会のある基準,それは努力目標であるということになったわけである。したがって,教育との関係ということを,新しく掘り下げていけば,整理がつくわけである。第9期で両部会もしくは一般問題小委員会で,なにか結論を出す前にもやれることがかなりあるのではないかと思う。

前田会長

 ほかにどうぞ御自由に。

木内委員

 申し落としたが,いま申したのは,だいたい一般問題小委員会で取り上げていいのではないか。今期は,総会はあまりたびたび開かれないことになっているから,次の総会にまにあうように,一般問題小委員会に大部分のことはお願いできるのではないかと思う。

前田会長

 ただいまの御発言のように,できることがあればするのは当然だと思うが,いずれ各部会なり委員会なりの開会とその経過を待って処置していいのではないかと,わたくしは考える。しかし,おおもとは,文部大臣の諮問事項であり,総会の方向としては,前期の小委員会の報告等もあるわけである。運営上,わたくしどもの根本的な研究と具体的な取り扱いをどう結びつけていくかという点がある。
 ただいまの御発言も考慮に入れ,事務当局でも研究をお願いして,なるべく今期の総会が成果をあげられるようにわたくしどもも努力したい。委員各位にも御協力をお願いしたい。

山田委員

 前回いただいた第8期審議会の部会等審議経過報告の中に,具体例が若干あがっているが,これらはどういう方法で選び出されたものであるか,2年間の審議の内容としては,わりあい少ないように思う。それは,部会内にいろいろ意見の対立があったからそうたったのかそれとも材料が不備であったからそうなったのか。どういう手続きを経てこのようなものができてきたか。これは,これから審議を要するものの何分の幾つであるかというようなことを,新しく加わった者として伺いたい。

前田会長

 これは,前期の部会の部会長からお答えいただくのがよいかと思うが……。そういう御意見・御批判もあるかと思って,今期の総会の運営の方法を変えたわけである。前期は,主として総会ですべてやっていくたてまえでひんぱんに総会を開いたものだから,部会は必ず総会でそれまでの成果を報告するというようなたてまえとなってしまった。したがって,部会の活動がある程度物理的に制約されるという結果もあったとうことを反省しながら,こんどは部会に大いに活動していただくという方向で,今期の審議会の運営の方法を改めたわけである。資料がそろわなかったということはないとわたくしは考えている。資料は豊富すぎるくらいだったが,ただ,審議会の運営の方法が総会中心主義だったために,各部会の審議が物理的にまた形式的に制限される場合が多かったという点を,今後改めたいと考えているわけである。また,議論は当然あり得ることであり,国語の問題は,ひとりふたりの専門家の問題でないので,わたくしとしては,議論を大いに歓迎したいと思っている。しかし,成果を得た限度においては,その議論は結論として一致したわけである。いまの御質問については,今後の運営の方法を変えることによって,おそらく御期待にそいうるような成果が出てるであろうということを,わたくしとしては強く期待している。

山田委員

 資料は豊富すぎるというようにいわれたが,前期の審議経過報告には,国立国語研究所で編集した「現代雑誌九十種の用語用字」だけしかあげられていない。ほかにこのような資料があったのか,それをどのように活用したかということについてお聞きしたい。

前田会長

 山田委員の質問は,部会審議の内容の材料の問題なので,漢字部会長からお答え願いたい。

岩淵委員

 材料として使ったのは,国立国語研究所の「現代雑誌九十種の用語用字」である。委員は10名だが,「現代雑誌九十種の用語用字」に出ている使用度数を参考にしたということであって,それ以外のことについては委員からいろんな意見があり,その意見に基づいて判断するという方法をとったわけである。
 それからもう一つは,全体の考え方を最初に決めていった。その考え方についていろいろ意見があって,これを調節するのに多く時間がかかった。一つ一つの問題を判断する考え方をまず最初に立て,それを1字1字の問題について考えていくという手順をとったわけである。
 それからもう一つお断わりしておきたいことは,音訓だけに部会の日数を全部かけたわけではないということである。そのまえに漢字の字種の問題等,当用漢字全体について相当議論した。それが10回ばかりあって,そのあと音訓に取りかかった。音訓については17回の会議を開いた。ただ,これは集まる時間がだいたい1回に約2時間ぐらいである。2時間では思うほどの進行が見られないわけで,これではだめだというので二日間かんづめになって仕事を進めたこともある。しかし,まだ完了には至っていないので,何分の一までいったかという御質問に答えることはむずかしいが,おおよその見当からいって,ほかのかたが8割ぐらいすんだであろうかといわれたが,そんなところかもしれない。もう一押しだと思う。

山田委員

 ここにあげている一例は,いろいろ拡大解釈を要する例が多くないか。

岩淵委員

 ここに出したのは,だいたい法則というような形でまとめたのであって,具体的には何百字になるか,いま正確には覚えていないが,検討した字全体は,ここには掲げてない。ただ,そこに書いたように,現在の当用漢字音訓表の中で,はたしてそのまま認めてよいかどうか,というような問題は残っている。ある程度問題になるものは,いちおうの検討はすんだ。そこにはわりあいふつうの例をあげたにすぎたい。

山田委員

 一般に知らせるときには,やはり代表例しかあげないのか。たとえば図式のようにしてあげるのか。

岩淵委員

 1字1字についてということになると思う。

山田委員

 そのことをわたくしは確認する。

岩淵委員

 いままでの音訓表もそうなっているのだから,そういうふうなものをつくるべきだと思う。

山田委員

 発表された音訓表の中に明らかに誤りと思われるものがあれば,今後部会で直すのか。

岩淵委員

 その検討をこれからしなければならないということを,そのあとのほうに書いてあるはずである。

前田会長

 先ほどから申し上げているように,部会および小委員会に御自由に御出席になって御発言いただく方針であるので,お含みおきのうえ,実効ある成果を上げることに御協力いただければ幸いである。
 ほかに御意見は。

久松委員

 わたくしは,前期かな部会の責任者であったから,一言申し上げる。かな部会は,はじめに送りがなの問題を取り上げるか,かなづかいの問題を取り上げるかといったことで,数回議論をして,結局送りがなを取り上げることにした。そして現行の送りがなについていろいろ検討した。さらに,活用語尾だけ送るということにしたらどうなるかということで,検討した。しかし,それだけではじゅうぶんではないということで,さらに方針をかえて,活用するものとしないもの,複合語と単一語などという別の組織でまたいろいろと材料を集めて,検討していった。それに相当の時間がかかった。そういう論議を尽くして,また,現行の送りがなを検討したときの資料なども参考にして検討した。
 部会委員も非常に熱心で協力してくださったが,あのへんまでしかできたかった。今期である程度の見通しは出せるだろうと思う。この間発表したものだけでは非常に抽象的でじゅうぶんでないと思うが,相当に論議を尽くし,みんなであそこまで協力したということで自信を得たので,一言申し上げる。

前田会長

 ほかにないか。それでは,本日の総会はこれで閉会する。

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