国語施策・日本語教育

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次第 一般問題小委員会(西島委員長)

前田会長

 なければ引き続いて,一般問題小委員会の審議経過報告をお願いする。

西島一般問題小委員会委員長

 一般問題小委員会はだいたい月1回,計6回の小委員会においていろいろ審議をいたしましたので,その経過を御報告申し上げます。
 まず,この小委員会でいったいなにを取り上げるべきかという問題について論議をしたのであります。前回の総会におきましても小委員会につきましていろいろ御注文があったようでありますが,そういう御意向も入れていろいろ議論したのでありますけれども,結局,まず「国語施策と教育との関連」ということについて審議しようということになったのであります。そういう関係で新たに第3回の小委員会から小学校,中学校,高等学校関係の3名の委員に,この小委員会に加わっていただくことにいたしました。
 第8期の小委員会の報告におきましては,「当用漢字表や当用漢字音訓表を一般社会に適用するにあたっては,厳格に制限的なものにせず,基準とする。」というたてまえをとったのでありますが,一般社会での基準と教育との関連というものについては,じゅうぶん検討する時間がなかったのであります。前期の報告の中にも「義務教育や,高等学校教育の場における漢字,および音訓の取り扱いについては,教育的見地にたった考慮を払うとともに,一般社会との関連にも留意して慎重に検討すべきものと考える。」というふうに書いておきましたけれども,これについてさらに突っ込んだ審議がなかったのであります。
 そこで教育の場,ことに義務教育の場について,どのように適用すべきか,一般社会に対して基準としたのと同じ態度をとるかどうか,さらに当用漢字別表,いわゆる教育漢字表の性格をどうみるか,今後,これをどう取り扱うか,などの問題について論点を絞って検討したのであります。
 この問題に関連しまして,改訂学習指導要領の問題や国語審議会と教育課程審議会との関連についても検討を進めてみたのであります。
 この当用漢字別表が制定されました当時は,一般社会で用いられる当用漢字を別表の程度にまで滅らしていきたいという考え方が非常に強かったのであります。しかし,こういう考え方はしだいに薄らいでまいっております。教育漢字というものは,一般社会で用いられる漢字の基礎を義務教育で教えるという性格のものと解すべきでありまして,漢字の字種,音訓につきましては,社会で使われるものを,全部が全部,義務教育で提出するというのは,理想としてはともかく,教育技術的には不可能に近いように思われます。義務教育では社会生活のための基礎となるものを与えればいいというふうに考えるものであります。
 また,当用漢字の場合の基準という考え方は,制限ではないが,なるべくこれで済ませるという趣旨のものでありますが,義務教育の場合も,やはり厳格に制限と考えるのは好ましくなく,基準と考えるべきでありますけれども,その場合の基準という考え方は最低基準であって,これだけはどうしても教えるという意味のものでなければならないと考えられるのであります。
 現行の学習指導要領では,小学校6年間で800字から881字を読ませ,そのだいたいを書かせることにたっており,中学校3年間には881字を使いこなせるとともに,その他のおもな当用漢字も読めるように指導しております。
 ところが昭和46年度から実施予定の小学校の改訂学習指導要領によれば,小学校では別表の漢字881字プラス120字ぐらいを読み,別表の漢字を主として,当用漢字のうち800字ぐらいを書けるようにし,また昭和47年度から実施予定の中学校の改訂学習指導要領案によれば,中学校では別表の漢字881字,および小学校学習指導要領の学年別漢字配当表の備考の漢字115字を主として1,000字程度の当用漢字を使いこなすこととしています。
 そこで義務教育で用いる漢字については,読みと書きとの関係をどう考えるべきか,読み書きともに習得せしめるべきか,読みと書きとを分離するかという問題が出てまいります。国民の大多数は,新聞,雑誌などを読むが,書く機会は少ない。読むことに対して,必ず書くことを要求するのは問題であります。しかし,学習の段階では,正確に書くことができないと,読みの認知も不正確になるといわれております。したがって少なくとも小学校の低学年では,読みと書きとを一致させていく方針がよいという意見が出ております。しかしまた,上級に進むに従って読み書きの力は分離していくことが考えられます。これらの問題は国語審議会でも検討すべき問題でありますが,同時に教育現場の問題として教育課程審議会で取り上げるべき問題であります。
 漢字の字種のほかに音訓の問題があります。音訓についても一般社会と教育とを接近せしめることが望ましいけれども,義務教育で指導すべき音訓については義務教育で用いる音訓表のようなものを別に設けるか,あるいは,将来できるであろう改定音訓表の中で×印でもつけて義務教育にふさわしくないものは指導しないこととしてはどうか,つまり,新しくふやす音訓を全部義務教育に適用する必要はないだろうとの意見が出ております。
 送りがな,かなづかいについては一般社会と義務教育との間にずれがないほうが望ましいが,将来,送りがなやかなづかいを改定するような場合には,学校教育の独自性を考慮して,多少幅をもたせることも考えてよいとの意見が出ております。
 なお,当用漢字別表は,内閣告示で一般に公示し,学習指導要領でそれを採用しておりますが,今後の公示の形式として義務教育で用いる漢字の表は,最終的には学習指導要領の内容として,文部省告示で公示されるのがよいと考えるべきかどうか,あくまで内閣告示を必要とするかどうかという問題がございますが,この形式についてはまだはっきりした結論が出ておりません。
 最後にこのように教育漢字表の性格や内容を論議したあとの問題としまして,今後教育で使われるべき漢字の検討は,国語審議会と教育課程審議会とどちらが主として当たるかという問題が残るわけであります。当用漢字別表は,昭和22年9月の国語審議会で議決したものを昭和23年2月に内閣訓令・告示で出したのであります。その当時は,教育課程審議会はまだなかったのであります。その後,教育課程審議会が生まれまして,学習指導要領を作成し,教育漢字の学年配当などを,その手で行なっております。この当用漢字別表の改善のための検討につきましては,文部大臣の諮問の中にもございますから,いずれ漢字部会が審議にあたるものと思われますけれども,たとえば漢字部会には第1基本漢字,第2基本漢字などの構想が出ておると聞いておりますが,いずれにしましても今後,教育漢字表を改定する場合には,教育課程審議会と密接な関連をとっていく必要があるという意見が出ておるわけであります。
 一般問題小委員会のだいたいの経過はこの程度でございますが,なお私の報告で不足のところは,委員会の委員の各位から補っていただきたいと存じます。

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