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第74回国詰審議会総会(昭和45.5.27)議事要旨

 文部大臣あいさつ
 文部大臣から,過去2か年にわたる各委員の審議に対する謝意と,次期に,諮問の一部について答申を期待する旨のあいさつがあった。
 庶務報告
 国語課長から,菅原卓委員の死去(昭和45年5月3目)と専門調査員(昭和45年1月14目付け,武部良明,野村雅昭,林四郎の各氏)の任命について報告した。
 議事要旨の確認
 前回の議事要旨を確認した。
 各部会報告
 漢字部会長から「当用漢字改定音訓表(案)」(「『異字同訓』の漢字の用法」および「訓の一覧表」を含む。)について,かな部会長から「改訂送りがなのつけ方(案)」(「現行の『送りがなのつけ方』と『改定送りがなのつけ方』との対照表」を含む。)について,一般問題小委員会委員長から「一般問題小委員会審議経過報告」についてそれぞれ報告した。
 以上の報告ののち,「当用漢字改定音訓表(案)」および「改定送りがなのつけ方(案)」は,それぞれの部会の希望どおり,その試案として世間に公表して意見を求めることを了承したい旨はかった。「改定送りがなのつけ方(案)」を公表することについては反対意見が出たが,結局,委員多数の賛成により,それぞれの部会の試案として世間に公表し意見を求めることを総会として了承した。
 以下は,この間に出たおもな意見である。
 (1) 「改定送りがなのつけ方(案)」を試案として公表し,世間の批判を聞くことは慎重にしたい。なぜならば,「改定送りがなのつけ方(案)」の「前文」で述べている現行の「送りがなのつけ方」に対する批判は,そのまま今回の案にもあてはまるものだからである。
 形式的には,ア 活用語は,その活用語尾を送る,したがって,活用のない語は送りがなを送らないということを主要な原則とする以上,これを大分類の基準とすべきであるにもかかわらず,「単独の語」,「複合語」というような,自らが便宜的な分類と認めているものを第1にもってきたという分類上の混乱がある。イ 活用のない語は送りがなをつけないとしながら,副詞・連体詞・接続詞という活用のない語は「又」を除いてすべて送りがなをつけることになっている。これらは例外として取り扱うか,あるいは,活用語および副詞・連体詞・接続詞は送りがなを送るというように論理的に一頁して整理すべきところである。ウ 通則1から通則9まで,必ずしも同じ重みで並んでいない。通則9は通則8のただし書きにしかすぎないし,通則2は通則1の,通則4は通則3のそれぞれ例外でしかないというように通則間に不均衡がある。したがって,全体の構成を組み直す必要がある。
 具体的な内容面では,はっきり現行の「送りがなのつけ方」と違うのは「係」,「並」の2語だけである。仮に本則だけに限っても16語にすぎない。この程度の変更で,「改定送りがなのつけ方(案)」と称して世間に公表することは,いたずらに世間を混乱させるばかりである。
 (2) 当初,かな部会では「送りすぎにならないようにする。」ということを改定方針に掲げていたが,今回の案では,これが削除されている。しかし,かな部会の課題は,現行の「送りがなのつけ方」が送りすぎであるという非難を解消することにあったはずである。このことは,結局いろいろやってみたけれども,今回の案のようにしなければならないということであろう。それならば,まず,現状を尊重して,それを原則として案をたてる,ただし,送りすぎだという人のためには,別の系列の案もたてるというように,2本だての方式でまとめればよい。そうすれば,国民の理解も得やすく,学校教育での混乱も避けられるのではないかと思う。なお,「前文」に「本則」,「通則」,「法則」,「原則」という四つの語が出てくるが,これが非常にわかりにくい。他にも文章や,ことばの使い方のうえで混乱がある。特に,この「前文」では,いったい送りがな法を決めたのか,決めないのか,あるいはどうでもよいとしたのか,全く理解に苦しむ,この「改定送りがなのつけ方(案)」をこのまま世間にさらすことには賛成しかねる。重要た問題が説明なしに通過してしまうのは困る。まず内部の意見をよく聞いてから,世間に公表するのが手続きである。
 (3) 世間では,早急に案の出ることを期待している面があるが,「改定送りがなのつけ方(案)」のように国語審議会の内部でも問題のあるものを試案として世間に公表することにも,国語審議会の責任上問題がある。
 もともと送りがなは奥底のはかり知れない困難な問題であるだけに,より慎重を期すべきである。できれば,この際,この案を完成させるために建設的な協力をしてくれる者があるならば,もう少し時間をかけて検討し,少なくとも国語審議会の内部でこれが一致した案であるというものを出して世間に公表することにしてはどうか。
 (4) かな部会としてもいろいろの点を考慮に入れて検討の結果,これを試みの案として世間に示したいということである。なお,もろもろの意見を参考にして仕上げをするということを考えている。
 (5) 「当用漢字改定音訓表(案)」および「改定送りがなのつけ方(案)」の両案とも一つの案が出たということで,一般の人々の間で議論することができる状態に達したと思われるので,早急に試案として世間に公表したい。欠点があるならあるで試案として国民に問うものであろう。
 (6) 送りがなには,ア 活用語尾を明らかにする。 イ 漢字の読みを助けるという二つの機能がある。「ア」の機能は理論的に検討可能であるが,「イ」の機能は,世間一般の漢字に対する理解と相関関係にある。つまり漢字の読みを助ける送りがなをどこで切るかは,少数の者,あるいは,どんなに偉い国語学者でも決めるべき性質のものではない。そういう意味では。試案として国民に問うことには意義がある。
 (7) 試案として公表するについても,「国語審議会内部でもまだ異論があるが,この点については外部の意見ともあわせて次期で取り入れて最終的なまとめにしていきたい。」という説明をつけて発表してはどうか。
 (8) 「改定送りがなのつけ方(案)」は,国語審議会の内部の意見もある程度取り入れてまとめたものである。送りがなのように学問的にわりきれない問題は,国民に便利なように,また簡便に理解できるようにと配慮をすると,どうしても論理的に一貫しない面が出てくるのはやむを得ないことである。この際,かな部会で委員の意見の一致をみてまとめたものであるから世間に公表したい。
 (9) 両部会の案ともに真剣な討議の後,部会長が責任をもってまとめられた以上,総会での取り扱いは,部会試案として公表することを了承してもよいのではないか。
 (10) 本来,送りがなというのは,音訓が決まらないかぎり決められないものである。これを常にいっしょに取り扱おうとするところに問題がある。
 (11) 両部会が並行的に審議を進めて今日に至ったのであるから,どちらが先かあとかの議論は適当でない。両部会のそれぞれの試案として世間に公表することに賛成したい。

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