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第77回国語審議会総会(昭和46. 3.29)議事要旨

 庶務報告
 2月20日付けで三樹精吉委員が辞任し,その後任に岡村二一委員が発令され,かな部会所属となった旨,国語課長から報告した。
 議事要旨の確認
 前回の議事要旨を確認した。
 各部会,小委員会の審議経過報告等
(1) 漢字部会長から,おおむね次のような報告があった。
 ア  基本的な考え方について審議し,次のとおり再確認した。
(ア) 現代の漢字・かなまじり文を前提とすること。
(イ) 一般の公共生活において漢字を使用するためのものを考えていること。
(ウ) 書くためのものであること。
(エ) 一応の「目安」であること。
 なお,当用漢字の字種についても,なるべく早く検討する必要があること,改定音訓表と義務教育との関係についても検討する必要があるという意見が部会委員から出ている。
 イ  試案に対して寄せられた各方面の意見を分析しながら個々の音訓を検討している。
 試案に掲げた音訓のうち,削除の意見が出ている音訓が578,追加の意見が出ている音訓が706あるが,改定の基本方針はおおむね世間一般に了承されている。
 ウ  副詞や接続詞だけに使われる訓は現行の音訓表でも認めてあるが,他方,当用漢字表の「使用上の注意事項」で,これらはなるべくかな書きにすることとある。このような訓を広く認めるべきかどうかについて,多くの意見が出ているので,音訓小委員会で審議している。
 エ  「あやうい,あぶない(危)」,「うお,さかな(魚)」,「けがす,よごす(汚)」,「あく,ひらく(開)」など同字異訓は,基本的には少ないほうがよいかもしれないが,「現代の国語」を「書く」という立場から慎重に検討している。
 オ  「会,合,遭,遇(あう)」などの異字同訓も問題があるが,これから検討していく。
 カ  上の事項と関連するが,現行の音訓表に掲げてある音訓についても検討した。その結果,音訓小委員会は,これらを削除するのはいろいろ問題があるのではないかと考えている。今後漢字部会で検討していく。
 キ  付表に掲げるべき語の選択,および,付表に掲げたものと本表の音訓欄や備考欄に掲げたものの区別について意見が出ており,付表のまとめ方などは多少変える可能性がある。
 ク  表の作り方について,本表の音訓欄,例欄,備考欄,および,付表をもっと整理すべきだとの意見が出ている。また,試案では音訓をできるだけ親切に掲げるという方針をとったが,たとえば,音便,連声,連濁になる場合の注意のしかた,および,備考欄に掲げたものの整理についても慎重に審議していく。
 ケ  今後の見通しは,音訓小委員会を3回ぐらい,漢字部会を2,3回開催し,5月ごろには一応なんとかまとめたいということで審議を進めている。なお,音訓は,なるべく早く審議を終えて,当用漢字の字種について審議したいと考えている。
(2)  かな部会長から,おおむね次のような報告があった。
 ア  試案に対して各方面から寄せられた意見のうち,基本方針としては,1 全体の構成のしかた(単独の語と複合語,活用語と活用のない語という分類のしかた),2 例外・許容,3 複合語(特に,複合名詞),について検討することとした。
(ア)  全体の構成のしかたについて,試案の構成のしかたがよいという意見と,まず,活用語と活用のない語に大別して,それぞれの中を単独の語と複合語に分けたらどうかという意見の2様の意見が出ていた。部会としては使用する者にとってどのような構成をするのが便利であるかという観点に立って後者の構成のしかたについても検討した。その結果,新しい構成による場合,いくつかの問題点が生ずるので,各通則を検討したあとで,さらに検討することとした。もっとも,部会としては,試案の構成のしかたのほうがよいという意見が多かった。
(イ)  例外・許容を再検討し,できるだけ整理する方針で臨んだ。たとえば,
  •  通則1を組み替えることも検討した。その結果,例外(1),(2)は,法則的なものであるから,本則に組み入れたらどうかという意見も強かったが,現在のところ,組み替える必要はなく試案を尊重すべきであるとの意見が多い。
  •  慣用についての一つの客観的な目安になる資料として,内閣官報局の「送仮名法」など明治時代のもの,文部省国語調査室が出した「送りがなのつけ方(案)」(昭和21年)など,現行の告示が出る前のもの,そして「新聞用語集」(昭和44年)など,現行の告示が出たあとの資料を使ってきた。これらの資料に照らして,通則1例外(3)に掲げてある語は試案のままとし,ただ,説明のしかたを再検討すべきであるということになっている。
  •  通則1の許容に列挙してある語も,各種の送りがな法に照らして判断したので,だいたい,試案のままとするか,多少構成を変える程度になるのではないかと思う。
  •  通則2のいわゆる派生・対応関係にある語も広い意味からは通則1の例外ではないか,通則1の本則で貫くべきであるとの意見もあった。また通則2の許容に関して改定音訓表(案)に載っている同類の語174語を取り出して分類したもので各委員が判断するとともに客観的な資料を参考にして送りがなのつけ方を決め許容に掲げるべき語を整理した。
 イ  審議を6月末ごろまでには終えたいと思うが,かな部会に所属していない委員も出席できる適当な機会を設けて意見を伺うことにしたい。
(3)  一般問題小委員会委員長から,おおむね次のような報告があった。
 ア  国語施策を公示する方法について
(ア)  第8期で,国語施策の公表は,従来どおり,内閣訓令・告示が適当であると考える旨報告している。今期もこれを確認した。内閣訓令・告示が国民全体を拘束すると解釈するのは誤りである。ただ表現に注意して,全国民を拘束するかのような感じを与えないようにすべきである。
(イ)  また,訓令・告示をする場合,1現行の訓令・告示を廃止する,2新しい訓令・告示で現行の訓令・告示を改正すること,の二つの方法があるが,改定にあたっての根本的な考え方が変わるので現行の訓令・告示を廃止すべきだとの意見が多かった。
(ウ)  訓令・告示の内容について,改定の精神を訓令・告示の中ではっきり述べるべきだとの意見もあるが,一方,できるだけ内容を簡単にし,改定の精神は,たとえば文部大臣の談話とか国語審議会の方針などで示すべきだという意見もある。いずれにしても,訓令・告示の内容は関係当局で検討し,国民を拘束するものではないが,皆が守っていこうという精神を盛り込むようにしたいと希望している。
 イ  国語施策と教育との関連については,第9期の一般問題小委員会の審議経過報告の中でも,国語の教育の振興に関する施策として4項目を取り上げたが,今期もさらに国語の教育の現状を分析し,義務教育だけでなく,高等学校・大学を通じて国語の教育を充実すること,単に国語科の時間数だけでなく,全教科を通じて国語の教育の重要性を強調することが必要であることなどを認めた。そこで,改定音訓表,改定送りがなのつけ方の答申とともに,国語の教育の振興に関しても,国語審議会の名で建議したいと考えている。その内容は小委員会で検討を続けることになっている。
(4) 古賀副会長から,運営委員会で協議した次の事がらについて報告し,了承を求めた。
 ア  前回の総会で,各部会案ごとに別々の総会でじゅうぶん時間をかけて審議することができるようにしようと決めたが,そのほかにそれぞれの部会案がある程度まとまった段階で,総会前に部会ごとに全委員に対する説明会を開いてはどうかと考えた。
 イ  かつての総会で提案のあった合同小委員会の設置については,もう少し審議の進行状況をみたうえで検討することとしたい。
 以上の部会,委員会の報告に関し,各部会から報告のあった方向で,また,運営委員会が考えている方法を取り入れて審議を進めることを了承した。

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