国語施策・日本語教育

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第80回国語審議会総会(昭和47.6.28)議事要旨

 議事要旨の確認
 前回の総会の議事要旨を確認した。
 「当用漢字改定音訓表」と「改定送り仮名の付け方」の答申の決定
 「当用漢字改定音訓表」と「改定送り仮名の付け方」とを正式に答申することを決定した。なお,この決定に先立ち,おおむね次の意見が述べられた。
 「改定送り仮名の付け方」の前文の運用の4に「学校教育においては,この『改定送り仮名の付け方』が適切な配慮の下に運用されることが望ましい。」とあるが,この点について,かな部会の議事要旨によれば,「義務教育では,本則・例外を教え,高学年では,許容もあわせて教える。」というように,学習指導の技術的な観点から議論している。そのような技術的な配慮よりも,もう少し高いレベルの配慮をお願いしたい。このことは,運用の1と関連していると思う。つまり,運用1では,「……本則,許容のいずれに従ってもよいが……」,とあり,これは,「本則」と「許容」とを同じ重みづけにして,どちらを使ってもよいという表現である。この考えは,試案の「将来は本則に統一することを志向して」と比較して著しく変わったものである。これが今回の「改定送り仮名の付け方」のいちばんユニークな点である。この考えが,「……適切な配慮……」と関連して矛盾しないようにしてほしいということを申し上げたい。
 具体的には,今後,教科書の検定の際,「本則」に統一しないということであり,また,そうあってはいけないということである。つまり,教育の技術的な段階づけは別として,教育の目標として「本則」に統一するということがあっては,運用の1の趣旨に著しく違反するということである。
 詳しくいうと,中学校以上の教科書に原文をそのまま採るような場合は,その送りがなが,この「改定送り仮名の付け方」の「許容」の範囲であればけっしてそれに手を加えることのないようにしてほしい。つまり,統一することのないように,これは教科書関係者,特に文部省の教科書検定の人にお願いしたい。
 本則に統一しないと,これから行なわれる世間の送りがなは,ある意味では,不統一にすることになるが,ある意味では,ゆとりのあるものにするわけである。そうした意味で「許容」と「本則」が同じ価値においてある。「許容」の空どう化をしばしば警告したが,運用の1の趣旨を徹底すれば避けられるわけである。運用の4との関係で,実際が左右されるわけで,学校教育でどうであるかということによって,NHKを初めとしたマスコミが,それに従うことになる。
 したがって,「……適切な配慮の下に……」を内容の高い次元で,つまり,今,述べたような考え方が浸透するように関係者に希望したい。
 「国語の教育の振興について」の建議の決定
 一般問題小委員会委員長から「国語の教育の振興について」(建議)を報告し,建議することを決定した。
 一般問題小委員会委員長の報告は,おおむね次のとおりである。
(1) 一般問題小委員会は,第8期で,漢字部会,かな部会の両部会にまたがる問題とか,両部会の谷間にある問題を審議するという趣旨で設けられたものである。小委員会を第8期に5回,第9期に18回,第10期に13回,そのほか説明会1回,合計37回の会議を重ねた。
(2) 審議の経過としては,第8期では「国語施策の訓令・告示のあり方」などをまとめて報告した。第9期では,「国語施策と国語の教育との関連」について検討し,その結果を報告した。これらの審議をとおして,国語の教育の重要性を強調する必要があることを痛感し,第10期になって,「国語の教育の振興について」の建議案を作成した。この案は,昨年の秋に全委員に送付し,意見を求め,それを参考にして,さらに検討を加え,全委員に対する説明会を開催し,また,全員協議会でも説明を重ね,このたびこの最終案を報告する段取りとなったものである。
(3) 内容は,すでに説明会,その他で御承知のことと思うが,ただ,こういう建議をするにあたって,もっと具体的な事項を述べるべきだという意見があった。
 たとえば,学校教育に対する注文として,「ア 国語科の授業時間数をふやすべきだ。イ ほかの教科でも国語の指導を行なうべきだ。ウ すべての教科の教員免許状の付与条件として国語の単位を必修にすること。または,教員養成課程の必修科目として,あるいは,基礎科目として国語を取り入れるべきである。エ 大学での論文指導などで,国語としての表現についても指導すること。」などの意見があった。
 しかし,このような具体的な事がらは文部省や学校自体が専門的立場から綿密な検討を加え,結論を出し,実施すべきものと考えたので,この建議案では,基本的な考えだけを述べ,国語の教育がゆるがせにできないことを強調したのである。
 答申書および建議書の提出
 会長から次のような発言があり,答申書および建議書を文部大臣に手渡した。
 実施の方法としては,従来の内閣訓令・告示で行なうことが,適当であろうと考えたが,ただ,その表現は,細心の注意を払って,全国民を「告示」および「訓令」で拘束するかのような感じを与えないように,当局においては善処してくれるよう希望したい。
 大臣あいさつ
 ただ今,「当用漢字音訓表」および「送りがなのつけ方」の改定についての答申と「国語の教育の振興について」の建議をお受けした。
 現行の国語の書き表わし方のよるべき基準は,昭和21年に内閣訓令・告示となった当用漢字表,現代かなづかいをはじめとする一連の訓令・告示であるが,これらは実施の経験等にかんがみ,種々検討すべき問題があると考え,昭和41年6月,「国語施策の改善の具体策について」の諮問をした。
 審議会では,まず「当用漢字音訓表」と「送りがなのつけ方」を取り上げ,以来6年間熱心な御審議を続け,このたび,この二つの問題について改定の結論を出していただいたことは,まことにありがたく思う。
 その審議に当たって,国語は国民全体のものであるとの認識にたち,まず部会の試案を公表して広く社会の意見を求め,審議の参考にするという慎重な配慮のもとに結論をおまとめになったことに対して深く敬意を表する。
 今回,御答申いただいた「当用漢字改定音訓表」と「改定送り仮名の付け方」は,所要の手続きを経て,できるだけすみやかに実施したいと考えている。なお学校教育での取り扱いは,答申にそって,直ちに調査研究に着手し,具体的な結論を得て実施に移していきたいと思うが,特に,義務教育は基礎を学ぶ課程であることをじゅうぶん考慮して,児童・生徒の学習能力に応じた配慮を行なう必要があると考えており,高等学校以上では,漸次,できるだけ社会生活の実態に即したものとしたいと考えている。
 また,このたびは,国民生活や国民文化の基盤である国語について,国民のひとりひとりが深く思いを寄せることが,きわめて重要であるとの認識のもとに,「国語の教育の振興について」の建議をいただいた。これらの御趣旨にそい,各方面の協力を得て,国民全体が国語に対する意識を高め,国語をたいせつにする精神が養われるよう国語の教育の振興にいっそう努力したいと思う。
 今後とも国語施策に関心をお寄せいただき,いろいろな機会に貴重な御意見を賜わることがあれば幸いである。

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