国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第10期国語審議会 > 第76回総会 > 次第

次第 前回の総会の議事要旨の確認/漢字部会,かな部会の各試案に対する意見について/今後の審議の進め方について

前田会長

 ただいまから,第76回国語審議会の総会を開会する。まず,前回の議事要旨の確認をお願いする。

 ここでは,前回の「議事要旨」に関する修正の申し出はなく,前回の「議事要録」に関する修正の申し出があった。「議事要録」に関する修正は,他にもあり,直ちに修正の手続きをとった。ここに収録するに当たっては,当然のことながら,修正済みのものによっている。

前田会長

 意見がなければいちおう次の議題に移る。漢字部会およびかな部会の,それぞれの試案についての意見が──あるものについては完全ではないが──いちおうまとまっているので,事務当局から説明していただきたい。

〔配布資料について国語課長から説明。〕

前田会長

 ただいまの説明について特別の質問,意見がなければ,次の議題にはいりたいと思う。
 前回の総会で出たいろいろの意見をくみいれて,今後の議題をどのように進めるかについてこのほど運営委員会で検討した。その際いちおう意見が一致したことは,各方面から寄せられた意見の取り扱いについては,二つの部会が,その意見を参考にして,二つの部会で試案を再吟味すること。もっとも,この部会審議にあたっては,その部会に所属していない委員も出席してじゅうぶん審議を尽くすようにするため,部会の日取りを余裕をもって考えるというふうにする。それから,各部会は,ただいまのような審議を経た結果を,次の総会に報告する。総会はその審議にじゅうぶん時間をかけるため,音訓,送りがなをそれぞれ日を改めて審議するという方法をとること。運営委員会としては,審議に余裕と幅をもたせるやり方をとろうと考えたわけである。
 さらに,これまでのみなさんの御意見を考え合わせて,もし,いまのようなかたちでの総会の審議のなりゆきによって,必要があれば,総会が小委員会のようなものを作って,そこで,その問題点について専門的な検討をしていただくという腹づもりをもっていたほうがよいであろうという申し合わせとなった。
 まず,ただいままでの両部会試案に対する意見との関係でただいま申し上げた方法,さらに,両部会と総会との審議の手だて,時間のかけ方,および,問題点を究明するために総会が必要だと考える場合の特別の諸点について意見を承りたい。

柴田委員

 前回の総会で,調整委員会,連絡委員会というようなものを設けることをわたしが提案し,その方向で考えるという会長の発言があったが,それは,運営委員会で完全に否決されたのか。

前田会長

 ただいまのことは,もちろん第一の問題点として取り上げた。審議の方法については,1時間以上もかけていろいろなお考えを承ったわけであり,またわれわれも申し述べたわけである。その結果として運営委員会として結論に達したのは,ただいま御説明申し上げたような方法である。その理由は,具体的な問題と関連させていうと,試案に対する意見を取り入れて,あるいは,取り入れずに部会試案を再吟味する場合は,やはり両部会の責任ですべきであるという考え方に,まず到達した。
 この場合,ただいまの柴田委員などの御意見を考えると,単に両部会の委員だけでなく,部会所属以外の委員も,それぞれの部会の審議に参加したほうが,より具体的,実際的であるという考え方である。したがって,両部会の審議に際しては,より多くの時間をかけるようにする。たとえば,両部会を同じ日の,同じ時間に開くということだと,ただいま申し上げたような原則は実行されないわけである。そういう意味で審議に余裕と幅をもたせて部会審議をすることのほうが,より実際的であると思う。
 最後に,両部会の試案として発表されたのであるから,そういう両部会の責任も明らかにしながら,その最終的な取り扱いについても,責任はある程度明らかにしておく必要があるという考え方である。
 したがって,今後は,ただいま申し上げたような方法で,両部会で再吟味された結果は,当然,総会に報告がある。総会としての,この報告の取り上げ方も従来と異なって,両部会の報告は別々の日に審議するが,総会でも消化されない部分のでてきた場合,総会の場で,みなさんの意見を承りながら,特別の委員会のようなものを作ってその問題点を検討していただく。これはある意味ではただいまの柴田委員の発言の調整的な役目をする委員会である。このほうが,各委員の発言の機会も多くなるし,また総会による実質討議も深まってくる。さらに,最終段階では,柴田委員などが考えられたような場があるということも,このような方法をとれば,円滑に運営されるのではないか。これが運営委員会としてかなり議論を尽くしたあとで最終的に到達した考え方である。

柴田委員

 制度としては,調整委員会のようなものは設置せず,将来,そういう機会があったら設置するが,調整する必要がなければそのような組織はつくらないという考えか。

前田会長

 簡単に申し上げるとそういうことである。いわゆる常設委員会としては作らず,必要に応じて作る場合もあるということである。

柴田委員

 そのような決定について,わたし個人としてはたいへん遺憾の意を表さざるを得ない。前回の議事要録の10ページに書いてあるとおり,前回と同じ組織のもとでは,送りがな改正案の公表に反対したわたし個人としては,送りがなの審議に部会参加という形では協力できない理屈になる。わたしは,そういうことがないように,そして,従来のまちがいを起こさないように,現実的な方法として3本立てにするよう提案したのである。運営委員会でそう決まれば,けっこうであるが,責任はだれが持つのか。総会で議論して煮つめるということは,既に失敗を重ねている。広い場でこのような技術的な問題を議論するのは,どうしても散漫になり,はしょるということになるので,小数で──独裁という意味ではないが──もう少しじっくり議論したうえで,総会の場にもっていく。総会は一つのセレモニーであるからあまり細かい議論をしないということのほうが,会議のゆき方として本筋ではないかと考えて,この議事要録のとおりのことを先回申し上げたのである。きょう配られた日本書籍出版協会の意見のうち,かな部会と漢字部会との試案には不統一な面があるのではないか,じゅうぶんな連絡調整を考えるべきであるという意味のことがあるが,そういう連絡調整の不統一のないようにそういう方向で進めていただきたい。それを改めて要望する。

前田会長

 ただいまのことはわたしどももじゅうぶん理解している。ただ現段階では,御承知のように,両部会の試案として世間に意見を問うたわけであるので,その仕上げの段階までは,やはりいちおう第一義的には両部会の責任であるというたてまえをとるべきではないかという考え方である。
 それから意見等についてもいろいろな煮つめ方を考えた。その際両部会を別個に開いていわゆる限定された委員だけでなく,部会所属委員以外の委員も参加して,審議する形式を取り入れた。また,総会が必要と認めるとき小委員会を作るが,この小委員会は2〜3名の委員でなくて,いわゆる全体協議会というようなのもありうるという幅の広い考え方である。柴田委員の意見も考え合わせながら,会議の進め方としては,これが当面妥当ではないかというのが運営委員会での最終的な考え方であった。
 さらに,運営委員会は常置の委員会として今後も存在するわけであるから,会議の実際に即応して,運営委員会が考えた方法に食い違いがでてくれば時と場合に応じて具体的に審議の方法を考えていく必要が起こると思う。
 当面の会議の進め方としては,もし協力していただけるのならこのような方法で進めてゆきたいということを,運営委員会として一致した見解としてまとめたのである。

大野委員

 お考えのことはよくわかる。前回申し上げたとおりではないが,わたしの考えが生かされているように思う。ただ,お願いしたいことが二つある。それはそれぞれの部会の開き方を実りのあるようにという表現を用いられたが,この前,わたしどもが案をまとめたときの経験からいって,週に1回あるいは1回以上,はなはだしいときは1週間のうちに何回か集まるということをして,ようやく案を作ったのである。それと並行してもう一つの部会も開かれていた。これでは日は違うが,実際には1週間のうちで部会が何回も行なわれていることになる。他に社会生活をもっている人間としては,1週間に二つの会議に出るということはほとんど実際上できないことである。それに関して,省みて,もっと早い時期に他の部会に対しても話を伺いに行くというようなことができたならば,案がまとまってしまったあとでいろいろ意見を言わなくてもすんだと思う。ともかく,それぞれの部会に出席して,そしていろいろ話を伺ったり,意見の交換ができるような体制を作っていただきたい。
 次に柴田委員から,総会はセレモニーであるといわれたが,総会で議論をするということがあってよいはずである。これに関して,会長として,総会はセレモニーではない,議論をする場であるということをはっきりしておいていただきたい。

前田会長

 大野委員の発言の第1点については,事実上の運営の問題であるので,御希望にそえるような運営のしかたにしてもらいたいと考える。第2点についても全く同感である。総会がある意味では最終討議の場であると考える。両部会から出された報告は,総会が討議する場で,実際的なまとめ方として,特別の委員会を作ることがあるという意味である。したがって総会がセレモニーであるというような考え方は持っていないということは,わたしとしては従来と変わっていない。
 今後,実際の運営上いろいろな問題や,改善を要すること,そのほかのことがでてくると思うが,いちおうたてまえとして御理解いただけるならば,今後の審議の進め方については,この方法をとっていきたいと思うが,御賛同いただけるか。
 別に意見がないようなので,いちおうその方向で審議するようにしたい思う。よろしくお願いする。
 次に一般問題小委員会の進め方は,西島委員長から説明していただきたい。

西島委員長

 前回の総会で一般問題小委員会を継続することになり,引き続いて委員長を引き受けたしだいである。小委員会で審議する内容は,国語施策に関する法制上の問題,漢字・かな両部会の谷間を埋める仕事,正書法についての研究,さらに国語施策のあり方について,研究したらどうかなどと,いろいろ意見があった。
 小委員会は,まだ開いていないが,近い機会に開いて,これから取り扱う問題について各委員に議論していただきたいと思っている。さしあたって,漢字・かな両部会の案を,正式に,今期の国語審議会の案として政府に答申する段階も近づいているので,この答申に伴う法制上の取り扱い方,つまり内閣告示,内閣訓令という形をとるかどうかというような問題について,審議してみたいと,わたしとしては考えている。

前田会長

 ただいまの一般問題小委員会の進め方についての西島委員長の説明に対して質疑がなければ,委員長の方針どおりの進め方でお願いする。
 以上で,いちおう今後の審議の進め方のおおよその目標について,御賛同いただいたわけであるが,本日の議題は,そのほかの問題についても,ある意味では報告的な部分もあるが,申し上げる。まず,専門調査員の任命については,部会の必要に応じて,部会長の申し出によって,会長が手続きを進めるという前記同様の手続きをとりたいと思うが御了承いただきたい。
 次に吉国委員は,運営委員会に所属する委員であるが,ただいま西島委員長から説明があったように,その議題と関連して,同時に,一般問題小委員会にも参加していただくことにした。御了承いただきたい。

大野委員

 これから,試案に対するいろいろの批評について,それぞれの部会が検討することだと思うが,その作業を終える予定はいつごろのつもりか伺いたい。

国松国語課長

 部会でどのくらいの日数が必要であるかがいちばんの問題になる。部会を始めていただくのには,寄せられた意見の要約を作って部会に提示するという準備があるが,10月にはいって予想外の意見が出たので,この要約を作るのに10月いっぱいかかると思う。したがって実質審議していただくのは11月からになるが,300通以上の意見であるので,部会でも,かなりかかるのではないかと思う。当初,わたし個人として事務的に考えていたより少々遅れて,1月か2月ごろには部会のまとめを終えて,総会に報告することができるようになるのではないかと予想している。

前田会長

 今の段階では部会長にも判断がつきにくいであろうと思うが,いずれにしても,事務当局の準備が今後の進め方の基礎になるので,その点について,いちおう,両部会と事務当局と打ち合わせのうえ,議事進行の日程を作っていただくということがよいかと思う。よろしくお願いする。

遠藤委員

 寄せられた意見をみると,ずいぶん重複しているものもあると思うので,それを事項別に整理していただければ,部会の進行が早くなると思う。そういうふうに整理していただけるか。

国松国語課長

 整理するのに今月いっぱいかかると申し上げたのは,そのように整理するつもりでいるからである。

大野委員

 わたしが思うに,この試案がまとまったのも,結局,前期の終わりまでになんとか案を作りたいという時間の締め切りがあったから,みんな無理をしても作り上げたのであって,意見を吟味するだけでも,期限を切らないでやれば,論議は尽きないはずである。わたしは,あとで修正することを予定するとしても,いちおうの時間表を作る必要があると考える。

前田会長

 その点については,ただいま,わたしが申し上げたように資料の整理の関係で,なるべく早く両部会に日程を作ってもらって,それぞれ各委員に連絡することができるよう期待する。
 それでは本日は,これで散会する。

トップページへ

ページトップへ