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次第 庶務報告/前回の総会議事要旨の確認/漢字部会(岩淵部会長)

前田会長

 この総会を開くにあたっては,先般運営委員会で相談した。その結果,前回の総会から既に5か月を経過している。この間,各部会では試案に対する世間の反響を分類・整理して,それぞれ審議を続けてきたが,まだまとまった報告を受ける段階に至っていない。しかし全部の委員が審議の進みぐあいを知り,また今後の見とおしをもつことが必要ではないかと考えた。前回の総会では各部会で案がまとまった段階で各部会案ごとに総会を開いて審議するということになっていたが,今回は以上のような理由で,主として,各部会,小委員会の審議の状況について中間的に報告していただくという趣旨で開催した。
 各部会,小委員会の審議の進め方や今後の総会の開き方,その他今後の運営などについては,後ほど時間の許す限り,御意見を伺いたいと思う。
 それでは庶務報告をお願いする。

国松国語課長

 前回の総会以後委員の異動があったので報告する。2月20日付けで三樹精吉委員が辞任し,後任に岡村二一委員が発令されたので御紹介する。
 なお,岡村委員はかな部会の所属となった。

前田会長

 これから議事にはいる。まず,前回の総会議事要旨の確認をお願いする。これは既に各委員に届けてあるので,ここで改めて朗読しないで確認したい。いかがか。異議がなければ確認したことにする。
 次に各部会・小委員会の審議経過の報告をお願いする。まず漢字部会長にお願いする。

岩淵漢字部会長

 漢字部会では今までに音訓小委員会を11回,漢字部会を4回開いた。音訓小委員会では,具体的な個々の音訓について審議し,漢字部会では,基本的な考え方などについて審議した。基本方針として,「現代の漢字かなまじり文」を前提として音訓を審議すること,「一般の公共生活」における漢字使用のためのものであること,現代の国語を「書く」ためのものであること,また漢字を使用する場合の「一応の目安」であることを再確認した。また,当用漢字の字種についてもなるべく早く検討する必要がある,という意見が強かった。試案では,義務教育と一般の公共生活とを切り離した考えに立っているが,義務教育との関連について漢字部会でも検討しておく必要があるとの意見も出ている。
 音訓小委員会では,日本新聞協会,日本書籍出版協会,官公庁,都道府県教育委員会やその他一般の個人から寄せられた音訓の採否に関する意見を分析しながら検討してきた。しかしまだ検討の最中なので具体的に結果の報告はできない。
 そこで,今回は,審議の結果の報告ではなく,経過の報告をする。各方面から寄せられた試案に対する意見を見ると,試案の基本的な方針はだいたい了承されていると思われるが,音訓をもう少し削除すべきではないかという意見と,もっとふやすべきであるという意見がある。
 なお,削除の意見が出た音訓数は578,追加の意見の出た音訓数は,706ある。これらの意見をもとにして試案について再検討している。
 次に問題になるのは副詞・接続詞の訓についてである。これについてはかなりの意見が出ている。現行の音訓表で副詞・接続詞だけに使われる訓も認めているが,他方,当用漢字表の使用上の注意事項で副詞・接続詞などは,なるべくかな書きにするという方針が出ている。このこととも関連するが,副詞・接続詞として使う訓はもっと控えめにすべきであるという意見と,さらに追加すべきであるという意見が出ているので,音訓小委員会でも,これらの二つの角度からいろいろと検討している。このことは音訓小委員会で審議している段階であって,まだ,漢字部会にはかけていない。
 「危」を「あやうい,あぶない」と読み,「魚」を「うお,さかな」と読む,いわゆる「同字異訓」についてもいろいろの意見が出ている。
 基本的には,同字異訓はなるべく少ないほうがよいといえるかもしれないが,「現代国語を書くための音訓」という観点から考えて音訓小委員会でも,いろいろと意見が分かれることもある。たとえば,「危」について,「あやうい」と「あぶない」の両方を採用することについて,「あやうい」をやめてはどうか,あるいは,「あぶない」をやめてはどうかという両方の意見がある。同字異訓についてもこのようなものをまとめて検討している。たとえば,「汚」には,現行では「けがす」だけがあるが,試案では「現代のことば」という観点から考えて,「よごす」という訓もつけることにした。この場合「よごす,けがす」ともに「汚す」と書くことになるし,また「よごれる,けがれる」も「汚れる」と書くことになるが,これでよいかどうか慎重に検討している。
 また,世間一般からは,「開」という字に「あく」という訓がほしいという要望が強かった。これは試案を作る段階でも部会で検討したが,「あく」を採用すると「あく,ひらく」ともに「開く」と書くことになり,文脈でも読み分けがむずかしいのではないかということで「あく」を採用しなかったものである。
 さらに,現在の音訓表では「合」,「会」に「あう」という訓があるが,試案では,これらのほかに「遭」にも「あう」をつけた。これらのいわゆる「異字同訓」について,このような訓をつけるのがよいかどうか,または「遇」にも「あう」をつけるべきではないかといういろいろな意見も出ており,問題のあるところである。ただ音訓小委員会ではこの異字同訓の問題にはまだほとんど手をつけておらず,これから審議することになっている。

岩淵漢字部会長

 現行で訓が認めてありながら,「かつ(且)」,「また(又)」,「ただし(但)」などは,「法令用語改正要領」や「公用文作成の要領」ではひらがなで書くこととしている。そこで現行の音訓表で認めてある音訓についても検討したうえで削除すべきものがあれば削除するという考え方もある。
 他方,現行の音訓表で認めてあるものには手をつけないで音訓を新たに追加するという考え方がある。音訓小委員会では,いちおう現行の音訓表で認めてある音訓についても検討したが,現行の音訓を削除するといろいろ問題があるのではないかとの意見が出ている。これら二つの考え方のいずれを採るのか漢字部会でじゅうぶん検討していきたい。
 付表に掲げてあるのは,「田舎(いなか)」などのように2字以上の漢字でできている熟字や「おかあさん」を「お母さん」と書くようなものなどいろいろある。このような付表に掲げた語も一つ一つ検討している。
 付表にはもう一つの問題がある。つまり,付表に掲げたものと本表の音訓欄に載せたもの,備考欄に載せたものの区別がはっきりしないのではないかとの意見が出ている。したがってこれは表の作り方とも関連するが,付表の書き方については,試案とは多少変わるのではないかと考えている。
 なお,付表に追加の意見が出ている語の例を一,二あげると,「おもや(母屋,母家)」,「だし(山車)」などがある。
 表の作り方は,さきほども申し上げたが,本表の中の音訓欄・例欄・備考欄や付表をもっと整理すべきであるとの意見がある。また音訓は,できるだけ親切に掲げるという方針をとり,たとえば音便・連声・連濁もそれぞれのところで注記したが,そういうものを使ってもいいということをまとめてしるしておくべきであるという意見も出ている。
 表の作り方についてはまだ審議していないが,当然,慎重に考えていきたいと考えている。
 いろいろな注意書きを書くため備考欄を設けているが,ここに掲げたものについてもいろいろの意見が出ているので,今後,表を作るときに整理していきたいと思っている。
 また,前文の書き方についてもいろいろの意見が出ていることは御承知のことと思う。この前文の書き方について,音訓小委員会等でもときどき意見が出るが,前文そのものを特に審議するところまで至っていないので,これについて申し上げることはほとんどない。
 今後の計画について申し上げると,音訓小委員会をもう3回ぐらい開けば,前文の審議まで終えることはちょっと無理であるが,個々の語例についての審議はだいたい終わると考える。そのほかに漢字部会を2,3回開きたいと思う。つまり,漢字部会としては,あと数回の審議でだいたい結末をつけたいと考えている。
 なお,非常に基本的な問題であるが,漢字部会で何を取り上げるかという問題については,漢字部会で議論し,第8期の総会で了承を得て,当用漢字の字種には手をつけず,音訓表を改定することに取りかかったわけである。そのときのわたし個人の予想としては,第8期には無理でも,第9期には音訓の検討は済むだろうと考えていたが,だんだん延びて第10期に至ったわけである。そこで漢字部会としても,当用漢字の字種の検討をしなければならないと考えている。現在の審議と並行して字種の審議を進めるようにとの意見が漢字部会の中にもあったが,並行して審議することは時間的にできかねた。しかしそういう意見が出ているくらいであるので,できるだけ早く,音訓の審議を終えて,字種についての審議を進めるべきではないかと考えており,5月ごろにはなんとかまとめたいという気持ちで審議を進めている。

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