国語施策・日本語教育

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次第 庶務報告/前回の総会議事要旨の確認/今までの経過

前田会長

 ただいまから第78回国語審議会総会を開く。最初に庶務報告をお願いする。

国松国語課長

 委員の異動があったので御報告する。まず渡辺茂委員が5月10日に死去されたのでつつしんで御報告申し上げる。次に委員の交替であるが,高橋早苗,平田幸男,実方亀寿の各委員が9月6日付けで辞任され,その後任として同日付けで加藤嘉男,志達宏,伊藤太一郎の各委員が発令になった。なお,加藤委員は漢字部会,志達,伊藤両委員はかな部会の所属となった。
 これらのことは前にも文書でお知らせしたが,本日あらためて御報告申し上げるしだいである。

前田会長

 ただいまの報告のとおり,渡辺茂委員が死去されたので,総会として黙とうをささげたい。(黙とう。)
 それでは議事にはいる。まず前回の議事要旨の確認を行なう。各委員にはすでに前回の議事要旨および要録が配布してあるので朗読は省略したい。御異議,御意見はないか。御発言がないので確認したものとする。
 次にきょうの審議の中心課題である「当用漢字改定音訓表(案)」の御報告をお願いし,あらためて総会で審議したい。

岩淵漢字部会長

 漢字部会で審議を重ねた結果,本日お手もとにお配りしたとおり「当用漢字改定音訓表(案)」ができあがったので御報告する。これを審議していただく前に今までの経過を申し上げる。
 この仕事を始めたのは第8期で,このときに文部大臣から諮問があり,この総会でかなと漢字の両部会,それに小委員会が設けられた。そのうちの漢字部会の仕事としては,当用漢字表,当用漢字音訓表および字体表の改定があったが,この中で総会の了承を得て音訓表から着手した。その理由は,字種の審議には相当の年月を要するのではないかと考えたことと,当時は字種の審議の前提となる基礎資料がふじゅうぶんだったことである。これに対して音訓表は,字種に比べてそれほど長い年月は要しないだろうと考えたことと,音訓表を改定することによって漢字かなまじり文のあり方について新しい考え方の転換が示せると考えたからである。しかしこの間にも部会の中では,字種や字体も平行して審議すべきだという意見があったので,ある時期には小委員会を設けて字種・字体について意見を交換したが,結局,音訓表に全力を注ぐことになった。
 第9期になって,第8期以来の案がだいたいまとまったので,世間に公表し,一般から意見を求めることが総会で了承された。そこで昭和45年5月27日これを公表した。そして8月に東京と名古屋で説明会を開き,参加者からいろいろの意見を求めた。また各省庁や各地の地方公共団体,あるいは関係する団体,それにこれは主として国語研究者であるが,個人に対しても案を送って意見を求めた。その結果,文書による意見が各省庁や団体から57,個人から263提出された。
 第10期にはいり,世間から寄せられた意見を参考にして再び問題点を審議した。この間に部会を15回,音訓小委員会を27回,前文検討委員会を2回開き,それに国語審議会委員に対する説明会を5月と11月に開いて漢字部会に属していない委員のかたがたの御意見を伺った。また,このほかにかな部会と共通する問題も幾つかあったので,両部会の間で協議会を開いた。このような経過を経てようやくこの案がまとまった。これは大臣の諮問を受けてから5年有余,試案を世間に公表してから1年有余になる。
 以下,この音訓表について少しお断わりしておきたいことを申し上げる。
 今回の改定音訓表(案)は,あくまでも当用漢字表内の漢字の音訓を検討したものである。当用漢字表には手をつけていない。したがって,もし将来当用漢字表が改定されて字種に変更があると,音訓表も再び改められることになるという性質のものである。その意味では今回の改定は暫定的なものである。したがって,字種の審議も至急進めなければならないと感じている。また,当用漢字表には御承知のとおり補正資料というものがあり,新聞などではすでに使用しているが,審議会としては正式にこれによって当用漢字表を改めていないので,今回の音訓の検討にあたっても補正資料には触れなかった。
 音訓を検討するにあたっては,資料としては,国立国語研究所で出した「現代雑誌九十種の用語用字」,あるいは,同研究所で進行中の「電子計算機による新聞の語彙調査」,そのほかいろいろ新聞社の資料などを参考にし,漢字部会の委員の合議でこのようにまとめた。前文はあとで朗読してもらうが,一つの問題は,現在漢字かなまじり文が普通に使われていて,その場合にかなを多くすれば文章がわかりやすいという考え方もかなりあるけれども,これは必ずしもそうではないということである。話しことばでコミュニケーションがじゅうぶんできるではないかといわれるが,音声表現には,アクセントとかイントネーションとか,あるいはことばの切れ目に少し休止をおくというような働きがあるが,文章の場合にはそれがない。そういう意味では,あまり漢字を少なくし,かなを多くすると文章の内容を受け取ることが困難になったり,あるいは意味を区別できなくなるというようなことも起こってくると思う。そういうことで,今回は現代の文章を書くのに必要な音訓はどういうものであろうかという考えに立って音訓表をまとめたのである。目安などのことは前文の中で御理解いただきたいと思うが,いずれにしても結果的には,従来の音訓よりもかなり数がふえることになった。
 次に今回の音訓表の構成であるが,これは試案と同様,前文,表の見方,本表,それに付表からなっている。付表にはいわゆる熟字訓の類を主として掲げた。この熟字訓のようなものを取り上げたことも今回の案が現行と非常に違う点である。
 それから音訓表のほかに,参考資料として「主要な訓の索引」と「『異字同訓』の漢字の用法」がお手もとに配布してある。
 それではまず,前文から御審議をお願いするが,その前に前文を朗読する。
  〔前文朗読 国語課長。〕

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