国語施策・日本語教育

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次第 前文の相違点、説明

前田会長

それでは引き続いて前文の変わった点について説明をお願いする。

岩淵漢字部会長

 前文で変わった点を申し上げる。
 1ページの〔漢字かなまじり文と戦後の国語施策〕では「わが国では,漢字とかなとを交えて文章を書くのが明治時代以来一般的になっている。」となっているが,試案では「明治以来,漢字とかなを交えて文章を書くのが一般的である。」として「明治以来」というのが前に出ていた。しかしこれでは,漢字かなまじり文が明治以来のものであって,それ以前はそうでないように読めるという批判があったので,これをあとへ下げて,漢字かなまじり文はずっと使われてきたが,明治時代以来は普通文ということで,漢字かなまじり文が法律にも,教科書にもあらゆる文章に使われるようになったということを表わしたつもりである。
 それから目安の問題に関係するが,〔当用漢字音訓表の改定〕ではこの項の下から3行目を「一般の公共生活における,よい文章表現のための目安として設定された。」とした。ここでは先ほども柴田委員からもごひろうがあったが,試案で「わく」としたことにたいへん抵抗があったのでこれを除き,上記のように直しわけである。さらに続いて「したがって,これは,運用にあたって個々の事情に応じて適切な考慮を加える余地のあるものである。」とした。この音訓表は使用するうえでの目安あるから,実際の運用にあたってはいろいろな事情に応じて適当な考慮を加えて使用すべきである,ということをそこにはっきりさせたわけである。これも「目安」というものの本体を明らかにするための表現である。
 〔適用の範囲〕では,「科学・技術・芸術をはじめとする各種専門分野における音訓使用」とあるが,これは「学術・技術などの専門用語や,文芸……」あったのを直し,そのほかの専門分野も含めることにしたものである。
 2ページの4行目ではこれは先ほど岡村委員からも御指摘があったことであるが,「改定音訓表では『例』の欄,および『備考』の欄に音訓使用の実例を示すにとどめた。」とした。先ほどたまたま亜鉛や黒鉛の例が出たように,その例がはたして適切かどうかということは多少問題になるものもあるかもしれないが,音訓欄に音訓だけで掲げたのではそれが実際にどう使うのか見当がつかないので,音訓の使い方を例示するという意味で例欄に音訓使用の実際を示した,ということをここに書いたわけである。
 次に〔音訓の選定の方針〕の1行目では,「また,固有名詞のための音訓は,音訓表に関係なく使用されるものであるから,……」とあるが,このへんが少し変わっている。それは,当用漢字表がすでに固有名詞は別に考えるということでこれを取り上げていないので,この音訓表でもこれに関するものは出しておらず,しかもわれわれがこれを使うとすれば,音訓表に関係なく使うわけだから,そのことは触れる必要がないだろうということである。その下に選定の方針の具体的な例がいくつかあげてあるが,試案にあったもののいくつかはこの項の本文に入れて,そこで触れるようにしたので,試案より数が減っている。この具体例の中でいちばん変わったのは,「3」の「新しい慣用の訓も取り上げる。」である。この表現でも落ち着くかどうかわからないが,ともかく「危(あぶない)」,「易(やさしい)」,「触(さわる)」,「試(ためす)」などは近年になって非常に行なわれるようになった訓であって,これらも取り上げたということをここでいったわけである。場合によっては,漢字の辞書などは取り上げていないかもしれないが,実際には使われているのでそういうものも取り上げたということである。次に「5」の「副詞・接続詞としてだけ使用される訓は,広く使用されるものは取り上げる。」であるが,ここがだいぶ変わった。というのは,試案では副詞・接続詞としてだけに使用される訓をかなり取り上げたところが,それに対してこれらはかなで書くという習慣がかなり強くなっているのではないかという反論があったからである。現行でも「既に,必ず,全く,少し,直ちに,再び,最も,但し,又,若しくは,及び,並びに」というようなものがあるが,試案ではこれらのほかに幾つか加えた。しかし結局は,「殊に」,「専ら」を加えただけで,あとはほとんど試案で加えたものを削除した。そのために,ここでは副詞・接続詞としてだけ使用される訓は,広く使用されるものを取り上げることにとどめたという気持ちで表現してある。「和語の副詞・接続詞はかなでも書く。」としたのは,これは和語の副詞はかなで書くという習慣がかなりあるだろうということを考慮してこういったが,どうしてもこれを貫かなければならないということではない。しかし「一体全体」,「多少」,「突然」などの字音による副詞は漢字で書くのがいいだろうということで,そのことを掲げた。この「5」の例の中で御訂正願いたいことがある。「急に」を「決して」と訂正する。試案では(注)以下は,「漢字2字以上で……。」というように書いてあり,実際にも漢字2字以上の実例までしか出さなかったが,漢字1字のものもあるのではないかということで「急に」,「切に」を加えたわけである。しかし「急に」は形容動詞の連用形と受け取れるので,これを「決して」に訂正する。このことはまだ漢字部会の委員にもはかってないので,これについて御意見があれば出していただきたい。
 だいたいこのへんが試案の前文と変わったおもな点である。
 次に「表の見方」の中で変わったのは,「9」で,音韻上の変化を起こすものは,本表の中に具体的に出ているものもあるが,すべての例を尽くしているわけではないから,そういうもので,ここに出ていないからといって使わないということではない,ということを断わったことである。それから,試案では例欄の語について濁音や促音になる場合は星印をつけてそのことを注意したが,これは個人的,あるいは地域的なゆれがあって問題であるので,今回は星印をやめた。
 これらが試案と違った点である。

前田会長

 ただいまの説明でよいか。

木内委員

 けっこうである。

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