国語施策・日本語教育

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次第 改定送りがなのつけ方(案)前文

前 文

 昭和34年内閣告示による「送りがなのつけ方」は,十余年にわたり行なわれてきたが,その経験にかんがみ,また,社会の各方面からの意見や批判を考慮して,今回これを改定することとした。
 この「改定送りがなのつけ方」は,法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など,一般の社会生活で現代の国語を書き表わす場合の送りがなのつけ方のよりどころを示すものである。
 なお,「改定送りがなのつけ方」は,「当用漢字改定音訓表」の音訓によって語を書き表わす場合について取り扱ったものである。

〔方針〕
 わが国で一般的に行なわれている漢字かなまじり文において,漢字を用いて語を書き表わす場合,語形を明らかにするために,漢字のあとにかなを添えて書くことがある。この場合,語のどこまでを漢字で表わし,どこからかなで書くか,という送りがなのつけ方が問題になる。
 今回,送りがなのつけ方を改定するに当たっては,国語表記の実態を踏まえたうえで,できるだけ系統的で簡明な法則にまとめることとした。しかし,送りがなには,このような法則だけで処理することのできない慣用の事実があり,これを無視するわけにはいかない。そこで,この現実を考慮して,慣用を尊重し,さらに表記上の実際に即して弾力性をもたせることとした。
〔内容〕
 以上の方針に従い,送りがなのつけ方を次のように本則・例外・許容の三つに分けて考えた。

   本則
   語には活用のあるものと活用のないものとがあるが,それぞれについて,次のことが基本的な法則として考えられる。
(1)活用のある語については,
 活用を表わすために,次のイに述べるものを除き,活用する部分(活用語尾)を送る。
 派生・対応の関係にある語〔たとえば,「頼む(動詞)」に対する「頼もしい(形容詞)」,「当てる(他動詞)」に対する「当たる(自動詞)」など〕は,その関係を考慮して,活用語尾の前の部分から送る。
(2)活用のない語については,
 名詞は,次のイに述べるものを除き,送りがなをつけない。
 活用のある語から転じた名詞は,もとの語の送りがなのつけ方によって送る。
 副詞・連体詞・接続詞は,特に語形を明らかにするために,語の最後の音節を送る。

  以上の五つを本則とする。

 例外
 語によっては,本則に合わない送りがなのつけ方が,慣用として一定しているものがある。これを本則に対する例外とする。なお,読みまちがえを避けるために,本則に合わない送りがなのつけ方で慣用の認められるものをも,例外とすることがある。
 例外とする語について,分類できるものは,分類して示すが,それ以外のものは個別に示すこととする。
 許容
 語によっては,本則に合う送りがなのつけ方とともに,本則に合わないつけ方が慣用として行なわれていて,本則だけを適用することは妥当でないと考えられるものがある。これらの語については,本則に合わないつけ方をも取り上げて,これを許容とする。

 以上の本則・例外・許容は,主として,漢字の音または訓を単独に用いて,漢字1字で書き表わす語(ここでは「単独の語」という。)について考えたものである。漢字の訓と訓,音と訓などを複合させ,漢字2字以上を用いて書き表わす語(ここでは「複合の語」という。)の送りがなのつけ方も原則としては,その語を書き表わす漢字の,それぞれの音訓を用いた「単独の語」の場合に従うことになる。しかし,「複合の語」の送りがなには,「単独の語」にない省き方のできるものがあり,また,送りがなをつけないことが慣用となっているものがあるので,例外・許容について,以上の事実に応じた取り扱いをすることとする。
 なお,「単独の語」および「複合の語」を通じて,字音を含む語は,その字音の部分には送りがなを要しないのであるから,この「改定送りがなのつけ方」では,必要のないかぎり触れないこととする。

〔構成〕
 この「改定送りがなのつけ方」の本文では,まず,「当用漢字改定音訓表」の「本表」に示してある音訓を用いて書き表わされる語を「単独の語」と「複合の語」とに分け,「付表」に掲げてある語は,「付表の語」として別にあげた。なお,「さび止め」,「打ちひも」などのように,前もしくは後ろの部分をかなで書く場合については「複合の語」の中で取り扱うこととした。
 次に,「単独の語」は「活用のある語」と「活用のない語」とに分け,〔内容〕に述べたところに従って,おのおの送りがなのつけ方を通則として示した。各通則には,本則のほか,例外・許容のあるものは,それを合わせて掲げた。「複合の語」は,(1)「単独の語」の送りがなのつけ方によるもの(「単独の語」にはない送りがなの省き方ができるものを含む。)と,(2)慣用に従って送りがなをつけないものとに分けて,それぞれ通則を立てた。(2)は,(1)に対して例外に当たるが,該当する語が多数にのぼるので,別の通則を立てたのである。
 以上に従って全体の構成を表に示せば,次のようになる。
単独の語、複合の語
      付表の語

〔運用〕

 各通則において,送りがなのつけ方が許容によることのできる語については,本則,許容のいずれに従ってもよいが,個々の語に適用するに当たって,許容に従ってよいかどうか,判断しがたい場合には,本則によるものとする。
 この「改定送りがなのつけ方」は,漢字を記号的に用いたり,表に記入したりする場合や,固有名詞を書き表わす場合を対象としていない。
 この「改定送りがなのつけ方」は,科学・技術・芸術・その他の各種専門分野における表記や個々人の表記にまでこれを及ぼそうとするものではない。
 学校教育においては,この「改定送りがなのつけ方」が適切な配慮のもとに運用されることが望ましい。

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