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次第 前回の総会の議事要旨の確認/「当用漢字改定音訓表」および「改定送り仮名の付け方」の答申の決定

前田会長

 それでは,ただ今から第80回の国語審議会の総会を開会する。まず,議事の第1は,前回の総会の議事要旨の確認であるが,すでにお手もとに差し上げてあるので,この際は朗読を省略して確認したいと思う。
 意義はないか。
 (「意義なし。」との発言があった。)
 それでは前回の総会の議事要旨は,確認された。
 次に「当用漢字改定音訓表」および「改定送り仮名の付け方」の答申の決定をしたい。本日の議事の進め方は,すでに御理解いただいていると思うが,先の総会で,内容を決定しており,その際の了承で,「当用漢字改定音訓表」と「改定送りがなのつけ方」の表記を改定に基づく表記に修正したものであるので,できれば説明等を省略して,答申することを決定したいと思う。その前に前回の総会に御出席いただけなかった柴田委員から,発言の申し入れがあるので御発言を願いたい。

柴田委員

 「改定送り仮名の付け方」について,わたしの意見を述べたい。これは,質問ではない。ただし,もし,わたしの理解するところに,著しく誤解がある場合には,かな部会の関係者から御訂正くだされば,たいへんありがたいと思う。
 「改定送りがなのつけ方」の前文の最後に「運用」とある。その「運用」は1から4まであるが,その4についての意見である。そこには「学校教育においては,この『改定送り仮名の付け方』が適切な配慮の下に運用されることが望ましい。」とある。わたしが申し上げたいのは,この「適切な配慮の下に」ということである。このことは,かな部会の議事要旨をたんねんに読んでみると,第31回の部会でこのことの議論があった。それによれば,たとえば,「義務教育では,本則・例外を教える。高学年では,許容もあわせて教える。」というような,教育の段階づけというか,教育の学習の技術的な配慮というふうに受け取れる,また,そういう観点からの議論があったようであるが,わたしがきょう申し上げたいのは,この「適切な配慮」の中に,いわば技術的な配慮の前に,もう少し高いレベルの配慮をお願いしたいということである。それは「運用」の1のことと関連してである。1に書いてあることは「……本則,許容のいずれに従ってもよいが,」とある。この表現は,「本則」と「許容」とを同じ重みづけにしている。どちらでもよろしいという表現である。これは前期の総会での報告にあった「将来は本則に統一することを志向して」に比べると,ただ,ことばの上の違いだけではなくて,この「許容」の考えがすっかり変わったことを表わしている。
 こうした「許容」の取り扱い方は,この「改定送り仮名の付け方」のいちばんユニークな点であるが,ユニークであるがために,また,一方で問題をはらむということは,しばしば皆さんから指摘のあったとおりである。その「許容」を「本則」と同じ価値で並べてあるということは,4の「適切な配慮」と関連して,次のようなことが考えられ,また,そうであってほしいということを申し上げたいのである。それはたとえば,具体的に言えば,今後,教科書の検定などで本則に統一しないということである。また,そうあってはいけないということである。もちろん初等教育では,「本則」によるのだというそういう教育の技術的な段階づけのことは,いま問題にしていない。教育の目標として,そういう「本則」一本に統一するというようなことがあっては,この「運用」の1の趣旨に著しく違反するということになるとわたしは考える。だからもっと具体的に言えば,中学校以上の教科書に原文をそのまま採るような場合は,その送りがなが,この許容の範囲であれば,けっしてそれに手を加えることのないようにしてほしい。つまり,統一することがないように,これは,教科書関係者,それから,ことに文部省の検定関係の人にとって重要である。将来,そういうことがないようにしてほしいということが,わたしの趣旨である。そのことは,これから行なわれる世間の送りがなを,ある意味では,不統一にすることになり,また,ある意味では,ゆとりのあるものにすることである。そうした意味で「許容」が,こうして「本則」と同じ価値におかれているものと思う。わたしがしばしば警告した,その「許容」の空どう化が,この「運用」の1の趣旨が徹底すれば避けられるわけである。そのことは4との関係で,4によって実際が左右されるわけである。学校教育でどうであるかということによって,NHKをはじめとしたマスコミが,それに従うわけである。ここがキーポイントである。「適切な配慮」という内容の高い次元において,そうした考え方が浸透するように,これはいったいどこへ申し上げていいのかわからないが,こういう「改定送り仮名の付け方」を世の中に送るに当たって,いろいろな関係者に,そのことを希望したい。そういう意見である。
 最初に申し上げたように,もし,わたしの,この「運用」1および4に関する理解に誤解・曲解があれば,かな部会の関係者から御訂正願いたいと思う。御訂正があれば,それに対して,わたしはまた,わからないところを質問したいと思う。以上である。

前田会長

 わたしは,この総会の全員が,柴田委員の発言の意の存するところを理解していると思う。したがって,ただ今の発言を記録にとどめることとして,その趣旨を理解しながらわたしとしては,この答申案を採択したいと考えているが,どうか。
 それでは,ただ今の柴田委員の発言を記録にとどめて,お手もとに差し上げてある資料のとおりに,答申をすることに決定する。

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