国語施策・日本語教育

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「国語の教育の振興について」(建議)

国語の教育の振興について

 国語審議会は,昭和41年6月13日,文部大臣から「国語施策の改善の具対策について」の諮問を受け,国語施策の問題点について審議してきたが,この度「当用漢字音訓表」及び「送りがなのつけ方」の改定について答申する運びとなった。
 我々は,この審議を通じて,国語が平明で,的確で,美しく,豊かであることを望み,この際,国民全体が国語に対する意識を高め,国語を大切にする精神を養うことが極めて重要であると考えた。
 ここに,国民生活の各分野における国語の教育の振興について,その考えを次の通りまとめた。当局及び各方面においては,この具体化について適切な方策や手だてを講ぜられるよう希望する。


1 基本的事項
 国語の教育については,次の基本的認識に基づき,学校教育,社会教育,家庭教育などを通じて,適切な方策が総合的に講ぜられなければならない。

(1)  国語は,我々にとって人間活動の中枢をなすものであり,人間の自己形成と充実,社会の成立と向上,文化の創造と進展に欠くことのできないものである。
(2)  国語は,我々が祖先から受け継ぎ,更に子孫に伝えていく歴史的伝統的なものであり,国民の思想・文化の基盤をなすものである。
(3)  国語は,教育の全体を貫く基本をなすものである。

2 学校教育に関する事項
 国語の教育に関し,特に重要な役割を担うものは学校教育である

(1)  学校教育にあっては,国語科はもとより,各教科その他の教育活動全体の中で,適切で効果的な国語の教育が十分に行われるよう,教育内容の充実,教育方法の改善などを図る必要がある。
(2)  国語の教育は,国語科担当の教員はもとより,学校教育に携わるすべての教員に課せられた重要な任務である。従って,教員養成を行う大学では,国語に関する知識・能力を,教員を志望するすべての者の基礎的教養として重視する必要がある。
(3)  特に国語科担当の教員の養成に当たっては,国語の各能力に関する指導力が十分養われるよう格段の配慮をする必要がある。
(4)  小学校・中学校・高等学校の国語科では,国語の各能力の均衡のとれた発達を考慮しつつ,文字や文章を読み書きする力を一層充実するように努める必要がある。
(5)  幼稚園・小学校・中学校・高等学校では,幼児・児童・生徒を取り巻く学校内の言語環境を整え,適正な言語活動が行われるよう配慮する必要がある。
(6)  大学では,国語に関する教養を身につけ,広く深い思想・知識を文章に表現する能力などを養うよう指導に留意する必要がある。

3 社会教育,家庭教育などに関する事項
 学校教育の外,社会や家庭における環境が,幼児・児童・生徒の言語能力に及ぼす影響の極めて大きいことにかんがみ,これらの分野でも国語の教育について積極的な役割を果たす必要がある。

(1)  社会教育においては,国民の国語に対する意識を高め,国語を大切にする精神が養われるよう,その機会と場を拡充する必要がある。
(2)  新聞・雑誌その他の出版物及びラジオ・テレビ等の放送は,国民の言語生活に対して大きなかかわりを持っているので,これらの分野では,言葉の使い方について更に配慮すると共に,その活動を通じて国語に対する国民の意識が高められるよう努めることが望ましい。
(3)  子供の言葉の習得と発達にとって家庭が果たす役割は重要である。従って,家庭では,言語環境を整え,子供の発達段階に応じて,言葉の使い方の指導が行われるよう留意することが望ましい。その際,学校教育や社会教育との関連をも十分考慮することが大切である。

4 研究体制に関する事項
 国語の教育の充実を図るため,各大学・研究機関における研究体制を強化する必要がある。

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