国語施策・日本語教育

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次第 協議〔その3〕

小谷委員

 したがって,ここでは,もし音訓表の役割というものを原則としてここのところを指されるのであるなら,これは過去の事実,特に明治以来第二次世界大戦までの状態を述べたものと,私は了解していることを申し上げたい。それで,現行のはこれとは少し違っているので,現行のままで,私は結構のように思う。

福島会長

 ほかに御意見があったら,どうぞ。

馬淵委員

 私は,この国語審議会から出される書類の中に,(前から不思議に思っているんだが)代名詞とか副詞とは,いわゆる文法でいう品詞の術語が並んでいる。これは文法的に決まった術語であるのか。あるいは例えば先ほどお読みした植松委員のアンケートにもあったように,結局副詞なのかどうなのかとか,あるいは「3月15日」というのは副詞的法であるけれども,それはどうするのかとか,そういう文法的に品詞別にやっていくと,かなりあいまいなところがたくさん出てくる。そういうのを国民一般に基準を示すような場合に使っていいのかどうか。学者相手にやっているのではないからそれでよろしいのか。その点について,お教えいただきたい。

松村問題点整理委員会副主査

 ただ今の馬淵委員の御発言は,私も原則として同感である。確かに一般の国民に直接結びつくような問題を,余り学術的な術語をもっていろいろ規定するというのは,非常に無理があると思う。
 そういう意味で,私もこういうものにはできるだけ術語を使わないで,一般の言葉で説明する,あるいは実際の言葉そのままとして示す,そういうことができれば一番望ましいと思う。
 ただ,私も前期の委員として,送り仮名の方には直接関係してきたが,送り仮名の付け方などでは,かなり文法用語が使われている。送り仮名の付け方というものは,実際に送り仮名を一語一語示すというやり方ができないことがある。結局,付け方という,つまり送り仮名を付ける決まりのような形で出したものであるから,どうしてもある程度術語を使わざるを得ない。したがって,そういう場合に,術語はできるだけ最小限にしろ,ということで,私は度々盛んに意見を申した。私などの理解しているところでは,ああいうものに出てくる術語は,いわゆる学校文法で理解できる範囲ということを一応の目安にしている。もちろん学校文法自体が決して一つに統一されていないこと――これも私,十分承知している。しかし,やはりある程度術語を使わなければならないとすれば,せめてそういう範囲を一応の目安として,できるだけ最小限でやっていけなければいけないと思う。私も送り仮名の付け方では,最小限の文法用語として,品詞その他,若干ああいう形のものを使うことに,具体的に賛成した。
 ここに出ている代名詞その他も,その辺までは,もし使うとすればまだ許される範囲ではないかと考える。しかし,代名詞とか副詞の実際の言葉の範囲は,人によって学者自体でも非常に違うし,まして一般の人はこれによりはっきり限定できるはずはない。したがって,やはりこれはあくまでも,めどあるいは目安,そういうことでこういうものを受け取るという程度で,この辺まではやむを得ないかな,というのが私の感じである。
 私は,答える立場ではないので,審議会とは全然別な,私一個の考えから申し上げた。

福島会長

 ほかに御意見があったらどうぞ。

阪倉委員

 審議会と直接関係のない問題かと思うが,この機会に伺いたい。通達が参り,9月1日以後の公用文には,こういう書きようをとれという各省事務次官等会議での申合せというのがある。これによると,例えば,接続詞で「及び」,「又は」というのは漢字で書くということだが,それは従来からの漢字表の方針と逆行しているが,どうしてそういう書きようが決定されたのか。その事情をお答え願いたい。

福島会長

 国語課長,どうか。

石田国語課長

 その申合せは,昨年6月,第10期国語審議会から答申された「当用漢字改定音訓表」「改定送り仮名の付け方」を公用文で実施するためのものである。今の接続詞の点であるが,「当用漢字改定音訓表」答申の前文に,〔音訓の選定の方針〕として(アンケートにも参考として引用してあるが。)[副詞・接続詞としてだけ使用される訓は,広く使用されるものを取り上げる。]とある。したがって,従来の「当用漢字表」の〔使用上の注意事項〕では,接続詞等についてはなるべく仮名書きにするということとの関係をどう処理するかが問題となったわけである。そこで公用文における取扱いについては,各省庁,特に内閣法制局とも相談した結果,法令における用語といわゆる公用文書における用語,との一体化をできるだけ図ることを基本方針とした。
 法令では従来から,「及び,並びに,又は,若しくは」の4語については漢字で書くという方針を取っている。一方,今度の「当用漢字音訓表」の選定の方針の一つとして,接続詞として使われる訓は広く取り上げることになったので,その4語は,公用文書においても法令との一体化という趣旨もあり,原則として漢字で用いることにしようではないか,と各省庁間で協議し,事務次官等会議の申合せとし,その結果が通知されたわけである。

阪倉委員

 そうすると,公用文については強制力があると考えてよいか。

石田国語課長

 確かに,「当用漢字音訓表」「送り仮名の付け方」は,目安であり,よりどころである。
 しかし,各省庁の間で検討した結果,各省庁問題における公用文は余りばらばらでは困る,できるだけ統一を図ろうということで相談し,原則としてこの方針でやっていこうというものである。強制力という言葉は,ちょっと違った響きがあるかもしれないが,公用文ではそういうことでやっていきたい,ということである。

福島会長

 この件に関しては,真田委員のお話を伺っておきたい。

真田委員

 ただ今の説明に少し補足させていだたきたい。公用文での取扱いはなるべく法令と一体化しようという方針をたて,それで接続詞「及び,並びに,又は,若しくは」の4語は,漢字で書くことにしたというお話であったが,ではなぜ法令では今の4語に限って漢字を用いているのか,というのが実質的な説明になろうかと思う。
 この4語は,名詞と名詞との間に入ってくる場合が多く,その名詞が,漢字の場合はよいが,仮名の名詞を,この「又は」とは「及び」で結んだときには,仮名ばかりになって非常に理解しにくいということなので,接続詞等をなるべく仮名で書こうという原則ができたときにも,法令の上では,今の4語だけはやはり漢字で書いてきた。
 なお,「且つ」は,法令の場合には,「,かつ,」と読点が入り,仮名が並ばないので,仮名で書いている。

福島会長

 なお,意見があったら伺いたい。もしなければ,次の点についてもなるべく本日御意見を伺っておきたい。
 「5 外来語,外国の地名・人名は仮名で書くことにしている現行の方針について」「問1 現行では「外来語は,仮名書きにする。」とされているが,これについてどう考えるか。」という問題で,

 ア  この方針でよい。……31名
 イ  その他……4名

 また,「問2 現行では,外国の地名・人名は原則としてかな書きにするとされているが,これについてどう考えるか。」については,

 ・現行でよいとするもの ……21名
 ・漢字使用国の地名・人名について意見を述べたもの ……11名
 ・このような指示は不要とするもの ……1名
 ・その他 ……2名

 このようにアンケートの結果が出ている。これを土台として現実の具体案作成にかかるわけである。
 これは,片仮名とか平仮名とかいう問題はないのか。

石田国語課長

 それも含んでいると考えている。

福島会長

 外来語は,恐らく仮名書きにすることで異存はないと思うが,中国,朝鮮半島関係に多少の困難がある。
 こういうアンケートの結果なので,これを参考にして今後の原案作成に当たってもらいたい,というのでよろしいか。(発言なし。)
 では,次の問題「6 動植物名等に用いる漢字について」「問 現行では「動植物の名称は,かな書きにする。」とされているが,これについてどう考えるか。」についてのアンケートの結果は,

 ア  動植物の名称は仮名書きでよい ……3名
 イ  動植物の名称にある程度漢字を用いる ……25名
 ウ  その他 ……7名

となっている。御意見はないか。(発言なし。)
 次の「7 当て字は仮名で書くことにしている現行の方針について」「問 現行では「あて字は,かな書きにする。」とされるているが,これについてどう考えるか。」について,アンケートの結果を分類すると。

 ・現行の方針でよいとするもの ……8名
 ・あて字は,なるべく,あるいは,原則として使わないとするもの ……4名
 ・改定音訓表(前文)の趣旨(慣用の広く久しいものは漢字で書く)でよいとするもの ……17名
 ・漢字でも仮名でもよい。自然に存続が決まる ……1名
 ・このような方針を設ける必要はないとするもの ……5名

 こういう結果であるが,「慣用の広く久しいものは漢字で書いてよろしい。」というのが一番多数の御意見のようである。
 特に意見がなければ,次の問題「8 振り仮名は原則として使わないことにしている現行の方針について」「問 現行では「ふりがなは,原則として使わない」とされているが,これについてどう考えるか。」については,

 ・現行の方針でよいとするもの(必要に応じて使うことを強調するものを含む) ……9名
 ・必要に応じて自由に使う(規制しない)とするもの ……13名
 ・改定音訓表の前文の趣旨でよいとするもの ……4名
 ・乱用は戒めるが,ある程度使ってよいとするもの ……2名
 ・過去の文章に限って使うとするもの ……1名
 ・表外字(表外音訓)に使うとするもの ……1名
 ・その他 ……3名

 このアンケートどおりで,他に大して意見がないようだが,よいか。(発言なし。)
 意見をお出し願うために一応申し上げておきたい点がある。できる限り総会で各委員の意見を出していただき,できる限り大多数の意見をとりまとめ,作業委員会あるいは小委員会的な組織にお願いして具体的に漢字表の作業に入っていただくことにしたい。この次の総会で総会としてのおおよその考え方のまとめをつけたいと考え,希望している次第である。
 この次の総会では,事務当局の助けも借り,今日まで繰り返してきた字種に関する種々の問題についての各委員の意見の表明をとりまとめた案を検討願って,それを土台として小委員会に具体的作業をお願いしてよかろうと確認していただいたならば,次には小委員会の編成をお願いし,そこで具体的作業にとりかかっていたただく。
 総会は,引き続いて字体問題の検討に入り,字体問題の検討について,何回か自由討議の形ででも各委員の意見を幅広く伺い,時々それを整理して小委員会にも伝達していく。小委員会からも具体的な作業の中間報告を受けつつ総会は進行していく,ということで考えている。必ずしも,この任期2年の間に何もかもすまさなくてはいけないということでこだわっているわけではない。
 次の総会にはとりまとめの原案を提出して審議を仰ごうと思う。この点意見があったら,お聞かせ願いたい。

木内委員

 次の総会にお出しになる原案は,どこで作るのか。

福島会長

 だれが作るかというと,問題点整理委員会,そして事務当局の力も借りないとできないだろうと思う。

木内委員

 それしかないが,どなたがお作りになるにしても,今までやってきたことが参考になるので,楽だと思う。今まで必要だからアンケートをやってきたので,統一意見を作るにはいい基盤ができたとは思う。けれども,今までやってきたことは,つい末節に入ってしまう。そこで,だれのためにどういう漢字表を作るのかがはっきりすれば,ここで論じてきたこと――例えば,さっき出た戸籍法の話などは自然解消していくような趣もある。
 そこで,今度の原案を作るのに,私は,どなたがお作りになってもいいが,皆様の中で漢字表はこういう考え方で作るべきだという考え方をお持ちの方は,どうぞ自由に意見を出してくれ,ということをいっていただく方がいいのではないかと思う。それが何通か出る,それを見て,今度の総会までにどう運ぶかをお考えになったらいいのではないか。

福島会長

 原案を作るというのは,こういうことが総会の意向だから,それを出発点ないしは土台として具体案の研究を願いたいという,小委員会に対する総会の態度の表明の原案,その原案という意味か。

木内委員

 そうである。その小委員会は必ずしも今までの問題点整理委員会とは同じではないのであろうか。

福島会長

 違う。

木内委員

 もし問題点整理委員会の方々が引き受けてくだされば,これが性格を変えて小委員会になるわけであるが。……そうした小委員会の構成の方法もある。

福島会長

 その点は,私の考えだけでもいけない。小委員会委員をこの次の総会で候補者を出して決めてしまおうといっているわけではない。こういうのが大体の総会の意向であるということを小委員会に示したいという案をこの次お願いしたいということである。そこで,小委員会をどういうふうに編成するかということは,当然,運営委員会の問題になる。小委員会といっても具体案の作成に意見がある方をなるべく多勢集めて,――具体的に申せば,50人の総会ではあるが,20人ぐらいになってもいいのではないかというような気もする。小委員会で具体案の作成に発言をしてみたいという志のある方に希望を表明していただき,なるべく大多数の方の意見を表明できるような形での委員会を作って,具体案に入っていただきたい。その小委員会において,更に分科会なり,あるいは更にまた小委員会の専門グループなりをお作りになりたいということが小委員会の結論であれば,そういうふうにお進みになることも一向にかまわないと考えている。

志田委員

 これまでのアンケートの結果その他をまとめるときに,今日の発言も当然入るわけだが,それぞれの問いに対して,それぞれ答えが分けられて,計数が出ているが,この答えを拝見すると,別の形で前の方に合わせていいものとか,あるいは後の方にまとめた方がいいのではないかと思われるようなものもある。これは,十分検討していただけると思うが,ここにあるアンケートの形だけでまとめるのでなくて,こういうまとめ方をすればこうなる,というふうな大きいところでだんだんまとめていただけるようにお願いできればと思う。
 それから先ほど来の意見で子供に付ける名前の話で,飯島委員の発言の中に「子」だけでなしにいろいろなものを奨励したらいいという指摘があったが,この件で,多少気付いていることの一つであるが。……。
 今から10年以上も前になるが,小学校を卒業する女の子たちから以上の,相当の幅で――上の幅は,そのときには余りはっきり調べなかったが,その後,大学に進んでくる女の子の名前を観察してみると,「○○美」という名前がかなり増えてきているように思われる。これは統計的にやってみたことではなく,かなり印象的なものであるが。

福島会長

 小委員会で,大体こういうことを基本として検討願いたいという場合にアンケートの結果をそのまま――例えば,30対20であるという形でお願いすることにはならないかと思う。
 今日までの総会での経過に照らして,漢字表の問題については,例えばこれを目安・よりどころとするか,そういう基本的な条件――了解というものを,五つになるか六つになるか知れないけれども,ある程度抽象的に示し,そして,このアンケートの結果を参考として見ていただくということだろうと思う。その大体の柱は,いままで議論をいただいて,それをまとめた形はこのようであるという了解を得る総会を一度開きたいと考えている。
 本日の審議については,十分尽くされていない面も多分にあるように思うが,小委員会の段階に移る前に,お互いの了解点をもう一度確認して,という意味の総会を経るということにしたいので,伺いもれをした点などはそのときに改めて伺えればと思っている。
 なお,次の総会は11月という予定であったが,都合で10月26日(金)に開く。その次は1月になるわけである。ほかに何かあるか。

長岡委員

 当用漢字の字数が増えるように私は思うが,その具体的な漢字の数は,11月,12月の小委員会で検討の上,1月の総会に発表されるのか。

福島会長

 私は,必ずしも増えるようになるとは了解していない。今日まで伺ってきた総会の意向を小委員会に伝えて具体案の作業に移ってもらうことにしたい。具体案の作業というものはどのくらいの期間がかかるか分からないが,例えば,その中間報告などが出てくる時点で,増えるか増えないかという見定めがつくかもしれない。
 しかし,この具体案の上から増える増えないという問題が出てくると同時に,この問題はかなり重要な問題で,総会の決定すべき事項だろうと思う。また,この次の総会で,小委員会に申し送る際の了解事項というような中で,字数が増えるというようなことについては,なるべくならば字数そのものは増減いずれにしてもむやみに動かさないでほしいとか,あるいは,減らしてもらいたいとか増えてもいいんだとかいうような点は,注文としてはこの次の総会で小委員会にお願いするという柱の中に入る問題ではないかと思う。
 小委員会の方で,具体案を作成するわけだが,結局は幾らか増えるとか幾らか減るとか,現状どおりであるとかいうことを総会で決めるというのは1月の段階ではなさそうだ,と私は予想している。

長岡委員

 この次の総会で決まらないか。

福島会長

 決まらないと思う。例えば,この次の総会で,字数についてはあまり変動させないでほしいなどということぐらいは決まるのではないか。
 しかし,実際に作業をしてみなければ,減るのか増えるのかということは分からない。実際の作業というのは,とても1月までに小委員会でできるはずはないと思う。
 本日の総会はこれで終了する。

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