国語施策・日本語教育

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次第 漢字表の具体的検討のための基本的方針について(協議)〔その1〕

古賀副会長

 今日の議題は,既に資料をお手もとにお配りしてあるが,「漢字表の具体的検討のための基本的方針(案)」についてである。これまで数回漢字表に関する基本的な問題について協議してきたが,前回の総会での意見に基づき,問題点整理委員会で,これまでの審議や今までに何回か実施したアンケートによる各委員の意見を整理して,10月12日(金)に開いた委員会でお手もとにお配りしてあるような基本的方針案としてまとめたわけである。その関係で,まず遠藤主査からこの案についての御説明をいただきたい。

遠藤主査

 前回の総会でいろいろ議論を行ったが,その意見を大体要約したものがお手もとの議事要旨の16ページの上から2行目〜5行目にかけての意見である。これは会長の見解ではなかったかと思うが,それには,「小委員会で検討してもらうための総会の意向をまとめる場合,アンケートの結果そのままではなく,ある程度抽象化して数項目にまとめた形のものにし,アンケートの結果等は参考に付けることとしたい。その案について次の総会で審議してもらうことになる。」とある。そういう趣旨に従い,事務当局と相談して整理委員会にかける草案を作り,それを10月12日に開いた整理委員会にかけて検討した。なお,当日の整理委員会には会長や副会長の御出席があった。そして議論をした結果,今お手もとに差し上げてある「漢字表の具体的検討のための基本的方針(案)」ができ上がったわけである。今日は,これについて御審議いただきたいと思う。ただ整理委員会では,この基本的方針案は,一般に公表するものではないとの考えの下に,各委員は,今までの審議や議論を通じて大綱については既に了解し,よく分かっていると思うので,個々の字句にこだわることは避け,なるべく小委員会の方々に総会の意見が通じるように表現した方がいいのではないかと考えてまとめたものである。したがって,これを公表した場合には,字句の点では一般の人が読むといろいろ議論を呼び,問題になるような点も多少あるかと思う。これは総会で承認されれば小委員会に付託される資料であるので,整理委員会では,各委員の意見を反映させる趣旨でこの案を作ったということを理解していただけたら大変有り難い。中身については,お手もとの資料を御覧いただければ分かるように,前文と五つの項目からなっている。

古賀副会長

 この資料を事務当局に読んでもらうこととする。

石田国語課長

 それでは朗読する。


漢字表の具体的検討のための基本的方針(案)


 本第11期国語審議会は,審議事項として,まず,漢字表に関する問題を取り上げ,問題点整理委員会による問題点の整理案及びこれに対する各委員会の意見の収集結果を参考としつつ,総会において漢字表に関する基本的問題について協議を行ってきた。
 今後,漢字表の具体的検討のための委員会において,その作業を進めるに当たっての基本的方針は,これまでの審議経過にかんがみ,次のとおりとする。
 なお,このほか,これまでの総会における審議の過程において各委員から提出された意見について十分配慮し慎重に検討を進めるものとする。

1  漢字表は必要であると認められるが,その性格については,現行の当用漢字表のような制限的なものとはしない。
2  漢字表は,法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など一般の社会生活において使用する場合を考慮して選定するものとする。これを科学・技術・芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。
3  漢字表は,現代の国語を書き表すためのものとする。
4  学校教育との関係については,初等中等教育との関連に十分配慮するものとし,当用漢字別表その他については,更に総会において検討する。
5  固有名詞に用いる漢字その他現行の当用漢字表の使用上の注意事項に掲げられている事項等に関する取扱いについては,これまで各委員から提出された意見を十分参考としつつ,検討を進めるものとする。

古賀副会長

 この「基本的方針(案)」というのは,漢字表の具体的検討を行う作業委員会が仕事をするに当たって,こういうことを念頭においてやっていただきたいという各委員の意向を取りまとめたものという形式のものだと考えている。したがって,細かい字句の問題は別として,これでは十分意思の伝達ができかねるというような点があったらおっしゃっていただきたい。また,ここには挙げてないが,こういう大事な問題があるというような点があったら意見を出していただきたい。そして,これから出発しようとしている作業委員会の仕事がなるべく円滑に能率よく進むようにお願いしたいと思う。
 この基本的方針(案)の審議の進め方について何か意見がないか。特になければ,全般にわたって御意見なり御質問なりがあったらおっしゃていただきたい。

木庭委員

 「1」では「漢字表は必要であると認められるが…制限的なものとはしない。」と言っているが,それでは何的なものにするというのか。

古賀副会長

 今の意見は,作業委員会に預けるに当たって,この表現では不徹底だということか。

木庭委員

 言い方がちっょとあいまいな感じがしたので質問したのである。

古賀副会長

 見方によってはあいまいだが,私の了解したところでは,暗黙のうちに,前期で音訓表,送り仮名の付け方を改定したときの制限的なものとはしないという流れの考え方を,今度漢字表をこしらえる場合にも前提にするということだったと思う。

遠藤主査

 そういうあいまいな点が幾つかここにはあるが,しかしあいまいでも小委員会には分かると思うし,また,かえってはっきりした表現を取ると具合の悪い面もあると思う。ただ今の「制限的なものとはしない。」ということもこの総会で随分問題になり,「目安」とか「よりどころ」がいいのかというような議論があったが,字句まではまだ決まっていない。したがって,いずれ総会で議論していただいた上決定することになる。ただ,各委員とも制限的なものとはしないという気持ちはお持ちのようだし,またそれが大部分の委員の御意見であったと思う。だから,それを小委員会に伝えるということでいいのではないかと考えた。また,「3」の「現代の国語」についても整理委員会で問題になり,この表現は非常にあいまいではないか,一体「現代の国語」とは何かということでいろいろ議論した。そして,例えば現在流通している国語であるとか,具体的に言えば,「2」を中心にして使用されている国語で,現在とこれからある期間使われる国語とかであろうということだったが,それをどう表現するかは非常に困った。
 しかし,ここではこういうふうに書いておけば,少なくとも委員の方々にはお分かりいただけるのではないかということになった。表現が必ずしも的確ではないが,趣旨はそういうことである。

木庭委員

 趣旨はよく分かった。「2」にお触れになったのでそれについて考えると,例えば芸術はこの表の範囲外であるというふうに言っているが,現在,文学は大体新聞・雑誌に掲載になるものである。それにもかかわらず,新聞・雑誌の中で文学がまた特殊な位置を占めるのかどうか,そういうようないろいろな問題が実際的にはすぐ出てくるように思う。この資料は非常にきれいに整理されていて気持ちは通じるが,その代わり,何となく事がぼけてしまっているような感じもする。

下中委員

 「2」では「漢字表は,…使用する場合を考慮して選定するものとする。」と言っているが,この表現だと,「使用する」のは漢字表だというふうに取られる。また,「使用する場合を考慮して」というと,通常の解釈では使用しない場合が当たり前とか,使用しない場合の方が普遍的だと取れると思うが,それでいいか。

遠藤主査

 そういう意味ではない。

下中委員

 そうすると,「使用することを目的として」というようにしないといけないのではないか。

遠藤主査

 これについては,整理委員会でいろいろな意見が出て検討した結果落ち着いたものである。

下中委員

 もう一つ,「これを科学・技術・芸術その他の各種専門分野や個々人の表記…」というのも非常に文章がおかしいと思う。これは,「学問の専門分野,文学,個々人の記述」とすべきではないか。「表記」というのは,人名の表記とか,そういうふうな用語だと思う。

遠藤主査

 前期に改定された音訓表と送り仮名の付け方の前文の中に同じ表現があるが,これは,それをそのまま,趣旨は変わらないということでここへ移したものである。前期の審議会に関係のあった方は御存じだと思うが,これは実はそのままの文章である。

下中委員

 芸術と言うと,文学は別として,作曲すること,演奏すること,絵を書くことなどを指すことになる。音楽理論とか色彩論というのは科学の分野に入るので,やはり「学問の専門分野,文学,個々人の記述」としておいた方がいいと思う。

遠藤主査

 前期でも意見がいろいろ分かれたが,結局こういうところへ落ち着いた。なお,芸術の中には文学,つまり言語芸術という意味で文学も入れていると思う。そのほかの芸術,例えば造形芸術であるとか音楽芸術であるとか,その形態に従っていろいろな芸術というものを考えて表現しているのではないかと思う。

下中委員

 「2」の「使用する場合を考慮して」という表現は直すことになるのか。

古賀副会長

 今のお話のように,字句をある程度修正しながら進めるということもあるが,同時に,自分はそうはしたくないというように考えている方もおられると思う。ここでは,この基本的方針(案)の意味を理解していただき,具体的な仕事をする上で不自由がないように十分配慮するということが大事だと思う。したがって,そういう点を主眼にしていろいろ意見を出していただく方が今後の仕事をする上で一層有効だと思う。
 今修正意見のあった部分を,意見どおり「使用することを目的とし選定するものとする。」というように直すということでいいか。

黒羽委員

 これは小委員会への要望書とか申し送り事項のようなものだから,「目的として」でも「考慮して」でも別にこだわることはない。非常に遠い将来のことを考えると,国語審議会で漢字表を作れば,新聞の立場からだけ言うと,その新しい漢字表をそのまま新聞で使うか,あるいはそれに多少修正を加えて使うかということは,厳密に言えば各新聞社の問題になってくる。しかし,最近はいろいろな事情があって,例えば,新聞協会などで具体的に新聞社での使い方を決めるというようなことになるのではないかと思う。そういうわけであるから,国語審議会の答申に「目的として」と書いてあったからといって,何もそのとおりにしなくてもいいわけだが,しかしやはりそれを拳(けん)々服膺(よう)しなければならないとか,あるいは「考慮して」ぐらいならそれを非常に重大な参考事項とするとか,いろいろな考え方が出てくるかと思う。そこまで考えると国語審議会では,「目的として」というような強い言葉を使っておかない方が将来非常にやりやすいと思う。

下中委員

 「使用することを考慮して選定するものとする。」ならいいと思う。

古賀副会長

 今の修正意見どおり修正することとしていいか。

遠藤主査

 下中委員に抗弁するようだが,「使用すること」と言うと,もう使用することが決まっているように取られるが,「場合」と言うと,幾らかそれより柔らかくなるというお考えがあるのではないか。

黒羽委員

 私は,「目的」と「考慮」だったら「考慮」ぐらいにしておいた方がいいと思う。

古賀副会長

 一応これだけ意見の交換があれば,この資料の本当のねらいが何であるかは,実際に仕事をする場合にも十分理解しながらやっていただけるのではないかと思う。そこで,とにかく字句の問題に固執せず,その趣旨とするところを詰めておくことの方が大事だと思うので,主としてそういう点に力を入れていただくようにしたいと思う。それから「各種専門分野」については,「学問の専門分野」の方がいいという意見もあったが,これも今までの発言で十分考えは通じるかと思うので,かえって訂正することによって,訂正した範囲内のことだけをやってもらうという窮屈なものにならないよう,総会の意向をうまく伝達するよう努力したい。そういう点は,事務当局の方で十分気を配ってもらうようにしたいと思う。

志田委員

 先ほど「1」で「制限的なもの」と言いながら,その反対の積極的なものが出ていないという意見が出ていたが,「2」についても同じような問題が出ている。そこで,「2」の「場合を考慮して」を「使用するものとして」と一応直してみたらどうか。そうすると強さがまだ残っているかもしれないが,今度は「3」の「書き表すため」の後に前期で使われた「目安」という言葉を添えて,「書き表すための目安」とすれば,「1」の「制限的なものではない」ということに対して,「目安」だという受け方が形の上では出てくるのではないか。そうすれば,「ものとして」も後の「目安」との関係で,そんなに絶対的な強い意味ではないということがあるいは出ると思う。

市古委員

 「現代の国語」とは何か。また,個人個人の書いたものは現代の国語ではないという考えか。

遠藤主査

 整理委員会では,現代の国語とは今使われている国語とか,あるいは今から使われる国語とかなどいろいろ出たが,なかなか適当なものがないということで前期と同じ表現になった。

市古委員

 「2」で「一般の社会生活において使用する。」と言っているが,何かこれが現代の国語のように見える。ところが,その後の方では「個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。」と言っている。ということは,はやり個々人の表記のことを考えながらやるということではないか。もしそうだとすると,結局全体をやるのがねらいなんだが,一応そういうように言っておくのか,その辺の考え方をお伺いしたい,また,そこでなぜ「現代の国語」というのをここに突如として出したのか。

遠藤主査

 これは,前期に改定された音訓表の前文にある「現代の国語を書くため」という表現を使ったのであって,突如として出てきたものではない。

市古委員

 現代の国語とは何かはっきりさせておいた方がいい。また,皆が使うのが現代の国語なのであって,何も新聞,雑誌で使うものだけが現代の国語だとは思わない。つまり,我々が使っているのが現代の国語であって,我々は何も古代の国語とか,あるいは将来の国語を使っているわけではない。皆が使っているからこそ現代の国語なのであって,新聞で使っているものだけが現代の国語だとは絶対に思わない。

遠藤主査

 ここでは,「一般の社会生活」を中心として,そこで使われる漢字表というものを考えている。

市古委員

 それならそのようにお書きになる方がいい。何か新聞のものをすぐ現代の国語と言い換え,それでいいというのはどんなものか。広い意味で本当は全部を考えたいという底意だというなら,「3」を先にして「特に後の場合を考慮して」とすれば話がよく分かると思う。ところが非常に大きな命題が後の方に来ているので,私はどうもそれが腑(ふ)に落ちないわけである。そこで,本当のところは一体どちらなのか伺いたいのである。

植松委員

 私も今の御意見のように,「3」を前にして「2」を後にした方がいいと思う。つまり「現代」というのは,今の「2」に該当するものをねらっているのだということを明らかにする方がいいと思う。なお,「2」があれば古代は出てこないに決まっているのだから,「3」はなくてもいいと思う。

市古委員

 私も「3」はなくてもいいと思う。これがあるためにかえって引っ掛かる。

遠藤主査

 これはなくてもいいという意見もあったが,前期の音訓表などの前文に「現代の国語を書くため」という表現があるので,それを省いてしまうのもどうかと考えた。

古賀副会長

 確かにある意味では,前期の考え方に多少引っ張られている気味があるかもしれないが,やはり念のため,こういう表現はあった方がいいだろうということだったと思う。もっとも,大多数の方が削除した方がすっきりしていいという御意見であれば削除してもいいと思う。しかし,それは形式的な問題であって,最初に言ったように,あくまでも,今日各委員が交換しておられる意見がよく小委員会に浸透するようにすることが一番大事だと思う。

小谷委員

 「2」は,文法上は漢字表が主語であるから,「漢字表を使用する場合」と読むのだと思うが,私は今まで一般社会生活において国語を使用する場合,あるいは国語を表記する場合という意味でこれを読んでいた。「漢字表を社会生活において使用する場合」というのは,ちょっと妙な表現のような気かする。そこで,むしろ「国語」を主にして,例えば「一般社会生活において,国語を使用する場合」,あるいは,「一般社会生活において,国語を表記する場合」としてはどうか。

小谷委員

 第2点は,「2」の後段であるが,音訓表と漢字表では観点が少し違う点もある。科学・技術については,審議会の中の比較的科学・技術寄りの委員の方々から,この漢字表をある意味の目安にしたいとか,中にはそこまで適用させよという御意見が大分あったように思う。そこで,これらと文芸なり個々人が使う手紙などの書き方なりとは,公共性,芸術性その他の点において多少の差があると思うので,そのことを文章に出したい。例えば,これを「文芸や個々人の国語表記」にまで及ぼすつもりはないことはもちろんである。また,科学・技術等についても,直ちにこれを適用しようとするものではない。」ぐらいにしてはどうか。
 第3点は,「3」であるが,前からここには二つの問題があった。第1は「現代の国語」ということ,第2は「書き表す」ということである。この「書き表す」についてであるが,例えば,新聞については我々はそれを読む立場であるが,その背後には常に編集者とか記者の書き表すという行為がある。そういう意味で,書かれたものを読む立場と一応区別して「書き表す」としたものと思う。また,「現代の国語」は,「これから書く」というところに重点があるのではないか。その意味で,この「書き表す」が重大だと思っている。

古賀副会長

 私は個人的には理屈っぽく考えたい面もあるが,これで一般には分かると思われるような点はなるべく茶々を入れないでおとなしく伺うことにしている。
 なお,厳密に言うと,漢字表というのは漢字使用の目安として示すもので,その表の中に掲げてある程度のものを活用するのがいいところではないかという,いわば見本だと思っていいのではないか。したがって,その漢字表の中に掲げる漢字としてどのような字を選定するかというときに,心掛けてもらいたいことを注文する程度で結構分かると思う。
 それから専門分野に関する問題についても「1」に「漢字表は制限的なものとはしない。」と言ってあるのだから,これについて重ねて言うまでもないという意見も総会でしばしば出たが,いわばだめを押したものである。そこで,この資料を余り細かく解釈しようとすると,お互いの意思の疎通がかえって悪くなるのではないかと思う。そういう意味で,多少寛大に扱っていただく方が,むしろこういう方針の決め方としては柔軟性があっていいのではないか。

木内委員

 先ほど「3」はいらないという意見が出たが,「3」のうち,「現代の国語」はともかくとしても,「書き表すため」という方は絶対避けられない。したがって,「3」はやめるわけにはいかない。
 それから,資料の表現の仕方が漠(ばく)然としているということだが,きちっとしたものを書いたらかえってやっかいで,漠然たるところが有り難いところだと思う。これでやっているうちに段々きちんとしてくる。その辺のところは,今までの音訓表との関係などもあって,総会の審議は,今の段階でそうはっきり割り切ってしまえるほど尽くされていない。
 もう一つは,「2」の表現では,「漢字表を使用する」ということになってしまう。しかし漢字表は使用するのではなく,そこにあるだけである。そこで「…漢字を使用する場合を考慮して…」とすれば意味は通じる。

古賀副会長

 今まで意見を伺った限りでは,この資料の意味を取り違えておられる方はないと思うので,このまま進んでいっていいのではないかと思う。いずれきちんとした漢字表ができ,前文ができると思うが,そのときには,だれが見てもこれは立派だというようなものを,一つ知恵を絞って仕上げていただきたいと思う。

下中委員

 小谷委員の御意見に賛成であって,学術専門用語の簡素化というのはやはり必要だと思う。私は,せっかく,選定した漢字表は,やはり一つの目安として,制限はしないがなるべく生かしてほしいという気持ちを今も持っている。したがって,文芸・文学の表現,個々人の表記との間には非常に差があるので,並べるとその辺のニュアンスが逆になるのではないかと恐れる。

古賀副会長

 先ほども申し上げたように,ここで皆さんが交換された意見の記録を小委員会委員もよく勉強していただきたいということを,この総会の意向として伝えることを申合せすれば大変いいと思う。

村松副主査

 これは前に御説明申し上げておくべきことだったと思うが,この五つの項目の順序は,前に行ったアンケートの項目の順序と同じ配列になっている。したがってこの順序に特別の意図はない。また,その内容は,アンケート等の結果,ある程度一致している意見について重複している面をこういう形でまとめたということでこれができている。したがって,それぞれの項目についての各委員の具体的な意見は,アンケートの結果を御覧いただくとそこに出ている。そこで特に付け加えて申し上げたいことは,5項目のうちで1,2,4,5については,ある程度多くの方の意見が一致したというか,かなり同じような意見であったが,ただ「3」については,まだはっきりした意見としてまとめのような形での答えは出ていない。そういう意味で「3」については,なお総会などで皆さん方から具体的な意見を出していただき,意見の一致としうか,あるいは共通理解というものができればと思っている。「3」でこういう表現をしたのは,先ほどからいろいろ説明があったように,改定された音訓表の前文に「現代の国語を書くため」というように出ているので,とにかくその方針を一応踏まえ,これを前提にして審議してはどうかと考えたからである。したがって,この点についてはいろいろな御意見を出していただく方が,今後小委員会などで具体的な作業を進めるためにはいいのではないかと思っている。

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