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1「当用漢字表」の改善に関する審議経過

(1)「漢字表の具体的検討のための基本的方針」に至るまでの経緯

 今期においては,前述のように,審議事項としてまず「当用漢字表」の改善の問題を取り上げることにしたが,その審議を始めるに当たって,新しく考えられるものを,当面,「漢字表」と呼ぶことにした。
 まず,漢字表に関する基本的問題について審議することとし,運営委員会の議を経て12人の委員から成る問題点整理委員会を設置した。同委員会では,従来の審議会での審議の成果及びそれまでの総会で出た意見等を参考に漢字表審議に関する幾つかの問題点を整理し,それについて順次3回にわたって質問票により各委員の意見を調査してその結果を取りまとめた。そして,それを参考にしながら,総会で3回にわたって漢字表の性格その他の基本的問題について討議を重ねた。このような審議の方法により総会での討議を一通り終えた後,その討議の結果を取りまとめて問題点整理委員会で次の「漢字表の具体的検討のための基本的方針」(以下「基本的方針」という。)の案を作成し,この案について第87回総会(昭和48年10月26日)において種々意見を交換した後了承した。


漢字表の具体的検討のための基本的方針

 今後,漢字表の具体的検討のための委員会において,その作業を進めるに当たっての基本的方針は,これまでの審議経過にかんがみ,次のとおりとする。
 なお,このほか,これまでの総会における審議の過程において各委員から提出された意見について十分に配慮し慎重に検討を進めるものとする。

1  漢字表は必要であると認められるが,その性格については,現行の当用漢字表のような制限的なものとはしない。
2  漢字表は,法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など一般の社会生活において使用する場合を考慮して選定するものとする。これを科学・技術・芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。
3  漢字表は,現代の国語を書き表すためのものとして考えるものとする。
4  学校教育との関係については,初等中等教育との関連に十分配慮するものとし,当用漢字別表その他については,更に総会において検討する。
5  固有名詞に用いる漢字その他現行の当用漢字表の使用上の注意事項に掲げられている事項等に関する取扱いについては,これまで各委員から提出された意見を十分参考としつつ,検討を進めるものとする。

 この「基本的方針」は,その考え方及び語句表現において必ずしも十分とは言いがたいところもあるが,各委員がそれまでの協議を通じて了解していることを前提として,漢字表の具体的検討のための一応の方針として了承されたものである。これらの点については,その後の具体的検討が深められる過程で更に考慮していくこととなった。その幾つかの点について述べれば次のとおりである。第1項は,何らかのよりどころとなるような漢字表が必要であることを認め,その漢字表の性格を,この表の中の漢字だけを使用するというような制限的なものとはしない,という方針で具体的検討を行おうとする趣旨であり,これを「当用漢字改定音訓表」(昭和47年6月28日国語審議会答申)の前書きにあるように,いわゆる「目安」の語で示すかどうかは今後の検討に待つこととなった。また,第3項の「現代の国語を書き表すためのもの」という考え方については,全員の一致を見るまでには至らなかったが,今後の検討の過程で考慮していくこととなった。更に漢字表の字数をどのように考えておくかについては,この段階であらかじめ決めることはせず,現行の当用漢字表と比べ余り急激な変化を来すことは避けようという了解の下に,今後の具体的検討の結果に基づいて判断することとされた。

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