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1「当用漢字表」の改善に関する審議経過

(2)漢字表委員会における検討の経過

 前述の第87回総会で,「基本的方針」と併せて漢字表の具体的検討のための委員を設けることが決まり,その後,運営委員会の議を経て20人の委員が選ばれ,昭和49年1月,「漢字表委員会」が発足した。
 まず,漢字表委員会では,具体的検討を始めるに当たっての基本的な態度,検討の手順及び資料について数回にわたって協議した。そして,一応前述の「基本的方針」によること,「当用漢字表」にはとらわれないが,これを重要な資料としつつ新しい漢字表を作るという考え方で進めること,国語における漢字の意義や役割を認識しながら検討すること,教育に関する問題は,直後の検討事項としては取り上げないが,絶えず念頭に置いて検討を進めること等を了解した。また,検討に際しては,できるだけ多くの資料に当たることとし,まず差し当たって現代の新聞・雑誌での漢字の使用度数,従来の各種の漢字表での漢字の採用状況,「当用漢字表」の実施に伴う言い換え・書き換え等の語などに関する資料等を調べることとした。
 この結果を総会に報告し了承を得た後,漢字表委員会は,検討資料の作成その他具体的検討に必要な作業を行うために9人の委員から成る「小委員会」を設けることとした。この小委員会は,次に述べる各種の調査結果や表などに基づいて検討のための資料を作成し,漢字一字一字について種々の角度から検討して問題点を探る作業を行った。なお,ア,イ,ウの資料に含まれる漢字の字数は,重複を除いて約4,200字である。

 現代の新聞・雑誌における漢字の使用度数に関し国立国語研究所が行った4種の語彙(い)調査
@ 婦人雑誌調査(昭和25年)
A 総合雑誌調査(昭和28年,29年)
B 雑誌90種調査(昭和31年)
C 新聞調査(中間報告)(昭和41年)
 以上の資料を総合的に検討した「語彙調査四種の使用度による漢字のグループ分け」(林四郎 昭和46年)を参考とした。
 明治以降の各種の漢字表での漢字の採用状況に関する次の資料
@ 福沢諭吉「文字之教」の漢字(明治6年)
A 「尋常小学校ニ於テ教授ニ用フル漢字」(明治33年)
B チェンバレン「文字のしるべ」の漢字(明治38年)
C カナモジカイ「500字」(昭和11年)
D 国民学校国語教科書漢字(昭和16年〜20年)
E 大西雅雄「日本基本漢字」(昭和16年)
F 常用漢字表(大正12年 昭和6年修正)
G 標準漢字表(昭和17年)
H 当用漢字表(昭和21年)
I 当用漢字別表(昭和23年)及び小学校学習指導要領の学年別漢字配当表の備考に示された漢字(昭和43年)
(付)「朝日新聞社特別選定追加漢字」(昭和21年)
 以上の資料を総合的に検討した「漢字の層別」(森岡健二 昭和48年)を参考とした。
@ 人名用漢字別表(昭和26年)
A 当用漢字補正資料(昭和29年)
 以上のほか,当用漢字表実施に伴う言い換え・書き換え(いわゆるまぜ書きを含む。)の語に関する次のような資料
 ただし,これらについては十分に検討できなかった。
@ 「新・用字用語集」(昭和47年 日本新聞協会)
A 「同音の漢字による書きかえ」(昭和31年 国語審議会報告)

 漢字表委員会は,小委員会での作業結果について協議し,また,その進行状況について総会にも報告し,各委員の意見を聞いた。
 このような検討のなかで,国語における漢字の役割など,漢字表の作成に当たってあらかじめ考えておくべき幾つかの事柄について意見の交換を行った。また,小委員会における一字一字の検討の経過から見て,漢字の本格的な選定に入る前に,選定の基準について種々の角度から検討する必要があると考え,これについて具体的な観点を立てた。これらについては,以下に項を改めて述べる。

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