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1「当用漢字表」の改善に関する審議経過

(4)漢字選定の方針に関する具体的観点

 漢字表の漢字の選定に当たっては,「当用漢字表」の表内字・表外字を含め,漢字の持つ一般的特質を考慮してこれらを種々の角度から十分検討することが必要であると考えた。その具体的観点を以下に挙げる。これらの観点は,必ずしもこれで尽きるものではなく,また,種々の角度から検討する必要上,次元の違う各種のものが並べてある。実際の選定においては,これらの観点から選定の基準を考えて,総合的に判断することとなるものである。
 なお,観点の意のあるところを明らかにするため,具体的に漢字を挙げてあるが,それらはあくまでも例示にすぎないのであって,これらの漢字を取り上げあるいは取り上げないと考えたものではない。

(注) @  保科説明=「当用漢字表」制定当時の国語審議会幹事長保科孝一氏の新聞紙上での解説による。
A  漢字右肩の*印=「当用漢字表」外の漢字であることを示す。
使用度数等から見る。
 現代の新聞・雑誌等での使用度数及び明治以降の各種の漢字表での採用状況など。
漢字の機能度の点から見る。
@ 語構成能力から考える。
    機――機会,機械,機構,危機,動機
    現――現金,現在,現状,実現,出現
A 主として音で用いるもの,主として訓で用いるもの,音訓両用のものという点から考える。
[1] 主として音で用いるもの
該――ガイ 租――ソ 栓*――セン
[2] 主として訓で用いるもの(保科説明では,少数の例外を別として当用漢字表から省いたとしている。)
扱−あつかう 込――こむ 戻*――もどす,もどる
[3] 音訓両用のもの
企――キ,くわだてる 許――キョ,ゆるす 泥*――デイ,どろ
B 主として特定の語だけに用いるものはどうするか。(保科説明では,特定の語だけに用いられて,他の字との熟語構成能力の少ないものは省くとしている。)
   脂 布 福 矛盾 生*
固有名詞に関するものはどうするか。(当用漢字表に「別に考えることとした。」とある。)
@ 人名に関するものはどうするか。(現在,子の名のためのものとして「人名用漢字別表」がある。)
A 地名に関するものはどうするか。
 もし都道府県名を考えるとすれば,当用漢字表以外のものとして次の字がある。(*印省略)
    茨 栃 埼 奈 潟 梨 阜 岡 阪 媛 崎 熊 鹿 縄
漢字の表す意味から分類して各方面から考えてみる。
@ 地形・地勢に関するもの
    峠 浦 崖* 堀*
A 自然現象に関するもの
    雲 光 霧 渦*
B 動植物に関するもの(当用漢字表に「動植物の名称はかな書きにする」とある。)
    犬 鶏 蚕 桃 猫* 蝶* 栗*
C 身体に関するもの
    舌 膜 鼻 唇*
D 親族名に関するもの
    嗣 婿 婆 爺*
E 衣食住に関するもの
    絹 麦 軒 靴* 汁*
F 器財に関するもの(保科説明に「器物の類もかな書きにする方針」がとられたとある。)
    箱 俵 盆 皿*
G 人事・心情に関するもの
    働 恋 仇* 厄*
H 色彩・形状・数量に関するもの(特に度量衝に関するものはどうするか。)
    紺 弧 壱 勺 匁 凸*
I その他
漢字の表す語の品詞からみる。
@ 動詞・形容詞に関するものはどうするか。
    煮 憎 眺* 嬉*
A 代名詞に関するものはどうするか。(当用漢字表に「なるべくかな書きにする」とある。)
    君 彼 誰* 僕*
B 連体詞・副詞・接続詞・感動詞に関するものはどうするか。(同上)
    既(すでに) 遂(ついに) 且(かつ) 但(ただし) 或*(ある,あるいは) 僅*(わずか)
C 形式名詞・助詞・助動詞に関するものはどうするか。(同上)
    程 頃*
次のような,漢字の用法上特別のものはどうするか。
@ 漢字一字で音読して語を表すものはどうするか。(仮名書きにした場合分かりにくくないか。)
    胃 錠 塔 塾* 塀*
A 漢字一字で一音節の和語を表すものはどうするか。(同上)
    酢 矢 蚊 餌* 藻*
B 意味の似ている同音の漢字はどうするか。(保科説明では,原則として一方を省くとしている。)
    回――廻* 鉱――礦* 付――附 欲――慾*
C 同訓の漢字はどうするか。
    [1] うた――歌 唄*  はだ――膚 肌*
    [2] かき――垣* 柿*  さけ――酒 鮭*
D 外来語に当てた漢字はどうするか。(当用漢字表に「外来語はかな書きにする」とある)
    罐*――カン  頁*――ページ
漢字の構成から見る。
@ 字画の多いものはどうするか。(保科説明に「字形のむずかしいものは省く」とある。)
    鬱* 餐* 籖*
A 漢字の構成要素となるものはどうするか。
    巾――市・布・帆・帳 皿*――盆・益・盛・盤 頁*――項・領・顔 牙*――邪・芽・雅・冴* *屯――純・鈍・頓*

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