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2「当用漢字字体表」の改善に関する審議経過

(2)字体表審議の問題点に関する意見調査

 問題点整理委員会においては,先の問題点に必要なものを加えて「字体表審議の問題点質問票」を作成し,各委員の意見を調査した。(この調査の前提として,字体の意義については,「当用漢字字体表」作成当時の考え方により,「字体」とは,一点一画の組合せから成る一字一字の形であって,印刷における明朝体・宋朝体・ゴシック体等や筆写における楷(かい)書・行書・草書・隷書等の「書体」とは区別されるものとした。)
 その後,同委員会では寄せられた意見を整理して総会に報告した。総会ではこの報告に基づいて意見を交換したが,字体表検討の方針をまとめるまでには至らなかった。
 しかし,その報告を中心とした意見の概要は,今後の審議に当たって示唆するところが多いと考えられるので,以下に項を追って述べる。

 字体表の必要性については,ほとんど全員が何らかの意味で必要であるとしている。
 字体審議の方向については,字体表についていろいろな意味で新しく考え直すという意見もあるが,一度定めた字体は社会の慣用や教育の上から見ても,軽々しく変更すべきではないなどの考えから,現行の字体表に見られる矛盾,あるいは新しく加わる漢字があればその字体について検討し,部分的に修正する程度でよいという意見が多くを占めている。
 字体表の使用分野については,特にその使用分野を定めないという意見もあるが,新しく考えられる漢字表との関連を重視して,例えば,法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など一般の社会生活において使用するものとするという意見が多く占めている。
 字体を考える漢字の範囲については,新しく考えられる漢字表外の漢字には及ぼさないという意見と,それにも及ぼして字体の系統性(偏,冠,旁(つくり)など。)を配慮するという意見とがそれぞれ相当ある。
 字体表の性格については,現行の字体表と同じく「標準」とするという意見と,「目安」程度のものとするという意見とがそれぞれ相当ある。このように意見が分かれたのは,「標準」,「目安」という言葉の理解の仕方の違いによるものと考えられる。
 旧字体と新字体とのいずれを中心として考えるべきかについては,旧字体(現行の字体表制定以前に用いられた字体。)を中心として考えるという意見よりも,新字体(現行の字体表に掲げられている字体。)を中心として考えるという意見の方が多い。ほかに両者を対等の関係のものとして考えるべきであるという意見もある。
 教育との関連の問題については,当審議会としても十分考慮するという意見と,当審議会が教育上の具体的なことを検討するのは難しいという意見とがそれぞれ相当ある。
 このほか,字体検討上のさまざまな具体的な問題についての意見の概要は次のとおりである。
  
@  略字体については,現行の程度でよいという意見が多くを占めているが,その中にも現在社会に通用しているもの(例;灯(燈),卆(卒),(職),(第)……)は採用するなどの一部の手直しは必要であるという意見がかなり出されている。
A  点画の整理については,現行の字体表では例えば「者(),突(),盗(盜),隆(),歩()……」のように整理しているが,おおよそ現行の程度でよいという意見が多く出されてはいるものの,もっと整理を進めるとか,現行のような整理は不必要であるという意見もかなり出されている。
B  活字体と筆写体との関係については,現行のように活字体と筆写体とは一致させることは望ましいが,無理に一致させる必要はないという考え方が多い。なお,活字体は読むためのもの,筆写体は書くためのものであって,本来一致できないものであり,むしろ正字体と略字体の2種があってよいという意見などがある。
C  字体の系統性については,できるだけ系統性を貫くように配慮するとともに,具体的に一字一字についての筆写の習慣等についても十分に考慮を払う必要があるという考え方が多い。(現行の字体表では,系統性も考えてはいるが,一字一字について筆写の習慣等も考慮されているので,例えば,旁の「弗」は「佛,拂]は「仏,払」と略字を採り,「沸」はそのままである。)
D  異体時の統合については,不必要であるという意見もあるが,必要であるという意見が多くを占めている。(現行の字体表では,「効效」「姉」「冊册」等,活字として従来2種以上の形のあった漢字については,その一を採っている。)
E  中国の簡体字との関連については,略字体などを考えるに当たって,ある程度参考にし考慮を払うことは必要であるが,日本と中国とでは,文字生活の実態,漢字の簡略化の考え方などに違いがあるので,一般的な関連を考えることは困難であろうという意見が多くを占めている。なお,漢字文化圏の関連を考えて調整できるものは調整したい等の意見もある。

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