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次第 漢字表委員会の報告について(漢字表の具体的検討に関する問題について)

福島会長

 次に,漢字表委員会の報告を伺いたい。時間の都合で十分協議を尽くせないかもしれない。その報告について,この次までに考えておいてもらうことも出てくるかと思う。それでは,岩淵主査から漢字表委員会の進捗(ちょく)状況を説明願いたい。

岩淵主査

 漢字表委員会について御報告申し上げる。
 漢字表委員会は,第95回総会後,第1回(4月28日開催。)の会合を持ち,主査と副主査を互選した。私が主査で,志田委員が副主査ということになった。更に,漢字表の検討を進めていく手順,あるいは進めていく上での問題点などについて,自由に話合いをした。
 第2回(5月23日開催。)からは,第1回の結果を踏まえて,もう少し検討作業の進め方を詰めた。その時に出てきた問題として,具体的な作業をする前に,漢字表の目的,性格をはっきり決める必要があるのではないかとか,あるいは漢字表を一つの表にするか二つ以上の表にするか(これは漢字表の性格とか目的とかにからんでくる問題であると思う。)とか,また漢字表が一つか二つかで違ってくるが,漢字の字数について一応のめどを立てておいて作業に入った方がよくはないかとか,というようなことがあったためである。
 これはいろいろ経緯があるが,ごく簡単に申し上げる。
 漢字表の目的,性格を今ここで簡単に決めてしまうことは,いろいろ問題があるので,具体的な作業を進めていって,その間にそういうことも固めていったらどうであろうかというのが,大方の意見のようである。
 漢字表を幾つにするかということについては,一つの表がいいという説もかなりあるし,二つないし三つの表にまとめた方がいいという説も出て来た。
 字数については,前期の漢字表委員会などで検討した資料も多少あるので,そういう資料に目を通したが,2,000字ぐらいがいいとか,2,500字ぐらいがいいとか,あるいは3,000字ぐらいがいいとか,説が分かれて,これもどれに決まるというところまではいかなかった。
 第3回(6月6日開催。)は,一応そういうことを話し合ってから,その表を考えるには教育の問題を考えなければいけないということで,現在の教育の状況,あるいは教育用漢字のことなどについて話し合うことにした。教育のことは,考えなくてもいいという意見もあったが,少なくとも現在881字の「当用漢字別表」が出ていて,それは世間では「教育漢字」といわれているし,その表は国語審議会でかつて決めたわけであるので,それの処置をどうするかということは,やはり考えなければいけないだろうということである。また,一般社会のためということでなく,教育を考えた表を作るべきであるという考え方もあった。それからまた,一般社会のための表と教育のための表と二つに分けるという考え方と,それを分けてはならない,殊に近年高等学校などが,義務教育に準ずるような状態になったので,小中高で学習させる漢字は,一般社会で使う漢字と同じであってもいいのではないかという考え方も出た。ただし,教育についてはいろいろな教科があるし,いろいろな漢字が出てくる。それをすべて表の中に取り上げることはできないかもしれない。したがって,教育として出したいという漢字は,当然基礎的な漢字になるであろうという考え方も出た。
 第4回(6月27日開催)は,そういう教育との関連で表をどう考えるかということを引き続いて話し合ったが,結論を出すまでに至らなかった。
 それと同時に,今度は情報処理などの関連について話し合った。現在コンピューターなどが,盛んに使われているが,コンピューターで漢字を取り扱う場合に,各会社,あるいはコンピューターの機械の違いごとに違った処理の仕方をするということでは,いろいろな点で不便である。そこで工業技術院の方でそれを統一しようという考え方があるということが紹介された。それによると,ある程度字数の範囲を決めておきたいということで,第1水準,第2水準というように分けて,第1水準としては,約3,000字前後(この中には,仮名,ローマ字,記号などいろいろ入る。すべてが漢字というわけではない。),第2水準としては,第1水準を含んだ約8,800字(これは符号の作り方の上での制約があるそうである。)を決めたということである。そして,その中に漢字をどのくらい入れるかということが問題になるそうである。これが国語審議会で決めていくものと非常に食い違ったりすると,いろいろ問題が起こるかもしれないので,そういうことも考えたらどうかという意見もあった。
 以上のようなわけで,いろいろな方面から漢字表をどう考えるべきかを検討する必要がある。そこで,7月11日に漢字表委員会を開く予定であり,その席で今までに出たいろいろな意見をまとめて,漢字表の性格とか,あるいは漢字表を幾つにするかとか,字数をどう考えるかなどというようなことをもう少し具体的に検討してみたいと思っている。それができたら,この次の総会にはもちろん報告したいと思う。
 それから,前期の漢字表委員会では,主として頻(ひん)度数調査(もちろんそれだけではないが。)により,各種の漢字表などから出てくる漢字を4,000字余り検討して,その上で今度はどういう語をその漢字によって表すことができるかということを中心にして,漢字の問題点別分類(そのあらましのことは,第11期の報告にも出ている。)というものを作ってあり,これに具体的な漢字が付け加えられたものが,一応できているので,こういうものについてこれから検討していくことになる。
 それからまた,前々から問題になっている交ぜ書きや仮名書きになっている言葉について,それらをなるべく漢字で書くとすると,どんな漢字が必要になってくるかという面からも調べていくという作業を続けたい。
 そういうことから,必要な漢字を具体的に調べ上げ,その間に漢字表の性格とか目的とか,あるいはどういう表にするかということも明確にしていきたいと考えている。
 それから,漢字表の中に都道府県名,固有名詞,地名のようなものを入れるか入れないかという問題,憲法に関する漢字などはどういう取扱いをするかという問題,補正資料(補正資料は一部では使ってはいるが,国語審議会では正規のものとはなっていないが。)に出てくる漢字の問題,「人名用漢字別表」をそのままにしておくのか,あるいは漢字表の中にある程度取り入れるのかという問題等,これらについてもう少し話し合って,漢字表を具体的な形で総会にお見せできるよう進めていきたいと思っている。
 それで,非常に細かい問題があるので,漢字表委員会の中に小委員会を作りたいと考えた。小委員会は前期にも設けられて,9名の人が委員になった。今期も小委員会を作って進めることを了承していただきたい。所属委員は,飯島,黒羽,志田,畑,林(巨),林(四),森岡,頼の各委員と私である。この構成で具体的な作業を進めていきたいと考えているので,了承いただきたい。

福島会長

 ただいまの岩淵委員の報告について意見なり質問なりがあったら,どうぞ。また,漢字表委員会及び小委員会は,今後何回か次の総会までに会合を開いて,検討を進めていただくわけであるので,今後の検討に対する注文等でも結構である。(発言なし。)なければ,全般的な問題について,何でも結構であるから,発言いただきたい。

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