国語施策・日本語教育

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次第 これまでの審議経過等について(説明)

福島会長

 早速であるが,これから審議に入りたい。
 第13期第1回総会ということなので,これまでの審議経過について,事務当局に一応の説明をお願いしたい。柳川次長,どうぞ。

柳川文化庁次長

 委員の大部分の方々が継続して御就任になったわけであるし,また引き続いての審議ということでもあるので,簡単に御説明申し上げる。
 まず第1に,国語審議会の任務と仕組みの問題である。文部省設置法で国語審議会の設置が決められており,その所掌事務については国語審議会令で決められている。それによれば,「国語の改善に関する事項,国語の教育の振興に関する事項,ローマ字に関する事項」について「国語審議会は文部大臣又は文化庁長官の諮問に応じて」「調査審議し,及びこれらに関し必要と認める事項を文部大臣,関係各大臣又は文化庁長官に建議する」機関になっている。
 国語の問題は,言うまでもなく我が国文化の在り方に関する基本問題として重要な課題であり,明治以来,国家的な立場からの審議がなされてきている。
 振り返ると,明治35年文部省に国語調査委員会が設けられ,初代委員長に加藤弘之委員が任ぜられている。大正10年に臨時国語調査会が設置され,初代会長に森林太郎(森おう外)が就任した。続いて昭和9年に官制による国語審議会として発足している。初代会長は南弘であった。この審議会が続いてきて,昭和24年に,官制によるものからただいま申し上げた文部省設置法による国語審議会に改組されて,今日に至っているわけである。各省に置かれた審議会としては最も歴史の古い審議会と言われている。しかもその運営に当たっては,国民の各方面の意見を十分取り入れるとともに,常に主体的な立場に立って審議を行ってきた権威ある審議会であると言えると思う。
 次に,戦後の国語施策とその再検討のための審議の経緯について御説明申し上げる。
 現行の国語の書き表し方によるべき基準は,昭和21年以来,国語審議会の答申,建議に基づいて公示された一連の内閣告示・訓令によって行われてきた。(昭和21年内閣告示・訓令「当用漢字表」「現代かなづかい」,昭和23年内閣告示・訓令「当用漢字音訓表」「当用漢字別表」,昭和34年内閣告示・訓令「送りがなのつけ方」)これらの内閣告示・訓令による基準の実施後,国語施策をめぐっていろいろな論議,批判等もあり,戦後の国語施策を再検討すべき機運が起こってきたという受けとめ方のもとに,昭和41年6月に,時の中村文部大臣から国語審議会に対して「国語施策の改善の具体策について」という諮問が出された。それ以来今日までこの諮問に基づく御審議を願ってきているということである。
 この諮問で,具体的に検討すべき問題として次の六つの事項を掲げている。
 1.「当用漢字表」(別表を含む。)2.「当用漢字音訓表」3.「当用漢字字体表」4.「送りがなのつけ方」5.「現代かなづかい」6.「その他上記に関連する事項」
 この諮問事項のうち,「当用漢字音訓表」と「送りがなのつけ方」については,第8期から第10期(昭和41年6月〜47年6月)まで熱心な御審議をいただき,昭和47年6月「当用漢字改定音訓表」及び「改定送り仮名の付け方」の御答申をいただいた。
 この答申では,これまでの国語施策の制限的色彩を改め,現代の国語を書き表す場合の目安又はよりどころとすることを根本方針とされ,今後の国語施策の基本方向というか,基調を目安又はよりどころにするという方向をお示しになった。
 この答申に基づいて,昭和48年6月18日付けで「当用漢字音訓表」及び「送り仮名の付け方」が内閣告示・訓令されて,今日に至っているわけである。
 第11期審議会で,昭和47年11月以降,「当用漢字表」及び「当用漢字字体表」の問題を取り上げて審議を続けられて,去る1月21日,第12期審議会の最終総会で「新漢字表試案」をおまとめいただき,文部大臣に御報告いただいた。
 この間の審議について簡単に御説明申し上げる。
 第11期審議会(47,11〜49,11)では,総会を中心に「当用漢字表」の改定に関する基本的な問題について御協議いただき,その結果漢字表の性格を制限的なものとしないなどの5項目からなる「漢字表の具体的検討のための基本的方針」がまずまとめられた。その際,漢字の字数については,あらかじめ決めることはせず,現行の「当用漢字表」と比べ余り急激な変化を来すことは避けようという了解のもとに,今後の具体的検討の結果に基づいて判断することとされた。
 このような方針のもとに漢字表の具体的検討に入ることとし,漢字表委員会を設けて,種々の資料により約4,200字の漢字について一字一字検討され,その結果,「漢字選定の方針に関する具体的観点等」を明らかにされた。また総会では並行して「当用漢字字体表」の改定の基本的な問題を論議し,各委員の意見を集約,整理された。
 以上が大体第11期の段階である。
 続いて第12期審議会(50.1〜52.1)で,第11期の基本方向を引き継ぎ,漢字表(字種・字体・音訓)の問題に関して漢字表委員会を設けて熱心な御審議をいただいて,昭和52年1月21日の最終総会において「新漢字表試案」をおまとめいただき,文部大臣に御報告いただいた。この「新漢字表試案」は,2期4年間に各種委員会を含めて100回以上の会議を開いて慎重な御討議の結果まとめられたものである。
 この試案は,現行の「当用漢字表」等の持つ制限的な性格を改め,法令・公用文書・新聞・雑誌・放送等の,現代の一般社会において,分かりやすく通じやすい文書を書き表す場合の漢字使用の「目安」となることを目指したものであり,表の中には1,900字の漢字を収めてある。
 これを現行の「当用漢字表」と比較すると,結果的にこの試案には,従来の「当用漢字表」にない漢字が83字あり,「当用漢字表」にある33字が入っていない。
 また,この試案は科学・技術・芸術等の各種専門分野,あるいは個個人の漢字使用にまで立ち入ろうとするものではなく,またこの表に基づく場合であっても,必要な場合はこの表にない漢字を用いてもよいという柔軟な考え方をとり,字体については,現行の「当用漢字字体表」に掲げられた字体と大差のないものとするとともに,その考え方を受け継いでいく,とされている。
 なお,この漢字表は試案であって,地名,人名等の固有名詞を表す漢字の扱い,当用漢字別表(いわゆる教育漢字)など,学校教育での漢字の扱い,字体に関する具体的諸問題など,今後の検討に待つ問題が残されているが,この段階で試案を公表して広く国民の意見を聴くとともに,次期審議会でこれらの残された問題を含め,更に検討されるよう望む旨の報告文が付されている。
 この「新漢字表試案」の報告を受けて,文化庁では広く国民の各界各層に対してこの試案の趣旨・内容を説明するとともに,これについて文書による意見の提出を依頼している。また,説明協議会の開催,新聞・雑誌等に掲載された意見の収集などを現在進めている。このことについては後ほど国語課長から,配布資料によって御説明申し上げる機会を与えていただきたい。
 以上がこれまでの経緯であるが,今期審議会で,大臣のごあいさつにもあったように,「新漢字表試案」に関する各界各層の意見をも参考として,残された問題を含めて,更に十分御検討いただき,立派な漢字表をおまとめいただくようお願い申し上げる。
 また,前期審議会では,話し言葉の問題,その他の国語に関する諸問題についても種々御検討いただいたが,国語に関する関心が広く国民の間に高まっている時でもあるので,これらの点についても新たな諮問という意味ではないが,引き続き御検討願えれば幸いである。

福島会長

 ただいまの,これまでの審議経過などの説明について,御質問があったら,どうぞ。特になければ,これからの審議の途中で随時御発言いただいて結構であるから,先へ進みたいと思うが……。
(発言なし。)それでは議事に入ることにする。

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