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次第 「新漢字表試案」に関する各界の意見及び全国5地区で開催した説明協議会について(事務局報告)

福島会長

 「新漢字表試案」について,各界の意見を求めたわけであるが,その概要は,委員各位に前もってお送りしてあるので,お読みいただいたことと思う。
 次に,5月から6月にかけて全国5地区で開いた新漢字表試案説明協議会の模様を事務局から報告してもらう。

室屋国語課長

 「新漢字表試案」に関する各界の意見は,本年3月文化庁から文書で関係各方面へ提出方を依頼したものである。本日配布した資料に基づいて「新漢字表試案」に関する各界からの意見提出状況について説明したい。
 省庁等から35,都道府県・地方自治団体から9,関係団体として,出版社等から6,文字印刷関係から4,国語関係団体から9,教育委員会関係から6,教育関係団体から4,学術用語関係団体から4,大学等(岡山大学)から1,農業・蚕糸業団体から11,個人から23,合計132の御意見を頂いた。そのほか,日本印刷工業会から御意見を頂いたが,本日の会議に間に合わなかったので,後で増補してお配りしたい。
 また,新聞協会は,今,意見を集約中とのことで,10月中旬ごろに頂けるとのことであるので,これも併せて増補してお配りしたい。
 頂いた意見は,機関,団体,個人ごとに整理して取りまとめ,「「新漢字表試案」に関する意見」という冊子におさめた。それから機関・団体分については「「新漢字表試案」に関して文書で提出された意見」ということで,要旨を要約しておさめた。なお,「「新漢字表試案」に関する意見」には,新聞,雑誌等に掲載された主な意見の要旨を第2部として,おさめてある。また,新漢字表試案説明協議会で出された質問,意見などの要旨も第3部としておさめてある。
 次に,機関・団体から頂いた意見の要旨を,お手元の印刷物に従って概略説明する。
 試案に関しては,試案作成の適否の問題から個々の字種の賛否に関する具体的問題に至るまで,広範多岐にわたって多くの意見を頂いている。
 総論から表の名称まで事項ごとに分類して整理したが,各項とも試案の方向に賛成の意見を先に,反対の意見を後に掲載してある。まず総論,全体的な賛否であるが,全体として反対意見が数団体から出ているものの,他は賛成を前提とした意見である。それから性格・運用については,妥当とする意見が多いが,「目安」が事実上制限になっているのではないかという懸念と,野放しにつながるのではないかという懸念を表明している意見もある。後者は教育関係団体に特に多い。官庁からは「目安」の運用についての統一的方針の樹立が望まれるという意見がある。
 選定の方針については,おおむね妥当ということであるが,例えば動植物名,日常身辺の道具名等の採用基準がはっきりしないというような意見もある。固有名詞については,いろいろな意見があるが,都道府県名の漢字は入れた方がよいという意見が多い。専門用語については,一般の社会生活でも使われるので,一概に別扱いしない方がよいというような意見がある。
 字種の加除については,削除33字の中に必要なものがあるという意見がある反面,削ることはよいが1字たりとも加えるべきではないという意見もある。
 次に字数については,異存がないという意見,加除同数にすべしという意見,1,900字では足りないという意見が出ている。振り仮名については,その使用に賛成する意見が多く見受けられる。
 次に,語表記の問題(仮名書き,まぜ書き,同音の漢字による書き換え等)については,現行の行き過ぎを是正する方向に賛成の意見が多い。同音の漢字による書き換えは,慣用の定着について基準を示してほしいという意見が出ており,また動植物名は仮名書きを原則とすべきだという意見もある。音訓については,音訓緩和を望む声がある。異字同訓の使い分けについて示してほしいという意見も出ている。そのほか音訓の掲げ方について技術的な提案がなされている。
 字体については,総論として,従来のものに手を加えないという方針は妥当であるという意見が多い。字体の示し方として,明朝体だけでよい,楷(かい)書体あるいは教科書体を併せて掲げよ,康熙(き)字典体は不要である,また逆に康熙字典体を本体とすべきである等,いろいろな意見がある。許容の問題については,漢字のデザインや筆写の許容について明記してほしいという意見がある。略字の問題については,更に検討すべきだという意見が出ている反面,慎重論もある。表外字の字体については,「へん」「にょう」等の扱いについて具体的に示してほしいという意見が多い。また「つくり」についてもある程度表内字を統一すべしという意見もあるが,逆に表外字について一切いじらない,「へん」「にょう」の統一もすべきではないという意見も出ている。削除字の字体については「謁」「殴」「逓」などの字体が多く問題にされている。部首・画数については,新しい基準を立てることが望ましいという意見が多い。個々の字体の適否については,賛成,反対意見があり,具体的な意見については,別途資料を作成しているところである。その他として,片仮名,平仮名の字体のことなどが載っている。
 それから教育との関連については,学習上の負担が増加しないようにと望む声が非常に強い。学年配当を含めて教育漢字の字種の入れ換えを望む声も多く出ている。最後に表の名称であるが,「常用漢字表」とか「○○年制定常用漢字表」とか,いろいろな意見が出ている。
 以上,概要を御紹介した。次に,新漢字表試案説明協議会の件について御報告申し上げる。さきの総会で御報告したとおり,「新漢字表試案」についてその趣旨,内容を説明し,併せて広く関係者の意見を聞くための説明協議会を,全国5ブロック5か所で開催した。まず,東海・北陸・近畿地区は5月11日大阪市で約600名,関東・甲信越・中部地区は東京の久保講堂で5月20日約750名,九州地区は久留米市で5月24日約650名,中国・四国地区は広島市で5月26日約300名,北海道・東北地区は仙台市で6月2日約400名の参集を得てそれぞれ行われた。どの会場においても非常に熱心で盛会であった。5会場とも,古賀副会長,岩淵主査の御出席のもとに開催し,特に東京会場においては福島会長の御出席を頂いた。
 試案の趣旨については副会長から,試案の内容については岩淵主査から御説明があり,質問に対してもお答えいただいた。参加者の質疑・要望等については,先ほど御説明したとおり「「新漢字表試案」に関する意見」の第3部に収めてあるので,詳細については省略させていただくが,大別して,総論・漢字表の性格等に関するもの,字数等に関するもの,個々の字の採否に関するもの,音訓に関するもの,字体に関するもの,音訓・語例等の掲げ方,付表の語等に関するもの,教育用の漢字に関するもの,人名用の漢字に関するもの,まぜ書き等に関するもの,その他というふうになっている。

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