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次第 教育に関連する問題(主として当用漢字別表の扱い)について

福島会長

 次に教育に関連する問題について,総会の意向を伺っておきたいので,この点について三根谷主査の御報告をお願いしたい。

三根谷主査

 この新漢字表の制定に伴い,普通,教育漢字と呼んでいる「当用漢字別表」をどう扱うかという問題について,漢字表委員会で話合いを重ねてきた結果,資料2のような方向に大体まとまった。これも朗読していただいてから説明したい。(上岡国語課長補佐朗読)

教育に関連する問題(主として当用漢字別表の扱い)について

1  当用漢字別表については,新漢字表の制定に伴って,これをどう扱うかという問題がある。これまでに漢字表委員会で話し合ったところでは,大勢としては,次のような方向が出ている。
 別表はこれを廃止することとし,学校で教える(学習する)具体的な字種・字数は,教育過程編成に係る問題であり,教育課程審議会(初中局)の問題と考える。したがって,国語審議会としては,新漢字表の前文等において,新漢字表と教育との関係及び漢字の教育についての考え方を述べておくことにとどめる。
2  上記の「考え方」として,新漢字表は直接には一般の社会生活のためのものであって,特に学校教育用として作成したものではないが,学校教育との関連も常に配慮したものであるのにかんがみ,次のようなことを述べておけばよいという方向が出ている。
(1) 新漢字表(本表及び付表)の趣旨は,学校教育でも尊重してほしいこと。
(2) 学校教育において,漢字の教育が適切に行われることが望ましいこと。

<参考>

1  「新漢字表試案」の前文(抜粋)
 学校教育との関連は,選定の過程で常に配慮してきたが,今回の表は,特に教育用として作成したものではない。ただし,この漢字表が一般の社会生活のためのものである以上,学校教育での漢字指導の際には,考慮されるはずのものと考える。学校教育では,基本的な漢字についての学習とともに,漢字というものの文字組織及び機能についての理解を持たせるように努めることが望ましい。
2  「当用漢字改定音訓表」(昭和47 国語審議会答申)の前文(抜粋)
 ここに言う一般の社会生活における音訓使用は,義務教育における学習を終えた後,ある程度実社会や学校での生活を経た人々を対象とする。したがって,義務教育でどの程度,どの範囲の音訓を学習すべきかは,別途の研究に待つこととした。

三根谷主査

 教育漢字については,前々会の総会でも説明したとおりであるが,新漢字表を制定する場合に「当用漢字表」は廃止されることになるものの,「当用漢字別表」の方はそのままにしておけば,残ってしまうことになるので,これを廃止すれば,国語審議会として廃止すると言わなければならない。
 「当用漢字別表」を改定するとか,あるいは別表に代わるものを国語審議会で作るべきだという意見もあるが,現在は別表のできた昭和23年当時と異なり,教育課程審議会があって,教育課程の編成にかかわることを扱っている。国語審議会としては,この際具体的な字種字数のことは,教育課程審議会に任せて,これを廃止し,ただ新漢字表と教育との関係及び漢字の教育についての考え方を述べておくにとどめるというのが,漢字表委員会としての考えである。
 昭和52年告示の小学校学習指導要領では,既に「当用漢字別表」という言葉は使わないで,別表の漢字881字とほかに備考漢字と言っていた115字とを加えて,996字の「学年別漢字配当表」というものが示されている。これが事実上の教育漢字としての機能を果たしているのが現状である。したがって,別表というものは,現在独立した意味がなくなってきていると言える。将来,教育課程審議会で教育漢字の字種,字数などについて検討する場合においても,この別表が廃止されていた方がやりやすいということもある。
 次に,2の「考え方」の問題であるが,これは文言として,これで確定したというものではないが,大体こういう一般的,抽象的な考え方を述べておこうということである。
 なお,参考の1として,試案の前文を出してあるが,この中で使われている「基本的な漢字」とか「漢字というものの文字組織及び機能」というような言葉は,やや専門的にわたるきらいがあるところから,今回のような言い方にしたものである。
 また,参考の2に昭和47年に答申された「当用漢字改定音訓表」の前文を出してあるが,ここに述べられてあるような趣旨は,新漢字表の場合にも生かしておくべきではないかという意見もある。高等学校を含めた教育とのかかわり合いの全体像を明確にすべきだという意見もある。
 なお,その後に参考資料が何ページかにわたっているが,これについては事務局から説明していただく。

上岡国語課長補佐

 それでは参考資料1から6までについて御説明する。
 参考資料1は「当用漢字別表」が昭和23年に出た時の内閣訓令と内閣告示である。
 参考資料2は,教育課程審議会令と国語審議会令とを掲げている。
 参考資料3は,「当用漢字表」が出来た由来と「学年別漢字配当表」の経緯とを羅(ら)列したものである。1から4まであるが,一番下の4を除いて1から3までのことについては,お手元の資料「改定現行の国語表記の基準」の208ページに書いてあることを箇条書きに並べたものである。4番目は,先ほど主査から話があった昨年7月に告示された「小学校学習指導要領」における措置である。
 参考資料4は,昨年7月に出た「小学校学習指導要領」で「学年別漢字配当表」として示してあるものである。
 参考資料5は,115字を昭和43年の小学校学習指導要領にとり入れた措置を書いたものである。2学年以上についてところどころに※印を示すとともに,最後に備考としていわゆる備考漢字115字を並べて,その措置が書いてあるわけである。
 参考資料6は,小,中学校については昨年7月の指導要領における措置,高等学校においては本年8月末の学習指導要領における措置をつけてあり,小学校,中学校,高等学校の現状を示したものである。

福島会長

 ただいまの御報告について御意見,御質問を伺うわけであるが,一言おわびを申し上げたい。
 先ほどの字体問題の検討の際に資料に2枚目があることを忘れていて,表外字についての御意見を伺わなかったので,教育に関連する問題の討議をした後,御意見を伺いたい。
 それでは,教育に関連する問題について御意見,御質問をお願いしたい。
 これは,三根谷主査にお伺いしたいが,要するに現在の学校教育における計画なども進んでいるので,国語審議会として教育漢字の別表のようなものを定める必要はない,──必要はないというと穏やかでないかもしれないが,定めない方がよろしいのではないかということか。

三根谷主査

 そうである。

福島会長

 教育漢字については,専門家にお願いしようということになるわけか。

三根谷主査

 「当用漢字別表」に代わるものを国語審議会では作成しないで,その関係の別な審議会に任せるのがよいと思う。しかし,それでは教育に関する問題は全く触れないでいいかということになると,特に学校教育用として作ったものではないが,学校教育との関連も配慮して新しい漢字表は作られているので,教育に関連する方向に向かって,一般的な言い方で,これを尊重してほしいというようなことを前文その他で書いておきたいというふうに考えている。

福島会長

 先ほどの事務局の説明であるが,教育漢字というのは,現在881字ではなく,学校で教える字数は996字ということになっているということか。

上岡国語課長補佐

 そのとおりである。

福島会長

 この関係で特に御発言がなければ,漢字表委員会で御検討いただいたこの方針に従って,新漢字表を答申する際に,その趣旨を盛り込んで学校教育の面でも新漢字表を尊重して,適当な案をお立てくださいということになるということだと了解するが,それでよろしいか……。
 特に御意見がないようなので,教育に関連する問題は,報告を了承することにして資料1の2枚目にもどりたい。

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