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次第  漢字表委員会の審議について(報告)

三根谷主査

 漢字表委員会の審議状況について,簡単に御報告申し上げる。漢字表委員会は,ただいまの問題点整理委員会の御報告の中にあった4項目のうちの最初の項目に当たる字種・字数・音訓・字体等に関して審議を進めているが,漢字表委員会の方では,まだ,まとまった形でお諮りするようなところまで進んでいるわけではない。そのことを初めにお断りしておきたい。
 前回の総会の終了直後に第1回の委員会を開き,主査と副主査の互選を行ったが,前期からの継続で,私が主査,頼委員が副主査ということになった。その後今日まで2回委員会を開いている。
 漢字表委員会では,問題点整理委員会の整理の方に沿って,字種・字数・音訓・字体等,漢字表に関する具体的な問題について検討を行うことにしたが,各方面から寄せられた意見を概観し,前期以来の復習を兼ねて,自由討議の形をとって全般的に意見交換を行っているという段階である。
 事務局からは資料として,諸機関・団体等から寄せられた意見の概要を項目別にまとめたもの,それから個々の字種や音訓,あるいは字体などに関する各種の要望について,一覧できるようにまとめた資料等を用意してもらい,そういう資料に基づいて,自由討議を行った。第2回の委員会においては,漢字表の性格の問題とか,それから特に学校教育に関連する問題についての意見交換が多かったが,こういう,表の性格等の問題については,問題点整理委員会の整理に基づいて,総会で話合いが行われる予定だということで,第3回の委員会では字種・字数・音訓・字体の問題にしぼって意見の交換を行った。
 これらの問題については,それぞれ各方面から意見が寄せられており,特に字種・字数については,前回の総会で事務局から報告があったとおり,もっと字数を増やすべきであるという意見,逆にもっと減らすべきであるという意見,更には中間答申の字数を超えるべきではないという意見など,いろいろ寄せられている。個別の字種についてみると,これも前回の総会で報告があったように,「当用漢字表」にあった漢字で,「常用漢字表案」には入っていない19字の復活についての意見がかなり多く寄せられている。
 いろいろと意見交換を行った中で出た意見の主なものを並べてみると,漢字表は「目安」という趣旨であるから,字種・字数は「当用漢字表」のままでよかったのではないかという意見,基本的には中間答申の字種1926字は尊重すべきではないかという意見,それから「当用漢字表」にあった19字が削られることになるのが一番問題ではないかという意見,日常身近な字で要望が出されているものは,これを取り上げてはどうかという意見,「常用漢字表案」にあって「当用漢字表」にない95字の中から落とすことも考えてよいのではないかという意見など,いろいろな意見の開陳が行われた。また,関連して,教育面での負担過重を招かないように配慮すべきであるという意見や,各方面からの要望は当然これを考慮し,検討すべきであるが,従来の審議の蒸し返しはしなくてもよいのではないかというような意見も出された。
 これらは,いわば総論的に自由討議の中で出された意見であるが,字種・字数に関することは,何といっても,各界から一番関心を持たれている問題であるから,今後の委員会においては,各界から寄せられた意見を十分に吟味して慎重に検討を進め,委員会としての考え方をまとめていきたい。そしてその結果を総会にお諮りしていきたいと考えている。
 字種・字数に続いて,音訓と字体の問題についても,意見を交換した。音訓については,各界から寄せられた意見はそれほど多くない。また,音訓表は昭和48年に改定されてまだ日が浅いことであるので,この改定された現行の音訓表の考え方は,原則としてこれを踏襲するという方針で従来漢字表の作成を進めてきたものである。そこで,委員会においても,音訓については,大体中間答申の方向でよいのではないかとか,音訓をいじり始めるといろいろな問題が出てきて,大変多くの時間を費やすことになるのではないかという意見などが出ている。
 ただ,一方では,音訓表というものは実はない方が好ましいのではないか,この際,音訓は参考程度に示しておくという考え方に改めてはどうかという主張もあった。また,音訓の掲げ方など,具体的な問題について,馬淵委員から文書で疑問が出されており,問題になる点は,今後検討していかなければならないと考えている。
 それから字体についてであるが,これは前回の総会でも報告されたように,概して評判がよいようである。意見交換の段階では,時間が十分になかったということもあって,字体に関しては康熙(き)字典体の取扱いをどうするかとか,部首について新しい基準を立てることがいいのかどうかという問題が話題になった程度で終わっている。
 以上,漢字表委員会での審議の状況のあらましを御報告申し上げた。

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