国語施策・日本語教育

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次第 運営委員会,仮名遣い委員会の設置について/今後の進め方その他について

有光会長

 今期の審議の主たる目標は,先ほど大臣のごあいさつや事務局の御説明にあったように「現代かなづかい」について検討を進めて成案を取りまとめていくことにある。前期の最終総会での仮名遣い委員会の報告にあるとおり,既に前期の2年間で「現代かなづかい」をめぐるいろいろな問題について,全体的な意見交換や検討が行われて,多くの点で共通理解が得られていると思うが,それをどう具体化していくかが,これからの問題だと思われる。
 そこでまず,前期同様,運営委員会と仮名遣い委員会を設けることとして,所属委員も大体,今までの方に引き続いてお願いすることにして,仮名遣い委員会には早速審議に取り掛かっていただくことが,この際最も適切な進め方ではないかと思われる。この点いかがであるか。(「異議なし」の声あり)
 特に御異議がないようであるので,運営委員会と仮名遣い委員会を前期どおり設置することとする。所属委員の中でお辞めになった方がそれぞれお一人ずつおられるので,代わりの方にお願いしたいと考える。運営委員会には,鷹取委員に代わって松村委員に,仮名遣い委員会には,楠山委員に代わって広瀬委員にお加わりいただきたい。念のため,両委員会の所属委員を事務局から御紹介する。

後藤国語課長

 運営委員会委員は8名で,木内委員,酒井委員,服部委員,林大委員,それから今御提案のあった松村委員,味村委員,それに会長と副会長である。
 仮名遣い委員会委員は15名で,今坂委員,太田三十雄委員,角藤委員,佐久間委員,築島委員,つじ村委員,野元委員,林大委員,林四郎委員,今御提案のあった広瀬委員,古田委員,松村委員,三根谷委員,村松委員,山田委員である。

有光会長

 皆様,お忙しい中を大変だと思うが,よろしくお願いしたい。
 なお,「仮名遣い委員会の運営について」という前期の申合せがファイルの中にとじ込んであるが,その第5項に書いてあるように,委員会に所属する委員以外の方も出席して意見を述べることができるので,所属しておられない委員にも,毎回開催通知の写しをお送りしている。今期も事務局の方でよろしく取り計らっていただきたい。
 それでは,次の議題に入りたい。今後の進め方ということで,仮名遣い委員会に対する御注文とか,御示唆とかを含めて,自由に御意見を頂きたい。仮名遣いに関連した問題に限らず,将来のための問題提起という意味で,いろいろ御発言を頂いても結構である。

渡辺(光)委員

 私,本当に何も分からず,2年間やらせていただいて,仮名遣い委員会にも大分出席させていただいた。委員の方が何度も何度もいろいろな問題を重ねて討論なさっているのを拝見して,本当に大変だと,しみじみ思ったところである。それで,第15期のアンケートの折,各委員の御意見等全部私も拝見いたしたら,やはり「現代かなづかい」を肯定しているものが多い。以前の旧仮名遣いにもう戻るという時代ではないということを,しみじみ感じたわけである。
 ただ,第15期にも申したとおり「じ・ぢ」「ず・づ」の問題で,地面の「じ」が今もって疑問であって,確か58年6月24日の仮名遣い委員会であったか,築島委員が刷り物を下さって,漢音と呉音のお話があり,「じ・ぢ」の仮名遣いのことが,そこで初めて何となく分かったように思ったわけであるが,普通,私たちみたいな者だと,どれが漢音で,どれが呉音で,またどれが和語であるかというようなことは,一々検討ができないわけであって,その辺「じ・ぢ」の仮名遣いだけは,もう少しはっきりしていただきたいなというのが,私の思うところである。
 それから,この前,テレビの「日本語再発見」という番組で“和語の味わい”というのがあって,そのときに,若い明日香という女性タレントが,万葉語の一節を入れた歌を歌ったが,私,若い人にそういうのが相当はやっているのかと思って,その係の方に聞いたところ,これはそんなにはやっているわけではなくて,一部の好きな人がそういう言葉を使っているというお話であったので,やはり「現代かなづかい」は,今までどおり残した方がいいと私は思って申し上げた。

有光会長

 ただいまの渡辺委員の御意見に関連しても結構であるし,また別に御意見をお述べいただいても結構であるが,どうぞどなたからでも。

山内委員

 私は全くの新任であるが,ひとつお尋ねをいたしたいと思う。
 先ほど国語課長からもお話があったと思うが,答申された使い方というか,それはどういう基準というか,どういうふうに使われるべきであるというお話であったか。それをもう一度ちょっと御説明を頂いて,それに関連して,入学試験とか学校の試験なんかでもし違った場合には,それは間違いになるということになるのか,また違ってもそれは構わないのか,その辺のところだけちょっと教えていただけたらと思う。

後藤国語課長

 再度御説明申し上げる。
 戦後の国語施策の反省として,新しい改善のための御答申では,これまでの国語施策は制限的な色彩があったということで,これを改めて適用する分野を,法令・公用文書・新聞・雑誌・放送等一般の社会生活において現代の国語を書き表す場合の目安,よりどころとする,ということを基本的な考え方としており,個人の表記とか,文芸とか,あるいは学術の分野とか,そういったような分野は一応対象から外して,一般の社会生活において使う国語の目安,よりどころというような御答申を頂いたわけである。
 後の部分については,学校教育関係者が出ておるので,そちらの方から御説明する。

渡辺視学官

 お答え申し上げる。「現代かなづかい」に基づいて教科書が編集されているわけである。したがって,その教科書に基づいて書かれたものでないとばつになるというように,現在はなっている。

有光会長

 山内委員,今回初めて委員をお引き受けいただいて,ただいまの御質問,ああいうことでよろしいか。

山内委員

 分かったけれども,それでいいのかなという,その辺はちょっと分からないが,質問の方はもうこれで結構である。

林(大)委員

 ただいま渡辺視学官から御説明があったけれども,仮名遣いのテストということを御質問になったと思うが,仮名遣いのテストは,仮名遣いが合っていないとばつになるというのは常識的なことであるが,その他の点で,作文でも,それから歴史の答案だとかいうものでは,試験の採点をなさる側のお気持ちで,一々仮名遣いを拾ってばつを付けていくということはされないことが多かろうと思っている。実際上の運用はそんなふうになっているように思う。それは漢字の字画の問題についても同じようで,書き取りならば厳密に点画をとるが,その他の点では必ずしもそんな厳格ではないということだろうと思う。

村松委員

 ただいま山内委員からの御質問と,それから林(大)委員からの御回答,それから文部省からの御説明で尽くされているかと思うが,山内委員の御懸念は,平常「現代かなづかい」で表記していない方々もいらっしゃるわけかと思われて,そういうものを一つの書き方で統一しなくてもいい場合もあるのではないかというような含みがあるのではないか。それが国語教育の方にも多少の関連があるのではないかというような気がするが,例えば文芸的な表現で文語体で和歌や俳句を作るというような場合に,生徒が歴史的仮名遣いで書いたからといって,それは誤りだとするなど,歴史的仮名遣いでよいと思われるものまでも「現代かなづかい」で表記すべきだというようなことになると,甚だ疑問が生ずる。さらに,大学等に進んだ場合に,戦前の口語体には旧仮名が用いられているので,そういうものを引用して論文を書くような学生が,それに引きずられて,自分の地の文のところもそういうふうに書くというようなことが問々あるが,私の体験では,そういうものを罰点にするというようなことはいたしていない。だから,その辺について国語審議会は,国語教育の方にいろいろな意見を出してよかろうと思う。現在では御説明のような教育方針であっても国語審議会からの意見が,国語教育の方にも伝わるというようなことが今後ある場合に,将来の国語教育にも参考になるのではないか,私はそう考えている。

木内委員

 皆様,余り御発言がないようだから,私の意見,希望をちょっと申しておく。
 第15期の審議会の調査・検討は,大変有能なものであって,問題点はどこにあるかということと,それに対する皆様の一応の御意見は整理された形で出ている。基盤整備はできたと言えるが,肝心の問題についての論議が少しもされていない。仮名遣い問題というものは一体国語の中で何であるか,日本文化の中で何であるかというようなことを論じなければ,論議が分かれた場合に,どっちに決めるということができない。今の国語課長の報告の調子で見ると,まさか多数決で決めるおつもりもないだろうが,それしか方法がないような,大体の意見はこうであるというようなことになっているので,これはこの総会として仕事をしていることにならない。
 国語政策も30年たち,今,総反省が必要なのである。日本という国が今,総反省になっているのに,30年これでやってきたからこれでいいというのは,いわゆる定着しているものは余り動かすなということであるが,そこを論じなければいけない。大いに動かすべしという意見もあり,動かすなという意見もあるが,動かすというのはなぜだ,動かさないというのはなぜだということについて意見を闘わせなければ,この総会として仕事をしていると言えない。今までは結構であるけれども,これからはどうぞそういうふうに運んでいただきたい。私はまた,運営委員会の委員に御指名にあずかったから,運営委員会でも申し上げるけれども,どうぞそういう取り上げ方をしていただきたい。
 私は,あるはずみで国語問題協議会という会の会長を務めているが,その会の模様をちょっと申し上げる。私の知識の源はそこから得るわけであるが,国語問題協議会はどういうことを今やろうとしているか,会としての私的な行動であるが,こういうふうにいきたい。第15期の総会でも私一度申したけれども,旧仮名遣いがいいか「現代かなづかい」がいいかという議論は,そういう議論をしてもいいが,あるいは必要かもしれないが,余りうまい結論に導くことが実効性は非常に難しいので,そういう形でしないで,「現代かなづかい」の問題点がせっかく整理されたから,一々の問題について,これはこうしたらいいのではないかという議論を出していこう。つまり「現代かなづかい」は理論的にもおかしいし,実施の経過から見てもおかしいし,「現代かなづかい」によって教えている先生方も教えように困るということもあるから,これをこういうふうに整理したらいいだろうという「現代かなづかい」の改良案を書こうと思っている。これはもうじきできてくる。それをこの総会の討議にのせるのも一案かと思う。これは改良案だから,末端のことしか出てこないが,その背後にはなぜこういうことを言うのだという考え方があるわけだから,それは討議の折に言わせていただきたいと思う。改良案そのもののためにその作文までするつもりはまだないので,そんなに時間はかからない。改良案はあと一月ぐらいで一応のまとまりをつける。それを私どもの公開講演会で発表してみようかと思っている。どういう理論に立つのか,どういう認定に立つのか,それは大きく戦後の日本の国の歩みとも関係するし,世界の今の状況とも関係するので,それらを十分に考えて,それでごく細かい末節を割り切ろうとしているのがこの改革案である。御参考になると思うので,それを討議していただいたら,そのまますぐに,議論らしい議論をしていないという,今までの審議上の問題点を補うことができると思うので,ちょっと報告かたがた希望を述べさせていただく。

有光会長

 ほかに御発言はないか。

宮地委員

 第15期の最終総会での主査報告の資料の3ページの4であるが,現代語音の中で,外来語の表記の問題は,国語の音韻との間の対応が完全ではないから,「外来語の仮名表記については,別の検討を期することとする。」というふうにあるが,この「別の検討を期する」ということの内容を伺っておきたい。
 第15期の初めのころにも,この問題はちょっと取り扱い切れないというか,面倒で,別にやらなければならないというお話があったが,どういう形でなされるのか。それからその次に「現代語の音韻の単位としては,直音・拗音及び清音・濁音の短い音節(100種)とそれに対するそれぞれの長音があり,そのほかに促音と撥(はつ)音とがある。」と書いてあるが,こういうものと外来語の音との関係,外来語の音を国語の音韻として認めるか認めないかという問題と絡むと思うから,ここでやらなければいけないということを主張するわけではないが,「別の検討」ということの意味を伺っておきたいと思う。

後藤国語課長

 事務局の方から御説明する。間違いがあれば第15期の仮名遣い委員会の主査から御訂正いただきたいと思うが,第15期の仮名遣い委員会の「別の検討を期する」ということは,特にどういう具合に今後進めていくかというところまでは,実は仮名遣い委員会では御検討がなされていないので,ただこの段階では,一応外して考えようということのようだったと私は記憶しているが,いかがか。

林(大)委員

 第15期の仮名遣い委員会の主査ということでこれをまとめたものであるから,一言申し上げると,今,国語課長からお話があったとおりであって,少なくとも第15期の仮名遣い委員会では,当面の問題から外しておこうということであった。
 それについては,問題としては,国語の範囲であると,標準音韻というものを一通り決めてあり,分かっていると見ていいかと思うけれども,外来音をどのように扱うかということについては,まだどうも世間で一般に決まった標準的な外来音というものが認められているのかどうかというところに問題があるように思う。国語の範囲であると,現代語音というのは一応決められるけれども,外来音については,ちょっとまだ問題があるのではないかということもあり,その辺の議論をしていかなければならない。そうすると,今期ではとてもそこまで手が及ぶまいということで,後に回したということだったと思う。
 そういうようなことで,将来それが取り上げられるとすれば,また,今期それを取り上げろという御意見があるならば,それもそうかと思うが,なかなかそれに手をつけるのには準備が整わないのではあるまいかと,私はこれは個人的な考えであるが,そんなふうに感じている。

有光会長

 どなたかほかに御発言はないか。

鈴木委員

 第16期が今日から発足したわけであるけれども,初めての総会であるからなかなか話もはずまないと思うが,第16期の努力目標としては,どういうところまで達成させるというか,一応話をまとめたいというのか,そういう問題についてはいかがか。

後藤国語課長

 事務局としては,この審議会に御審議をお任せしているわけであるので,十分審議会の委員の方のお話し合いの上でお進めいただきたいと思っているわけであるが,少なくとも今年度,方向なり試案なりが出れば,やはり従来の例に倣って,世の中に公表いたし,御意見を頂くという手続は必要であろうかと思って,それだけの予算的な準備はしてある。

鈴木委員

 それは答申ではなくて,中間報告を取りあえず出すということになるのか。

後藤国語課長

 そうである。従来試案の段階なり中間報告の段階で,新聞に発表したり,あるいは説明会を開いたりして,世間の御意見を承って,それをまたこの審議会で十分検討していただいて答申に持っていくという運びになっている。

鈴木委員

 この総会が結局は決定の機関になると思うけれども,総会の席では,今までも決を採ったということが一つもない。しかし,今後はそうはいかないのではなかろうか。ある特定の問題については,やむを得ず決を採るということも出てくるのではなかろうか。
 ついては,問題を段階を追って進めるためには,総会の都度,課題が欲しいという気がする。仮名遣い委員会もできているから,これまでは仮名遣い委員会でまとめとしての全体的な御報告を頂いたわけであるが,これからは総会に一つ一つ決めなければならない基本的な問題についての課題をお出しくださって,そして皆さんの御意見を活発に言っていただくというふうなことを,段階を追ってやっていくことが必要なのではないかという気がするがいかがか。

有光会長

 第15期では,仮名遣い委員会で審議された結果の報告を頂いたわけであるが,仮名遣い委員会はこれからまたすぐに作業を開始していただきたいと思う。その際に,従来仮名遣い委員会で審議された事柄を,今後どう総会の場で審議を進めていくことが仮名遣い委員会としては御要望なのかというようなことも併せてひとつ検討していただいて,その事柄ごとに分けて進めていくというような段階にもうそろそろ入っていいのではないか。全体の考え方についての大体の御同意を得ておるように思うけれども,そういうようなところで,今後総会と仮名遣い委員会との関係をどういう具合に進めていって,最終の目標にはこういう具合にして到達するのだというスケジュールと言うか,そういう内容的なことと手続的なことを両方併せて御検討いただいたらと思う。林(大)委員,前の御経験から,いかがか。

林(大)委員

 今日仮名遣い委員をお名指しいただいたばかりであって,今度はどなたにおまとめいただくかであるけれど,第15期の委員会のやり方は,仮名遣いの委員会を任命していただき,その中に小委員会を設けて,具体的な事項を論議した。小委員会で論議した結果を仮名遣い委員会へ持ち出して,そこで皆様方の御了解を得,また御意見を伺って,それを総会に御報告したわけであるが,そこで決を採っていただくというほどには問題をまとめていなかった。今期は,ただいま鈴木委員がおっしゃったように,それでは済まなくなるので総会でその論議の結果について決を採っていただく,採択をしていただくというようなことになろうかと思うが,それについては,小委員会に対して具体的なものがあって,仮名遣い委員会でそれをもう少しまとめて,それからというので,なかなか忙しいなという感じがする。
 しかし,それはやってまいらなければならないし,また,小口から決めていけばいいではないかという御意見もあろうかと思うけれども,それについてはやはりこれから仮名遣い委員会で工夫がいるだろうと思う。うまく片づけていかれればよろしいけれども,先ほど木内委員がおっしゃったような基本的な問題もあるかもしれないし,そうすると,なかなかそこまでいけるかどうか心配だが,努力していかなければならないだろうというふうに感ずる。

有光会長

 それから,この仮名遣い委員会に関連して,いろんなことが期待されておると思うが,その期待に応じてすべての事柄をこの総会で審議し,結論を出すということでカバーできるのか。今日はその一端の御意見が出たわけで,非常に今後の運営に参考になると思うが,外来語の問題等についても,これを取り上げるならこういう意味で今後こういう措置が必要だとか,あるいはこの際はこういうことで一応この問題はまだ情勢の見通しがつかないから取り上げないとか,何かその辺のけじめをつけながら,最終的にこの審議会として答申すべき事柄をだんだん整理し,まとめていく段階において,いろいろな問題が出てくるだろうが,それはできるだけ皆さんの御意見も伺って,見送るものはこういうわけで見送るのだということの御了解を皆さんから頂いて,整理していくようにしていけばよくはないかと思っている。
 なお,今まで出た御意見は非常に参考になることが多いと思うけれども,この際伺っておくことがあれば伺いたいと思う。

木内委員

 ごく事務的なことをお願いしたい。今まで総会があると,その記録が出るが,その間非常に時間がかかる。大体次の総会の直前か,あるいはその場で頂く。これでは物を考えられない。だから記録は,ほかのところではどうでもいいから,議論らしいところだけでもいいから,早く頂いて,それで考える時間を持ってこの総会に臨みたい。今までの総会のやり方では,弊害は少なかったかもしれないけれども,これから煮詰めた議論をしようというのには,やっぱり書いたもので,これがオフィシャルに伝わる議論だというのを見ながら考えないと,先に進めないから,是非そうしていただきたい。(「賛成」の声あり)

後藤国語課長

 できるだけ早く作成してお送りするように努力いたしたい。

木内委員

 もう一つ,過去にそういうこともあったが,議論が非常に難しくなるような場合には,この総会に代えるべきものとして懇談会というのをやった。今後これをどう扱うかは,運営委員会で議論を出せといっても,それだけの力はないというか,役割からいって,そう出しゃばるわけにもいかない。だから,ある程度整理をした上で,近く懇談会をなさったらいいと思う。そうなると,正式の総会よりずっと砕けて,本当の話ができると思う。そうでもしないと,みんな言いたいことはあるけれども,活発な論議というのはできないのではないかと思う。懇談会は過去にも何回かあって,相当に効果を出していると思うのでお考えになっていただきたい。

有光会長

 今,副会長に伺うと,懇談会は前はよくやったことがあるそうである。今後できるだけいろいろな御意見を伺いながら,皆さんの御意見ができるだけよくお互いの審議の上にプラスするような方法もひとつ考えて,必要があれば懇談会というようなことも御相談して進めてまいりたい。

木内委員

 ついでにといっては悪いけれども,もう一つ申し上げると,これは仮名遣いを論議するための審議会であるからといって,仮名遣いにばかり視野を限っていたのでは,国語政策は論じられない。今までの漢字から始まって取り上げた順序は,音訓表から送り仮名ときて,漢字表では非常に手間取って,それで常用漢字表に変わったのであるが,過去にこれらの答申を出した。で,この問題を議論したときに,どう意識して問題を取り上げたか。ある答申が出てその結果はどうだという功績批判というと言葉はまずいけれども,つまり,自己反省をすべき時期であると思う。非常に議論になったのは送り仮名であるが,送り仮名の答申は,あれは例外だの許容だのがあって悪いということを非常に言われたものであるけれども,あれは円満にいってるのだと思う。
 音訓表の方は,音訓は,一字に一音一訓が理想であって,多数の音や訓があるのはいけない。なるべく整理するのだというのが当時の話だった。それに対してある程度やむを得ないもの,是非必要と思われるものは加えていくというのが解決であったわけである。
 あれがあって,それから送り仮名があって,それから漢字で非常に手間を取った。漢字は「常用漢字表」になったけれども,これがどういう結果をもたらしたかということは,もう論ずることはできるので,それを調べて,文部省としてはこう思うということを言っていただいて,我々は民間で見ていると違うとか何とかいうことを論じれば,非常にここの論議が地に足がつくというか,本物になるだろうと思う。
 私ばかり発言して恐縮だけれども,いままで述べたことは一貫した一つのものだから,これだけ申せば,一つの体系的な発言になったかもしれない。

有光会長

 それでは,いろいろ御意見を伺ったが,仮名遣い委員会の今後の御審議の中で,今日出た御意見をひとつ十分御考慮いただいて,その中で生かせるような御工夫をお願いいたしたい。
 次の総会は,恐らく9月ごろになろうかと思う。日時,場所などは,決まり次第,事務局からお知らせいたすことにお願いしておく。
 今日はこれで閉会いたしたいと思うが,よろしいか……。
 それでは,今日はこれをもって閉会とする。

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