国語施策・日本語教育

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次第 審議事項の説明

坂本会長

 それでは,次に文化部長から審議事項について御説明願いたい。

前畑文化部長

 先ほど大臣から,今期の審議会に対し,外来語の表記の問題について御審議をお願いしたい旨,申し上げたところであるが,若干敷衍(えん)して,その経緯等について御説明させていただきたいと思う。
 お手元に資料の2として「文部大臣の諮問」というタイトルのものを差し上げてあるので,御覧いただきながらお聞き取りいただきたい。
 先ほど大臣のごあいさつにもあったように,本審議会においては,昭和21年以来,国語施策の改善ということで,「当用漢字表」あるいは「現代かなづかい」「当用漢字音訓表」「当用漢字字体表」など,一連の国語施策について御審議をいただき,それぞれ御答申をちょうだいし,それを政府としては内閣告示,内閣訓令として実施に移してきたところである。
 ところが,その後,これら戦後の国語施策について,いろいろな論議や批判を呼び,その改善を図る必要が生じてきたところである。
 そこで,お手元の資料2にあるように,昭和41年6月13日,時の中村梅吉文部大臣から国語審議会に対し「国語施策の改善の具体策について」の諮問がなされ,以来,このことについて御審議をいただいているところである。
 先ほども申し上げたが,この審議会については,昭和24年の文部省設置法で機構が変わって以来,2年の任期ごとに各期を第何期というように称している。今般発足した審議会は第17期に当たるわけであるが,以後,何かにつけ第何期というような呼び方をさせていただくので,御了承いただきたいと思う。
 そこで,第8期の審議会に諮問をさせていただき,以来,その諮問に「検討すべき問題点」として掲げてある各事項について,御審議をいただいてまいったわけである。まず,当用漢字の音訓と送りがなのつけ方,これは問題点の1の(2)と2であるが,これについては第8期から第10期まで6年間,また,当用漢字の字種と字体,これは問題点1の(1)と(3)であるが,これについては第11期から第14期まで8年間にわたって御審議をいただき,さらに問題点の3の現代かなづかいについては,先般の第15期及び第16期の4年間にわたって御審議をいただいて,それぞれ御答申をいただき,いずれも内閣告示・内閣訓令として既に実施に移したところである。
 したがって,当審議会においては,昭和41年の諮問に「検討すべき問題点」として掲げた事項のうち,1から3までについては既に審議を終えていただいたということになる。
 そこで,先ほど大臣のごあいさつにもあったように,この諮問に掲げた問題点の審議の過程において,折に触れ,外来語の表記の問題が話題になっている。例えば,外来語の表記の問題は,この諮問にある「現代かなづかいについて」の中に入るのか,それとも別の問題であるのかというような御指摘もあったり,またこの外来語の表記の問題は,新しい世代にとってはある意味で仮名遣い以上に大きな問題ではないかという御指摘もあり,また外来語の表記の問題には仮名遣いとも関連して検討されなければならない問題がある,また外来語の表記は,本来,仮名遣いの中に入るべきものではないのか,和語の仮名遣い,漢語の仮名遣い,洋語あるいは外来語の仮名遣い,この三つがあると考えられるというような御意見もあったわけである。
 このように,外来語の表記の問題は,当審議会においては,従来,度々その検討の必要性というものが指摘されながら,いずれもその時期にそれぞれ大きな問題を抱えていたため,別の機会に検討するという了解のもとに,いわば先送りされてきたところである。
 そこで,先ほど大臣のごあいさつにもあったように,この問題点の1から3までについて審議を終えていただいたこの時点において,今期の国語審議会には,問題点の4にある「その他上記に関連する事項」として,外来語の表記の問題について御審議をお願いしたいというふうに考えている次第である。
 実は,この外来語の表記の問題については,国語審議会において,かつて御検討いただいた経緯がある。資料の3として差し上げてある「外来語の表記について」という冊子がそれであり,これは昭和29年3月15日に表記部会から総会に報告されたものである。
 この冊子の1ページの中ほど以下に,「表記部会長報告」というものがある。これは表記部会長から総会に報告されたものであるが,3ページの一番下のところを御覧いただくと,次のように述べられている。
 「部会の審議経過は以上のようなものであるが,この原案について十分御審議願いたい。また総会の承認を得た場合は,これが社会一般に普及するよう,必要な処置をとられることを文部大臣に建議することについても,あわせてお話合い願えれば幸いである。」
 このように,部会としてはこれを建議にしたいという御意向があったようであるが,結果としては,1ページの中ほどに書いてあるように,国語審議会においては,これを建議とすることはせず,「別紙のとおり部会における審議の結果が報告された。ついては,この趣意がひろく社会に普及し,一般に実行されることが望ましい。」という取扱いにとどめたわけである。以上が過去の経緯である。外来語の表記の問題については,既に御案内のように,まず表記上の基本的な方針として,この冊子の2ページ中ほどに書いてあるとおり,「外来語を表記するのに,原語の発音に即した表記を採るべきか,あるいは,国語に外国語を取り入れた際に起る国語化した発音をもとにした平易な表記を採るべきか」という問題があるわけである。
 また,大きな枠組みの問題として,部会報告の,4ページ「まえがき」のところに「ここにいう外来語とは,主として欧米語から国語に取り入れられたことばをさす。外来語の中には,次の三つの種類がある。」とあって,(1)として「歴史が古く,国語に融合しきっていて,国民一般がこれを外来語とは感じないもの」,(2)として「外国語という感じをなお多分にとどめているもの」,(3)として「すでに国語として熟しているが,なお外来語という感じは残っているもの」とあるが,こういった3種類の区別にどのように対応するかという問題もあり,また5ページ中ほどの見出し,「外来語表記の原則」のすぐ上にあるように,外国の地名・人名といった固有名詞に関するものをどう取り扱うかという問題もあろうかと思う。
 さらに,表記の問題のほかに,いわゆる外来語の乱用ということについてもいろいろ御意見があって,外来語の使用そのものについて議論のあるところである。また,外来語の表記の問題について御検討をいただくに当たっては,国語施策上の取扱い方,すなわち適用分野の問題,あるいは規範性の問題についても御留意いただきながら,御審議を賜りたいと思う。
 以上,御審議をいただく外来語の表記の問題に関して,これまでの当審議会の経緯等を含め,概略を申し上げた次第である。
 なお,審議の日程については,もちろん審議会として御協議をいただく問題ではあるが,事務当局として現在考えているところを申し上げて,御参考に供したいと思う。
 これまでの当審議会の例からすると,事柄が極めて重大であるので,いずれも途中,中間的な試案を公表して,広く世間の意見を聞き,更に検討を深めるという慎重な手順を踏むことが通例になっている。したがって,この外来語の表記の問題についても,それ相応の期間が必要になろうかというふうに考えている。このため,差し当たり第17期審議会においては,できれば任期内に中間的な案をちょうだいできるところまでは御審議をいただくということを一応の目途としてお考えいただければと存じている次第である。何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げる。

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