国語施策・日本語教育

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次第 資料説明

坂本会長

 それでは,引き続き事務局から資料の説明をしていただきたい。

森国語課長

 配布資料の説明を申し上げる。資料の1は,先ほど文化部長から委員の御紹介を申し上げた名簿である。
 資料の2は,文部大臣の昭和41年の諮問である。これも先ほど来触れてきたものなので,省略させていただく。
 資料3は,「外来語の表記について」の冊子である。これについては,本日,御出席の先生方の中に非常にお詳しい方が多数おられるわけであるが,先ほどの文化部長の説明と重複しない形で,中身をごく簡単に紹介させていただく。
 第1ページの「外来語の表記について」の表題の下に「編者注」というふうにあるが,これは文化庁国語課の方で,お使いになる方の便宜のために,説明を加えたものである。ここにあるように,国語審議会・表記部会(後に術語部会と合同)での審議の結果を,国語審議会総会に報告し,表記部会としては文部大臣あてに建議を求めたわけであるが,総会での御意見がいろいろあって,報告にとどまったものである。以下,表記部会長報告の内容については,先ほど部長から申し上げたとおりである。なお,部会における審議の基本方針としては,3ページの中ほどにあるように,表記部会の多数意見として,「(1)その表記が,国民一般に行われやすいことをたてまえとする。」「(2)その表記の社会における慣用の,濃い薄いを合わせ考える。」「(3)表記が二様にわたり,まだ固定しない語が多いため,それらの語については一々について審議する。」という方針で,新聞・辞書・放送関係等,各方面から資料を集めて,社会一般に通用している度合の高いと思われる語を選んで審議を重ね,19項にわたる原則を得たわけである。
 次に,4ページ上段の「外来語の表記」以下が部会報告の本体である。「まえがき」には,先ほど説明があったとおり,主として欧米語を対象とすること,外来語にはその定着の度合に応じて三つの種類があることが述べてあり,そういった基本認識の上に,「(イ) 国語化した書き表わし方の慣用が固定しているものは,これを採る。」「(ロ) その書き表わし方の慣用が固定せず,二様にわたるものについては,原語の発音としてわれわれが聞き取る音を基礎とし,国民一般に行われやすいことを眼目として,なるべく平易なほうを採る。」ということを基本方針として,以下19項にわたる原則を定めて,かつ「外来語用例集」を付けるという構成になっている。冊子の12ページ以下が「外来語用例集」である。その収録語数は380語で用例集の〔注意〕の1にあるように,「ここには,書き表わし方の迷いやすい例をあげるにとどめた。」という性格の表である。
 5ページの中ほどに戻らせていただいて,「外来語表記の原則」。これが19項目にわたっており,原則の1は,「外来語は,原則としてかたかなで書き,別表『外来語を書くときに用いるかなと符号の表』の範囲内で書く。」ものとし,この別表というのは10〜11ページに掲げてある。御覧のように片仮名ないしその組み合わせを示したものである。この表については,例えば「クァ」のところの右側には,「クィ」とか「クェ」とか「クォ」とかが理屈の上では入るとか,いろいろ問題もあるが,この部会報告では,こういう範囲でお決めになったわけである。
 また5ページに戻らせていただいて,原則の2は「慣用の固定しているものは,これに従う。」ケーキ,リュックサックの類である。
 以下,原則3,4,5とあって,さして問題のないところは省かせていただく。6ページの原則7は長音符号の採用,また下から2行目の原則10では,「原音における『ファ』『フィ』『フェ』『フォ』・『ヴァ』『ヴィ』『ヴ』『ヴェ』『ヴォ』の音は,なるべく『ハ』『ヒ』『ヘ』『ホ』・『バ』『ビ』『ブ』『ベ』『ボ』と書く。」という原則を立てている。ただし,「原音の意識がなお残っているものは,『ファ』『フィ』『フェ』『フォ』・『ヴァ』『ヴィ』『ヴ』『ヴェ』『ヴォ』と書いてもよい。」ということで,それらの例を掲げてある。そこに,(注記)とあるのは,国語課の方でつけたコメントである。つまり,国語審議会総会において,この原則について,例えば「フェルト」か「フエルト」か,「フィルム」か「フイルム」かをめぐって,そこに(1)から(4)までに分類してあるような御議論があったということである。
 それから原則11は,「『ティ』『ディ』の音は,なるべく『チ』『ジ』と書く。ただし,原音の意識が残っているものは,『ティ』『ディ』と書いてもよい。」原則12は,「原音における『シェ』『ジェ』の音は,なるべく『セ』『ゼ』と書く。ただし,原音の意識が残っているものは,『シェ』『ジェ』と書いてもよい。」以下,こういった規則が19項にわたって並んでいるが,さらに,9ページの下の方の,原則19の次に〔注〕とあって,「外来語を書き表わす場合には,『ヰ』『ヱ』『ヲ』『ヅ』『ヂ』は使わない。」というふうになっている。この辺も,今後改めて御議論のあるところかもしれない。
 その次に,また(注記)ということで国語課の説明がついているが,原語で二つ以上の言葉が一緒になった複合語,例えば「オール・ウエーブ」というのが出ているが,この「オール・ウエーブ」の中のつなぎの符号については,この部会報告では決めていない。これについては,「・」(なかてん)を使うと,そこに書いてあるように,例えば「東京・京都」というように,同類のものをくくるときに「・」を使うので,それと紛らわしいとか,ハイフンを使うと長音符号と紛らわしいとか,ダブルハイフンを使うと,等号・イコールと紛らわしいとか,一字空けると別語に見えてしまうとか,いろんな御意見があって,結局,これは取り上げられなかったわけである。
 以上がこの冊子の内容であるが,これは今期審議会において種々重要な参考資料になるであろうと思われる。

森国語課長

 次に,資料4であるが,これは先ほど御確認いただいたもので,省略させていただく。資料の5,「文部省組織令」,これは政令の抜粋であって,先ほど文化部長から説明申し上げた。ただ,「国語審議会令」について補足すると,第5条に部会の規定がある。「審議会は,審議会の定めるところにより,部会を置くことができる。」というものである。このことについて,国語審議会の実際を申し上げると,昭和45年から昭和47年にかけての第10期審議会まではこの規定どおり部会を置くということでやってきた。ところが,この部会がとかく独立性を持ち過ぎるということもあって,第11期以降は部会の代わりに専門委員会を設け,なるべく総会中心主義で審議を進めていこうということになった。例えば,第11期からの常用漢字表検討の際には「漢字表委員会」であるとか,先般4年をかけた現代仮名遣いに関しては,「仮名遣い委員会」というものを置くなど,なるべく総会中心主義で御審議をいただき,答申をとりまとめていただいてきたわけである。第5条についてはそういった経緯がある。
 第6条は,議事の規定である。「審議会は委員及び議事に関係のある臨時委員の過半数が出席しなければ,議事を開き,議決することができない。」「審議会の議事は,出席した委員及び議事に関係のある臨時委員の過半数をもって決し,可否同数のときは,会長の決するところによる。」
 第7条は,庶務に関する規定で,「審議会の庶務は,文化庁文化部国語課において処理する。」
 第8条は雑則であって,「この政令に定めるもののほか,審議会の議事の手続その他その運営に関し必要な事項は,審議会が定める。」ということである。
 次に,資料6,7として,白表紙の冊子を2種類お配りしてある。資料6は,「国語関係訓令・告示集」。これは内閣訓令,内閣告示集である。現に内閣告示になっているもの,「ローマ字のつづり方」,「送り仮名の付け方」,「常用漢字表」,「現代仮名遣い」の4件を収めたものである。資料7は,「国語審議会答申・建議集」である。これは,国語審議会の昭和21年以降の答申・建議・報告をまとめたものである。いずれも御参考までにお配りしたものである。
 最後に資料8は,「外来語の表記の問題について」と題する説明資料。項目の1と2は,先ほど文化部長から,今期の審議事項について説明申し上げた際に触れた事柄である。そこで,項目の3を御覧いただくと,ここにあるように,「外来語の表記に関して指摘されている問題点はいろいろあるが,根本的には,原語の発音又はつづりに即した表記を採るべきか,国語化した発音をもとにした平易な表記を採るべきか」という両極の意見があり,その中間がまたいろいろあるわけである。「外来語の表記について」(昭和29年報告)は,「なるべく平易なほうを採る」として,おおむね後者の立場に立っているが,近年とみに前者,すなわち原音主義というか,そういった方針を主張する声も高まっている。このことについては,その背景として,例えば,戦後,国民の英語教育を中心とした語学教育が非常に進んできたこととか,テレビ,マスコミの発達,あるいは国際関係の緊密化というような状況の下で,国民の外国語に接する機会,あるいは外国語が外来語として我が国に流入してくる機会が非常に増えているというようなことがあろうかと思う。
 それから,項目の4であるが,個別の問題点として,以下に述べてあるのは,先ほど「外来語の表記について」の冊子で触れた19の原則に関して,世上指摘されている主な例を紹介したものであって,すべての指摘を網羅しているものではない。
 例えば,(1)として,「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」のF絡みの音について,これには,「セロハン」の「ハ」とか,「ホルマリン」の「ホ」とか,なるべくそういうふうに書けというのが原則10であるが,これについて,黒ポチ付きで問題点を紹介してある。以下,黒丸の項はすべて,私どもの意見というのではなく,世上よく接するいろいろな意見,指摘を紹介したものである。御覧いただくと,例えば,「『ハ』『ヒ』『ヘ』『ホ』で書く慣用の固定している語は別として,多くの語は『ファ』『フィ』『フェ』『フォ』で書いているのが実情であるから,むしろこちらを本則とする方がよいのではないか。」つまり,このF絡みの音は,我々日本人は比較的耳にしたときに聞き分けやすい,聞き分けられる。口にするときも,言い分けることができるというような性格の音なので,むしろこれを本則にした方がいいというような意見がある。
 次の(2)はV絡みの音であるが,これは先ほどの原則10では,なるべく「バ」「ビ」「ブ」「ベ」「ボ」とバ行で処理することにしているが,「ヴ」に小さい「ァィェォ」を添えてもよいことになっている。これについてはその次の黒ポチを御覧いただくと,一つの意見として,実際の発音では,あるいは聞き取りの能力も絡むと思うが,日本人は一般にVに絡む「ヴ」の表記をしてもバ行のものと区別できない。日本人はなかなかこの辺は区別しにくい。だからやっぱりヴァ行は用いない方がよいのではないかというような指摘もある。ちなみに,下に(注)とあるが,新聞,あるいは小・中学校の教科書等では,この「ヴ」に小さく「ァ」などを添えるヴァ行は一切用いない方針をとっている。以下,省略させていただくが,こういった問題点が(4),(5),(6),(7)というふうに紹介してある。
 この資料の最後の項目5であるが,外来語表記の問題に関連する事項として,これは先ほど文化部長から説明申し上げたが,外国の地名・人名の取扱いという問題がある。昭和29年の報告はこれには触れていないが,この問題を今期審議会においてどのようにお取り扱いいただくのか。それは,これからの御審議次第であるが,このただし書き以下に述べてあるように,取り上げるとした場合でも,一般の外来語と外国の地名・人名とに共通するルールを考えるか,それとも別々の原則を考えるかといったことについては,慎重に考慮しなければならないということが言えるかと思う。
 雑駁(ぱく)な説明であるが,以上,配布資料の説明を申し上げた。

坂本会長

 ただいま議題の7と8の説明を事務局からしていただいたわけであるが,このことについて,委員の方々から御発言はないか。
 格別の御発言がなければ,次の議題に移らせていただきたいと思うが,いかがか……。

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