国語施策・日本語教育

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次第 「外来語の表記(案)」について(報告)

坂本会長

 それでは,続いて本日の議事に入りたい。先般,全員協議会で御協議いただいた「外来語の表記(案)」については,その後,外来語表記委員会で調整されたところもあるので,林主査から御報告をお願いし,あわせて,この機会に必要な御説明があれば,それも同時に伺いたいと思う。

林(大)主査

 それでは御説明を申し上げる。
 先ほどお話があったように,2月2日に第12回外来語表記委員会を開き,1月25日の全員協議会で伺った御意見,それから,その後秋山委員,築島委員,宮地委員,お三人から書面で御連絡をいただいた御意見等を資料にして,表記委員会で逐一御相談し,多少の調整をした。文言に若干手を入れたところもあるし,また新たに注記をしたところもある。最終的に主査,副主査にお任せいただいたところは,事務局とも相談をして,調整した。その結果が,ごらんのような印刷物「外来語の表記(案)」である。
 また,2月2日以後,椎名委員から御意見をいただいたが,表記委員会には間に合わなかったので,今後,各方面から寄せられる御意見と併せて明年度,6月以降の検討において,検討する手順になると思う。今日,後でいろいろ御意見が出ようかと思うが,それも同様に取り扱わせていただきたいと考えている。
 それでは,全員協議会でお目にかけた案と今日お目にかけている案との間の違いについて,少々申し上げる。
 前文については,文言の多少の修正と注記の挿入がある。
 お手元の「外来語の表記(案)」の第1ページの中ほどに,「審議に当たっては」という段落があるが,その4行目の右の方が,もとは「外国の地名・人名の表記の実態について把握することに努めた」となっていたのを,「実態を把握することに努めた」とした。文言上の修正である。
 そのページの一番下の行から次のページへ続く文は,もとは「発音や語形,意味,用法に変化が生ずる。すなわち,国語化するのが普通である」と書いてあったのを,「発音や語形,意味用法に変化が生じ,国語化するのが普通である」というふうに修正した。
 それから,誠に細かいことであるが,3ページの下の方の「性格,構成及び内容」の前の段落,「現実には,様々な状況に応じて,これら以外の音を仮名で書き表すことが必要になる場合があるが」としてあったのを,「場合もあるが」に直した。
 以上が文言上の修正であるが,「性格」の項について新たに注を加えた。全員協議会の折に出た御意見を重んじて,こういう修正,補入をしたわけである。
 3ページの下の方の1,「性格」の(1)は,この「外来語の表記(案)」が一般の社会生活におけるよりどころを示すものだということである。(2)が,専門分野や個々人の表記に及ぼすものではないということ。(3)は,「この「外来語の表記(案)」は,現代の国語を書き表すものであって,過去に行われた様々な表記を否定しようとするものではない。また,固有名詞など(例えば人名,会社名,商品名等)でこれによりがたいものには及ぼさない。」,こうあるわけだが,「様々な表記」の後に「注参照」と括弧で入れて,その下に注を3行加えた。過去に行われた様々な表記というのは,例えばこういうものであるという注記をここに出したわけである。
「(注) 例えば,明治以来の文芸作品等においては,下記のような仮名表記も行われている。
     ヰ:スヰフトの「ガリワ゛ー旅行記」 ヱ:ヱルテル 
     ヲ:ヲルポール ワ゛:ワ゛イオリン ヰ゛:ヰ゛オロン 
     ヱ゛:ヱ゛ルレエヌ ヲ゛:ヲ゛ルガ ヂ:ケンブリッヂ 
     ヅ:ワーヅワース」
 このような例が,明治以来の文芸作品等において現れるということを注記して,過去に行われた様々な表記とはこういうものであるということを明らかにすることにした。これらの例については,前回ちょっとお話があったが,紅野委員が御尽力なさった『明治文学全集』の総索引も参考にして,事務局の方で拙出したものである。
 こういうことで,ワ行のヰ,ヱ,ヲ,ワ゛,ヰ゛,ヱ゛,ヲ゛,ヂ,ヅというものについて,これを無視するとか否定しようとするものではないという例を明らかにしたわけである。
 前文の修正は,以上である。

林(大)主査

 それから,本文の方では,留意事項の方に注記の例がいろいろ挙がっているが,その順序が,いわゆる五十音順になっていないところがあったので,それを修正して,普通の五十音順に並べかえた。例えば,9ページの真ん中辺,4の項の注1の例である。「エチケット」「スチーム」「プラスチック」とあって,次に,先回は「スタジオ」「スタジアム」とあったのを,五十音順でいくと,「スタジアム」の方が先だというわけで,「スタジアム」「スタジオ」という順に訂正をさせていただいた。
 同様に,10ページの下から8行目,3の項の注1の例「クアルテット」「クイズ」「クインテット」は,「クイズ」の方が後になっていたのを五十音順に直したわけである。また,12ページの上の方,1,撥(はつ)音のところの例で,「コンマ」「シャンソン」「トランク」「メンバー」の次に「ランニング」「ランプ」とあるが,もとは「ランプ」の方が先に出ていたのを,「ランニング」の方が先だということで,これを修正した。同じページの下の方の4の例,「グラビア」「ピアノ」も,「ピアノ」が先に出ていたのを「グ」の方が「ピ」よりも先だからというので,修正した。
 本文については,このように語例の順序を五十音順に正しただけである。
 用例集の方については,別段の修正はしていない。前回お目にかけたとおりである。
 そういう次第で,委員会から提出する最終案としてはこういうふうになった,という御報告を申し上げる。
 なお,今日までのところ,書面でいただいている御意見の中に,例えば外来音の音としての性格を,表音符号,発音記号といったものを使うなりして明らかにする必要があるのではないかという御意見があったわけであるが,いろいろ考えても,音の示し方は大変難しい。私どもは発音記号などというものにはある程度慣れているつもりであるが,一般の方々には,多少難しい印象を与えるということもあって,専門家にはかえって分かりにくい表現かもしれないが,修正しないで現在のような書き方のままとした次第である。
 なお,教育上の問題について,教科書上の取扱いなどについての御意見も出されているわけであるが,それは,恐らくこれを教育の方で取り上げられるときに適切に考えていただくことになるであろうと考えて,特に言及を加えることをしなかった。
 以上のように,今日まで総会,あるいは表記委員会,小委員会においていろいろ御意見が出て,それによってどうやらまとめをいたしたわけである。御協力いただいたことを誠にありがたいと思っている。なお,今日もいろいろ御意見が出ようかと思うし,まだ来年度の審議もあるので,何分よろしくお願いしたい。

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