国語施策・日本語教育

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次第 「外来語の表記(案)」説明協議会について(報告)

坂本会長

 次に,説明協議会の状況についての御報告をお願いしたい。
 五つの会場すべてにお出掛けいただいた林主査と,東京,大阪の2会場にお加わりいただいた松村副主査からお話が伺えたらと思うが,いかがか。

林(大)主査

 私は資料1の1にあるように,3月15日から28日にわたって,5か所,5会場へ参った。
 東京,大阪では比較的人数が多かったけれども,その他の地域では,それほどの人数ではなかったが,お集まりになった方々は皆さん熱心に説明を聞き,かつ質問などをしてくださったわけである。
 私が大体1時間ばかり説明をして,その後,質疑応答ということになった。この意見書の第3部,59ページ以後に,各地での御意見あるいは御質問等の要旨が分類して挙げてある。
 この試案について新聞等で既に御存じの方もあったが,会場で初めて御覧になったという方もあり,多少誤解をしていらっしゃると私などが思う御質問もあった。東京,大阪では松村さんのお助けがあり,また事務局の方から回答をしてもらったところもあるが,それぞれに一通りお答えをしている。
 これらの説明協議会で感じたのは,我々の案の前文における解説,あるいは本文の用語について,明瞭(りょう)性への要求があり,その点をもう少し考える必要があろうかというようなことである。
 特にもう少しはっきり理解してほしいと思ったところは,新聞などで,「原音尊重」というようなことが大きな見出しになって出たりしたものだから,「原音尊重」が今度の理念であるというふうに受け取っておられる向きがあり,もちろん,原音を排斥したというつもりではないけれども,「原音尊重」と言われると,なるべく外国語に近く書くんだというようなことになって,そういうふうに取られるのはちょっと違うのではないかというふうに感じている。それをうまく説明することを考えなければいけないだろうと思っている。
 もう一つは,私どもは「外国語」と「外来語」という言葉を区別しようとしているんだということを申しているわけだが,なかなかその間に画然とした区切りが設けられないのであって,その辺に関して多少御質問,御意見があったように思う。
 それから,お集まりになった方々は,多数が学校教育関係の方であったので,学校教育についての関心が深く,その問題が大分取り上げられたわけである。学校教育については,文部省の方で改めて取扱いを考えることになっているというような御説明はしたが,皆さんの御関心はそちらにあった。
 もう一つ,束縛するのではない,自由に緩めているということに賛成の御意見もあるけれども,学校教育とか,科学とかいった方面からの御意見としては,統一性の要求が大分出ていた。先ほど国語課長の説明の中にもあったとおりで,ゆれはなるべく認めないような方向がいいという御意見も幾らか聞こえたわけである。
 それから,多少誤解というか,これもなかなか難しいところだと思うが,個人の自由についての心配というものがどうしても付きまとい,私どもが,個人は束縛しないんだということをちゃんと書いているし,説明をしているのだけれども,個人の自由のことを心配される向きがある。これは当然と言えば当然のことだと思うけれども,自由がいいんだとおっしゃる方面でも,公共の面についてまで自由にすべきだという御意見かどうかは,私,ちょっとよく分からない。
 正確に取りまとめたわけではないが,私の印象としては,そんなようなことであった。また,松村さんあたりから印象を聞かせていただければと思っている。

坂本会長

 それでは,恐縮であるが,松村副主査にもお願いする。

松村副主査

 私は東京と大阪の2会場に出席したわけであるが,その2会場でも,特に質問を受けてお答えをするという席で,林主査及び国語課の担当官の方々と一緒にお答えをしたということである。
 全体のことは,今,林さんがおっしゃったので,私の印象,感じたことを簡単に付け加えさせていただきたい。
 全体として,今度のこの案に対して,皆さんが基本的には受け入れてくださった上での御質問なり御意見が大部分であったということは,はっきり感じた。この前,「現代仮名遣い」のときのもこういう説明会に出たが,その時は仮名遣いの基本的な考え方の違いから,いろいろな御意見もあったけれども,そういう点から申すと,雰囲気は非常に違っており,ある意味では割合に和やかな形で質疑応答ができた。しかも,皆さん非常に熱心に御質問,御意見をお出しくださり,それぞれ時間いっぱい,場合によると,まだ質問したくても時間切れでできなかったという方が出たようにも感じた。
 御意見なり御質問なりを出された方々は,個人的なお考えなり個人的な御質問であるが,何と言っても,私どもの案は,前文から本文,用例集まで,分量が相当多く,既に新聞発表などになってはいるが,前文などは割合に省かれた部分があったもので,当日初めてこの案を手にされて,質問なり御意見なりをなされた方もかなり多くて,そういう意味では,私どもの考えていることが十分伝わらないままの御質問や御意見もあったように思う。
 とにかく全体として,大体は認めていただいているようだが,個々の問題については,それぞれ人によっていろんな御意見があるということも感じたし,私どもの考えていることが,この案を通して十分に伝わりにくい,あるいは誤解される向きもあるんではないかという点については,今後もう少し分かりやすい形にすることも必要じゃないかという感じを持った。

坂本会長

 なお,東京の会場では,酒井副会長にごあいさつなどをお願いしたのであるが,何か御感想でもおありか。

酒井副会長

 私は東京会場でごあいさつ申し上げただけなので,特に林主査,松村副主査のお話に付け加えることはないが,資料にあるように,東京会場は670というかなり多数の方に積極的に参加していただき,定刻前から会場を埋めるというような状況であった。そういう意味で,関心の強さを感じたわけである。
 質疑応答の内容は,今,お話があったように,多くのいろいろな発言があったわけで,特に出版界とか教育界の方々の関心が強いということを感じさせられた。
 しかし,教育界あるいは出版界という関係者団体の関心だけではなくて,潜在的には一般の関心も非常に大きいのではないかというふうに私自身は感じる。
 そういう意味では,これからの審議の段階というのは,非常に大事であって,各方面の御意見を参考にしながら,試案の趣旨,内容がよりよく理解されるような形で,答申案に持っていけたらというふうに思っている。

坂本会長

 今のお話にもあったように,各会場とも大変活気のある状況だったというふうに理解できるかと思う。この際,改めて各委員の方々のお骨折りに感謝を申し上げたいと思う。

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