国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 問題点整理委員会報告2

林(大)主査

 (6)「文字や単語の問題にとどまらず,『表現』として国語を考えることが必要ではないか」。単語を書く漢字や仮名遣いのことばかり議論するのではなくて,全体的な表現というものを考える必要がある,表現力を伸ばすことが教育の上でも大切であるという御意見である。結局,豊かな表現をするため,「表現」ということを取り扱うことになると,やはり教育の問題が出発点になるかと思われる。
 (7)「官庁で使う言葉はなるべく平易にすべきである」。これは,特別に使用方面を限定するわけであるが,官庁では分かりやすい言葉を使ってもらいたい,なお改善の余地が多い,官庁固有の用語を外部の人に押し付けるような形にならないようにしてほしいなど,官庁に対する注文になると思う。
 (8)「専門用語(業界用語)を一般の人々に対して濫用すべきではない」。一般向けの情報媒体で専門用語,業界用語が無分別に使われている。やたらに科学技術用語を使う傾向もある。いろいろ新しい機械の使用法を書いたものなどの中にも,特別の専門用語がやたらに使われていて,その用語がなかなか難しい場合もあるということであろうかと思う。
 (9)「言葉の遠慮現象というものに少し注目する必要があるのではないか」。これも非常に基本的な重要な難しい問題だと思うが,遠慮現象についてここには解説していないが,お分かりいただけるものと思う。言葉の遠慮現象の限度について勉強したいとか,これは使ってはならないということの意味をどう考えるかという問題があろうかと思う。
 それに付け加えて,地名の付け方などについても,何かの標準を立てておく必要があるのではないか。やたらに勝手な地名を付けたり――地名ばかりではなく,固有名詞の名付け方についても,いろいろなことがありそうなので,そのことも考える必要があろうという御指摘があった。
 次に,4の「国際化への対応,日本語教育に関すること」で,6項目ある。
 (1)「現代の外来語,外国語の使われ方は多様で一概に論断できないが,生の外国語(英語)が日本語の中に入り込んで使われる傾向は問題ではないか」という御指摘で,毎々の問題である。社会の風潮としての外国崇拝――崇拝と言うか,外国志向というようなものがこれを押さえているかと思うが,その辺をどう考えていくかということがここで問題になっているものと思う。
 (2)「官庁等における片仮名語の使用には慎重であるべきではないか」。これは外来語,外国語の使われ方の一つの表れであるが,特に官庁等において片仮名語が好んで使われるような傾向が認められるので,官庁に関しては,ぜひ日本語で表現できるように国語審議会が要望してもよいのではないかという,非常に具体的な問題提起である。
 (3)「放送等における片仮名語の使用にも反省すべき点がある」。放送等でも片仮名語が使われることが非常に多くなっているのではないか,それに対して放送の責任もあるので,反省しなければならない点であろうという御指摘であった。
 (4)「日本語の伝達機能を高める等,国際語としての日本語の在り方について検討することが必要ではないか」。国際語としての日本語の在り方ということである。日本語が日本人のものだけではなくなってきている現在,日本語のカを強くしていかなければならないだろう。外国人との問題では,日本人のあいまいな言葉の使い方という問題がある。それを明確な表現に改めていく必要があるという御指摘である。
 (5)「日本語の基礎語彙・基本語彙の設定,簡約(簡略)日本語の研究に前向きに取り組むべきである」。これは研究に対する要請ということになるが,日本語教育の指針の中に日本語の基礎語彙・基本語彙を設定するということも,国語審議会の考えるべきことではないか,それから,国際化ということを視野に置いて, 日本語学習者のための簡約日本語というものを研究することが必要であるという御意見である。それに対して,外国人のために日本語を簡単にする必要はない,日本の文化になじみにくくさせるので,むしろ望ましくないという御意見もあった。これは確かに御討議を願わなければならない問題であると思う。
 (6)「日本語教育教材,指導方法の開発と教員の養成を推進すべきである」。日本語教育をもっと振興すべきであり,教員の養成を緊急に行うべきだ――緊急に行うべきだというのは,国語審議会の仕事ではなくて,これを大いに推進するように,それぞれのところへ要請すべきであるということだろうと思う。
 それから,機器,マルチメディアソフト――これは片仮名語を使うことになってしまうのだけれども,情報機器の発展を日本語教育にどのように取り入れていくか,関係させていくかという問題の御指摘と思う。

林(大)主査

 5は「国語教育に関すること」で,6項目ある。
 (1)は,「漢字を読む能力を伸ばすため,読める漢字と書ける漢字を分けて考え,読める漢字を増やすような考え方を取り入れることが必要ではないか。また,振り仮名をもっと活用するとよいのではないか」。これは,読める漢字,書ける漢字――読み書き同時学習ということが明治以来のやり方であったけれども,これからは,書ける漢字,書けなくてもいいけれども読めるようにしておかなければならない字を振り分けておけば,教育的効果が上がるのではないかということだと思う。また,振り仮名を活用するということ。これは一番最初に戻って,漢字の制限の問題,漢字に範囲を設けるという問題についての反省への一つの問題点に関係すると思う。
 実際上の指導においては,教科書に出した漢字は書けるようにするというのが従来のやり方であったが,最近は読めるだけでも済ませるようにするという方向が,考えられているわけで,それをもう少し基本的に考えなければならないという御意見だと思う。
 新しい学習指導要領では,振り仮名を使ってもいいことにしてあるし,交ぜ書きを減らそうという傾向も出ているという御説明があった。これは先ほどの振り仮名の問題に関連してくる。
 また,日本語教育の問題と同様に,エレクトロニクスの発達をどのように学校教育の上に及ぼして国語教育に利用するか,同時に我々の文字能力をどう考えたらいいかという問題を考える必要があるという御指摘と思う。
 (2)「情報機器の発達を国語教育の中に有効に生かすべきである」。これはただいま申してしまったが,同様に,ワープロなどの機器を教育の中に生かすことを考えるべきである。
 (3)「音声教育,話すこと・聞くことの教育を充実させることが必要ではないか」。実際上,学校教育の中で話し言葉の問題を十分にやる必要があるということは,皆さん言われるけれども,学校教育だけでなく,社会教育,家庭教育の面でも提言や指針が示せるとよいという御意見。就職試験等でも昔は読み書きが重視されたが,今は面接が重視されているようだし,日本語の素晴らしさ,面白さを発揮するためにも,聞く・話すを初等教育から重視してほしいという御意見であった。
 (4)「朗読によって言葉のリズム・美しさを体得させることが必要ではないか」。学校教育の中で,特に朗読が軽視されてきた傾向がある。私どもが子供のときは,朗読ばかりさせられていたようなものだけれども,戦後,黙読がはやって,朗読に余りカを入れてこなかった面がある。そこで,学校でもっと朗読をさせるべきだ,『源氏物語』などの朗読の美しさ,近代文学の美しさを朗読によって与えたいということである。
 付け加えると,人に分からせるための朗読というのが根本的には必要ではないかと私などは考えている。私,今ここで朗読をしているのやら,何をしているのやら,分からないし,こんな言葉遣いをしていて,そんなことを言うのは誠に口幅ったいのだけれども,先ほども事務局の方から朗読をしてもらったように,読み聞かせの必要が実際あるわけである。それが往々にして訳の分からない朗読がある。ラジオやテレビのニュースの放送でも,どこへどう続いているのか分からないような朗読があるわけである。そういうことに気付かせることが必要なんじゃないか。それには美しさというところから入っていくのが道かもしれないが,これは何とかしなければならないと,驥(き)尾に付して意見を加えさせていただく。
 (5)「国語教育の中にも国際的な視野を取り入れるべきである」。日本語をよく知らない外国人に対してどういうふうにするか,知らない人に教えてあげるにはどうするか,知らない人にはどういうふうに話したらいいかということを考えることも,国語教育の一つのポイントであろうという御指摘だろうと思う。それから,話すこと,聞くことにもっと重点を置いて,分かりやすい言葉で的確に伝達する,それが国語教育の大きな問題だろう。話し方教育というのは,戦後非常に普及したような形であるが,その内容がこれでいいのかという反省をする必要があるだろうという, これは教育の方への注文というわけである。
 (6)「表現力,書写力をも重視すべきである」。学力を伸ばす上で表現力がもっと必要になってくるが,美しい文字を書くことも大切であり,書写の指導にカを入れる必要があるという御意見である。
 なお,このほかの御意見,御指摘として,幼児の漢字の習得力にはある種の目覚ましい結果も出ていると思うが,そういうことに対してどう考えるか,学校や社会の言語環境の乱れ,学校における言語環境ということを今の指導要領などでは重視しているわけだが,実際はどうか,教員の言葉遣いがまず第一の問題である,入試問題が国語嫌いを作っているのではあるまいか,それから,帰国子女に対する国語教育も問題になった。

林(大)主査

 上手に御説明できなかったけれども,皆様方の御意見をまとめてみると,こういう範囲で,こういうような問題にわたっていたということを御報告したつもりである。
 これについては,整理委員会でもいろいろ議論していただきながら,こういうふうにまとめたわけであるが,これについては,なお,こういうふうにまとめてみれば,まだこういう問題があるのではないか,大事な問題がここに抜けてはいないかという御指摘もあろうかと思うので,よろしくお願いする。
 次に,14ページのV「国語審議会として今後更に審議すを深める必要があると思われる問題」,これは仮にこうやってまとめてみたが,こういうふうにまとめていくべきであると,この総会に対して提案しているわけでは必ずしもない。「こんな問題があるようだが,いかがか。」というものであって,これに対して,なお適切な問題を御指摘いただければ幸いだと思う。これは先ほど各委員の御意見を整理したと同じように,1から5まで大きく5項目に分けてある。
 ここのところを事務局に読んでいただく。


〔V朗読〕

林(大)主査

 こういうように五つの分類に従って12の項目を立ててみたわけである。これについては,いろいろこれから御議論をいただきたいと思う。
 肝心のUのところ,各委員の御意見のところを私が御説明したので,かえって分かりにくかったかもしれないが,ここに書いてあるので,そういうものとして御理解いただき,なおいろいろ御意見をいただきたいと思う。
 もし,問題点整理委員会がなお続けて仕事をするとすれば,ここでいろいろ御意見を更にいただいて,こういう問題,こういう問題と御指摘があった中で,また重点をどこに置くかというようなことをお諮りすることもできようかと思うので,よろしくお願いする。
 非常に具体的な細かい問題も気になるし,また高い段階での平明,的確,美しく豊かといったような問題,国民の国語意識を高揚させなければいけないといったような非常に大きな問題まであるわけである。が,その辺のところでいろいろな問題をお聞かせいただければ,審議会の今後の御議論に非常に有効ではないかと思うので――会長のところへ少し踏み込んだ言い方になるけれども,よろしくお願いする。

坂本会長

 どうもありがとうございました。
 従来の国語施策の見直しについての総括とか,現代の国語をめぐる社会状況の変化などについての方策も含めて,大変長文の報告をおまとめいただいたわけである。
 実は先ほど運営委員会を開いて御相談したことであるけれども,本日のこの報告を土台にしていろいろ御協議いただいて,今後更に問題点整理委員会で御検討いただいて,次回6月の総会で,今期第19期審議会の中間的な報告として世間に公表できるような形にまで取りまとめていただくことが,当面の運びとして適切なのではないかと考えられているわけである。

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