国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 「現代の国語をめぐる諸問題について(審議経過報告)(案)」について(報告)

坂本会長

 続いて,本日の議事に入りたい。前回の総会で御了承いただいたように,問題点整理委員会で御検討願って,お手元の「現代の国語をめぐる諸問題について」をまとめていただいたわけである。これは,今期第19期審議会の中間的な審議経過報告として,世間に公表することを前提としてまとめたものである。一昨日,6月16日に開催した運営委員会でも御相談したところであるが,これを本日の総会でお諮りして,決定の上,文部大臣あてに報告するという運びにさせていただきたいと思う。
 それでは,問題点整理委員会の林(大)主査から,前回の総会以後改められた箇所などについて,まず御説明いただき,事務局から主要な部分の朗読を願って,その後協議に入りたいと思う。林(大)主査,よろしくお願いする。

林(大)主査

 それでは,御報告を申し上げる。
 前回3月の総会で,大体の御意見の取りまとめを御報告したわけであるが,その後,3回の整理委員会を開き,新たな御意見なども加えて,もう一度全体を見直した。その結果を取りまとめたものをきょうお目にかけているわけである。
 どのような点が3月から変わったかということであるけれども,大体の取りまとめの方針は3月のままであって,この報告の構成,組立て自体も3月のときと同様である。
 「はじめに」というのがあり,それから「総論」,委員から提出された主な御意見をまとめたUの「諸問題」,その次に,「今後更に審議を深める必要があると思われる問題」をVとして掲げている。これは前のとおりである。
 最初に,1ぺージの「はじめに」であるが,変わったところは,6行目の行末から11行目までの5行ちょっとである。3月時点での問題点整理委員会報告を今回審議会報告とするために,これを加えているわけである。
 この「はじめに」と「総論」の部分は,「てにをは」の上で多少修正したところがあるけれども,変更というほどのことはない。
 次に,7ぺージであるが,ここの諸問題の整理の仕方,組立て方についても3月のものを踏襲している。1が「表記に関すること」,2が「情報化への対応に関すること」,3が「言葉遣い,話し言葉,敬語,方言等に関すること」,4が「国際化への対応,日本語教育に関すること」,5が「国語教育に関すること」で,五つの大項目に整理することは前と同様である。

林(大)主査

 修正等を加えたところは,まず,第1の「表記に関すること」の(1)「常用漢字表」や「現代仮名遣い」の内容に対する見直しの問題。その2番目の○の2行目に,「例えば,『仏(←佛)』『払(←)』『独(←獨)』は簡略化されているのに,『沸』『濁』はそのままになっていることなどが以前から指摘されている。」と,こういう具体的な例を加えた。御意見が変わったわけではなく,御意見の説明として,例を挙げておくことにしたわけである。
 こういうふうに,言葉を多少補ったような例は後にもあるけれども,それは一々申し上げるまでもないと思う。
 それから,(2)の3番目の○に,「報道機関の仕事の性質上,機関内での統一的なルールはどうしても必要であり,厳格にそれを適用することになる。芸術等の分野に関するものは別だが。」という御意見を加えることにした。前は第1,第2の○だけであったが,それらに対して,新聞・報道の立場における御発言というものもあったわけであるから,ここにそれを挙げておくことにしたわけである。
 それから,8ぺージの(5)は,句読法に関するよりどころであるが,その下に,1の全体に対する「注」として,「その他……」とある。これは前にもあったが,そこに一つは「漢字の速読効果」というものを入れた。3月の報告では,国語教育に関することの中に,これに関係した事柄が入っていたわけであるけれども,それをここへ「漢字の速読効果」ということで入れておくことにした。それから,2行目の真ん中のところに,「ローマ字のつづり方」というのがある。これは総会等では御意見が出ていなかったが,委員会の中で話題になったので,これもやはり問題として書いておいてよかろうということで,「注」の中に入れたわけである。
 9ページは特に修正等はない。
 9ぺージの一番下から始まる(3)は,10ぺージの方にたくさんの○が並んでいるが,一番最後に,「言葉について広く世の中の人々の関心を呼び起こし,言葉を大切にする気風を養うことが必要である。」という意見が新たに出たので書き添えてある。 
 11ぺージは,(8)(9)(10)。(10)は, ここで項目を一つ立ててあるが,男女の言葉遣いの問題というお話が出た。それを一つ立ててある。御意見としては,「小学校の先生(女性)が男の言葉を使われるので,娘に対する言葉のしつけの上で困った経験がある。」というお話が出たので,そのまま書いてある。
 次に,「男女の言葉遣いの区別があるのは,日本語の優れた点,美しい点だと思うが,男女の言葉遣いがだんだん接近してくるのは自然の成り行きで仕方のないこととして見過ごしていくのか,やはり区別はあった方がよいのか考えてみたい。」という御意見であった。それをここへ(1O)として立てたわけである。
 (11)も,前にはなかったが,「豊富な用例を収録した国語大辞典の編集事業を国として積極的に進めるべきである。」という御意見が後から出てきたので,それをここに掲げたわけである。
 「言葉は時代とともに移り変わるものだが,それぞれの時代の言葉の使用例を十分に収録した国語の大辞典があるとよいと思う。言葉の歴史も分かるし,国語の伝統を大切にし,言葉の乱れを正し,国語に対する意識を高めることにもつながるものだと思われる。」,こういう御意見である。歴史的辞典ばかりでなく,現代語の記述をしなければならないということもあるかと思うが,とにかくここでの御意見としてはこういうことである。
 次に,「国立国語研究所で国語大辞典(日本語大語誌)編集の準備作業が行われているが,国語審議会としても,このような事業を積極的に推進するよう提言してはどうか。」という御意見がある。
 第3は,「明治大正の文学作品の会話の中の言葉遣いなどでも,既に今日の人には分かりにくくなっているものがある。日本の古典を正しく次の世代に伝えていくためには,このような問題にも留意する必要があるのではないか。」この御意見は,必ずしも辞典の編集に関係して御発言になったわけではないけれども,国民の国語意識を盛んにするということにも関係のある問題なので,ここへ一緒に付け加えさせていただいている。

林(大)主査

 4の「国際化への対応,日本語教育に関すること」で,(1)は外来語・外国語の使われ方の問題があったところであるが,その一番下の○,「アナウンサーの実況放送などにも外来語・外国語を持ち込むことが多い。放送の大きな責任でもあり,反省点でもある。」という御発言があった。それをここへ書きとどめた。
 続いて,12ぺージの最初であるが,「最近,企業や団体名などのアルファベットの略称が多く用いられるようになったが,読み方や意味の分からないものも随分多いように思われる。」これは一つの問題点であるという御指摘で,これを付け加えた。
 そのぺージの一番下,(6)「『国語』と『日本語』という呼称について,その概念の区別と使用範囲を明確にしておくべきではないか。」これは第4回の総会でも話題になったところであるが,これを書き加えることにした。その御意見は,13ぺージに細かく6項目に掲げてある。
 「『国語審議会』という名称は『日本語審議会』とする方がよいのではないか。」という御意見もあったし,それに対して「『国語』というのは,日本でもイタリアでも,近代国家の成立に伴い政策的な意図で統一され,人為的にルール化されたものであって,政策的な審議になじむものである。」という御意見が出た。それから,「『日本語』は自然言語的なものであるのに対して,『国語』は明治になって成立し,以来人工言語的に整理されてきたものと言ってよいのではないか。」という御発言もあった。
 また,「『日本語教育』と『国語教育』という区別に日本の言語文化を伝えていく上の二重構造の問題があると思う。今これを一本化するのは無理だと思うが。」という御意見,「『国語』というのは自国語に対する自覚に基づいたものと考えたい。したがって,国民教育の上では『国語』でなくてはならないと思う。」という御意見,「『日本語教育』という場合の『日本語』は英語におけるEnglish as a second languageに相当するものだろう。」という御注意があったわけである。
 以上が,「日本語」と「国語」という用語に関しての問題点として御意見が出たところであり,それを加えたわけである。

林(大)主査

 次に,5の「国語教育に関すること」であるが,(1)の「漢字を読む能力を伸ばすことが必要ではないか。」の項は,前は少し詳しく書いてあって,「漢字を読む能力を伸ばすため,読める漢字と書ける漢字を分けて考え,読める漢字を増やすような考え方を取り入れることが必要ではないか。また,振り仮名をもっと活用するとよいのではないか。」というふうに,言葉が大分多かったのであるけれども,下の○の中に御意見も出るし,ほかとも関係があるので,(1)の項目は,簡単に「漢字を読む能力を伸ばすことが必要ではないか。」という表現にしたわけである。
 なお,○の5番目は後から加えたことであるが,「学校教育における漢字の読み書きの指導については,『常用漢字表』を基本としており,読める漢字を増やすということでそれ以上の指導を行うとすれば,まず『常用漢字表』の見直しをする必要があるのではないか。」という御意見が出され,ここへ記した。
 (2)は情報機器の問題であるが,その3番目も学校教育に関連しており,「学校教育においては,児童生徒が自ら書くことによって書く力の育成を重視しているので,学校教育の段階でワープロを安易に用いることは書くカの育成に支障を来すのではないか。」という御心配である。そのことが御意見に出てきたので,ここへ書いてある。
 14枚目,上から2番目の○は,音声言語教育の充実の項目の中であるが,「きちんと意見の発表ができるということがこれからの日本人には非常に大切だと思うので,聞く・話すを重視すべきである。」という,第4回の総会で出た御意見である。
 「場合に応じた生き生きした言葉遣いを身につけることができるような教育をしてほしい。」も,同様に前回の総会で出た御意見である。
 それから,その下の方の(7)「教育関係者の国語の重要性についての認識を深める必要がある。」教育の根本は言葉であるということを,教育関係者がよく認識してくれるようにありたいものであるということである。「教育養成に当たっても,国語に関する知識・能力を教員を志望する者の基礎的教養として,より一層重視してほしい。」ということである。これも第4回総会で私が発言をさせていただいたことであるが,ここに加えさせていただいた。
 以上が,委員各位が総会あるいは委員会で御発言になった御意見を,一応この5項目の中ヘ整理して取り込んだものである。
 次に,15ぺージであるが,これは今後更に審議を深める必要があると思われる問題として整理したものである。部分的に適宜言葉を補ったところはあるけれども,趣旨の上で変わっていないところは,ただいま申し上げることは省く。
 1に「表記に関すること」,2に「情報化への対応に関すること」とあり,その情報化の(2)のところに,「ワープロ等の情報機器の発達に伴うこれからの国語の能力の在り方について考えておく必要があるのではないか。」,3行目に「また,仮名漢字変換方式の普及によって,漢字を用いることは容易になりつつあるが,それに伴って漢字を読む能力の重要性はむしろ増大することが予想される。漢字を読む能力の伸長を図るために,振り仮名の活用等について社会一般に配慮する必要があるのではないか。」とある。後段の問題は,実は前は5の「国語教育に関すること」のところで取りまとめていたが,情報機器の発達ということに関連する項目として,ここに一緒にまとめて挙げることにしたわけである。
 16枚目の問題は,(4)「国語の大辞典の編集」であって,先ほど御意見として付け加えたところを,もう一度ここに問題として掲げたわけである。
 4の「国際化への対応,日本語教育に関すること」の(2)の「日本語教育の推進」に関しては,一つは,日本語教育の多様化に伴って,教材,指導方法の開発,機器の活用を積極的に推進するということと,教員や指導者の養成に努めるということがある。もう一つ,「日本語教育に資するものとしての日本語の基礎語彙・基本語彙の設定,現実的な要請に応ずるものとしての易しい日本語についての研究等を積極的に進めるべきではないか。」これは3月の段階では二つの項目になっていたが,今回一つの項目とすることにした。
 5の最後の「音声言語の重視」であるが,第4回の総会で出た御意見の趣旨を,ここへこの形で補うことにした。もとは「朗読などの重視」という1項目であったけれども,それをこういうふうにまとめさせていただいた。御意見のところで申したように,「自分の考えをまとめ,きちんと発表し,人の意見を相手の立場に立って理解するということが,社会生活を送る上で大切なことは言うまでもない。そこで,そういう基礎的な能力を身につけるために,社会生活のあらゆる機会を通じて,自分としてのものの見方や考え方ができるような能力や態度を培うとともに,話すことや聞くことの教育を一層充実させるべきではないか。」という文章で,ここへ付け加えさせていただいた。
 以上,3月の御報告以来,多少の変更あるいは追加をした点を申し上げた次第である。
 以上で,私の御報告を終わらせていただく。なお,ただいま申したのは要点であるが,これから全体を取りまとめた形で事務局に朗読をしてもらうことにする。


〔七五三掛国語課長補佐,朗読〕


はじめに(冒頭のみ)
T 総 論
U 現代の国語をめぐる諸問題(委員から出された主な意見)(各表題のみ))
V 国語審議会として今後更に審議を深める必要があると思われる問題

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