国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 ―問題点整理委員会の審議状況について(報告)

沖原副会長

 引き続いて,本日の議事に入らせていただく。
 前回の総会以後,問題点整理委員会を再開していただき,委員会では報告案の取りまとめについて御検討いただいているところである。
 それが本日「報告〔素案〕」としてお手元に提出されているので,まず林主査からこれについての御報告,御説明を伺って,その後,協議に入らせていただきたいと思う。
 林主査,よろしくお願いする。

林(大)主査

 お手元の「報告〔素案〕」であるが,これを一通り事務局の方から朗読をしてもらおうと思っている。2段に分けて読んでもらおうと思う。どうぞよろしく。


〔七五三掛国語課長補佐 1〜3ぺージを朗読〕

林(大)主査

 ここで,御説明を付け加えることにする。
 「はじめに」のところであるが,この「はじめに」というのは,この報告を最終的に報告するときの「はじめに」であって,本日の時点での「はじめに」ではない。7行目に「ここに最終的な報告をまとめた」とあるのは,何箇月か後のことである。その文章をそのままここへ出しているので,御承知おきいただきたいと思う。
 これについては,なお今後整理委員会が何回か行われるわけで,ここでは,全くの素案で最終案ではないので,そのつもりでいろいろ御意見を伺わせていただきたいと思うわけである。
 本文の方であるが,今読んでもらった第1の「基本的な認識」は,国語の問題をこの審議会で論議をしていただくときの基本的な認識,共通的な認識をここで書いてみたわけである。
 1は「これまでの国語施策の経緯」で,明治から駆け足で戦後に参って,戦後から今日に至るまでの状況を書いてある。
 2は「国語施策の観点」で,どういうふうに問題を持つか,それをどういうふうに見るかということである。ここでは言葉がまだ十分になっていないかもしれないけれども,私の理解するところで申すならば,言語は基本的なものであって――ものと言っていいかどうか分からないが,尊重しなければならないのであるが,それについて問題を考えるとすれば,国語の伝統というものがある,日本語には伝統がある。その伝統を重んずることと,国語の中にあるいろいろな問題をどのようにして解決していくかということとは,適切な調和がなければならないということをまず基本的に考えるということであろうかと思う。
 その問題というものであるけれども,従来は,文字表記の面にだけ国語審議会はかかずらわってきたという批評があるが,問題はそれだけにとどまらないであろう,目をもっと広げておく必要があるということを考えるわけである。
 それから,国民のすべてにわたって我々の約束事を強制するのであるかという点であるが,そうではない。すべてにわたって国民を縛るというようなことを考えているわけではなくて,もし約束を設けるというならば,必要な箇所に必要な約束を設けていく。そういうことであろうと考えるわけである。
 「法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活」というところを対象にするんだ,個人生活は問題にしないんだということが書いてある。「科学,技術,芸術,その他の各種専門分野」というところへ及ぼそうとするものではないということを今日までは基本的な方針としてまいった。そういう適用の分野というものも考える必要があろうと思う。
 それから,適用については,1の項の最後にも出ているけれども,厳しい制約をしようということを考えているわけではなくて,「よりどころ」とか「目安」とかいう言葉を使って,一応の標準を立てておこう,「目安」を弾力的な性格のものとして考えていこうとしてきたし,その方針はこれからも考えてよろしかろうと思われる。それが「国語施策の観点」のところの考え方であろうと私は理解している。
 それから,なぜ国語の改善に取り組むかということであるが,それは社会状況がどのように変化していくか,その社会状況に応じて国語の問題も考えられなければならないということで,それをどのように考えているかが3である。
 価値観の多様化とか,言語意識の変化とか,昭和20年以後のいわゆる戦後の状況からしても,世の中の状況が随分変わっている。物質的な面になるかもしれないが,情報化といったようなものが非常に進展した。その面について,我々はこれを受け入れる形において,あるいはそれに対抗する形において,言語の問題を考えていかなければならないだろうというわけである。
 それから,新聞・雑誌,テレビ・ラジオ等のいわゆるマスメディアの問題である。ここは我々が大変影響を受けるところであるが,その辺の問題も非常に進行しつつある。とにかく昭和20年の段階においては,ラジオはあったけれども,テレビはまだなかった。テレビの影響は非常に大きなものがあると思う。
 それから,方言の問題もある。
 さらに,先ほどの情報機器の問題と関連するわけであるけれども,文字印刷の方面も大変な変化があったわけで,今や活字を組んでいくというような印刷の方式がどんどん消えているわけで,更にこれが進んでいくものだと思う。
 それから,人間関係と言葉の在り方は,敬語の適不適の問題など,言葉の乱れと言われているような問題である。それをどう考えるかということは大事な問題になろうかと思う。ここには,世代間の言葉の差とか,改まった場面と私的な場面とのけじめとか,高齢化社会の問題とか,そんなことが言及されている。

林(大)主査

 それから,国際的役割の増大,国際交流の進展に伴って,我々の言語の問題も,ただ単に日本人が国内で使っている言葉だけの問題ではなくなってきているので,その辺のところが非常に大事な観点になろうかと思う。
 去年の6月にお目に掛けたときには,あちこちに「国際化」という言葉を使っていたが,6月に村松委員からの御指摘で,「国際化」という言葉を使うのは用心しろというお話であった。すなわち,「国際化」というのは元来「インターナショナリゼーション」というものの訳語であって,その「インターナショナリゼーション」という言葉は,今我々が簡単に「国際化」と言っている問題ではなくて,例えばスエズ連河の国際共同管理といったような問題を言うところから始まっているのであるから,「国際化」という言葉を使うのには慎重でなければならないというような御指摘だったと思う。
 それで,このたびの素案では,「国際化」という言葉は1か所だけやむを得ず使っている。2ぺージの下から7行目のところに「いわゆる情報化,国際化の進展は」というふうにしてあるが,実は「情報化」という言葉も非常に大変な言葉のような気もする。「国際化」もここで簡単に使っているけれども,これも問題と言えば問題である。ここでは国内問題としてのみにとどまらないで,日本人が国際社会の中でどのように活動できるかという問題に目を開くこと,国民自身の生活態度を開くことが,「国際化」というようなものであると理解した程度で,ここに「国際化」という言葉を残しているのである。ほかでは「国際化」という言葉は使っていないわけである。
 今の3ぺージの日本語学習者に対する問題,こういうようなことを主として「国際化」と言っているわけであるけれども,なお情報の国際化ということもあるだろうし,世界各国との通信手段としての問題もあるだろうが,最初の方ではそれをひっくるめて「国際化」と言っており,ここでは日本語学習についての国際的役割,国際交流の進展ということで今日の状況を述べているわけである。
 一方では,日本語の中へ外国語が入ってくることは非常に問題だと思うが,どうせ受け入れなければならない問題であるとすれば,過度の使用というものが,我々の問題点,関心のある点であろうと思う。それをどう考えるかということが,ここで社会情勢として考えておかなければならないことの一つになろうかというわけである。
 最後のところは,「以上のように」と言って,「国語は,国民の生活と意識の共同の紐帯である」――「紐帯」という言葉は,明治二十何年に,上田万年先生が「国語は国民の紐帯である」という言葉をお使いになっておられるわけだが,言葉としてはそれ以来のことである。そうして,国語の教育を振興していくこと,国民が言葉に対する関心を持つこと,そのために我々がどういう努力をしなければならないかということが,今後の問題であろうというわけである。
 私が言葉を添えた方がかえって分かりにくいかもしれないが,そんなことを考えているわけである。
 これを審議会の考え方として御承認いただけるだろうと期待しているわけであるが,これについて,またいろいろ御意見をいただきたいと思う。根本的な考え方であるので,お考えをお聞かせいただきたいと思うわけである。
 次に,第2の「現代の国語をめぐる諸問題」で具体的な問題を述べるわけであるが,6月に御審議いただいたときには,Uとして,委員の各位から御提出になった意見をなるべく具体的に取り上げて羅列をしてお目に掛けていた。そして,Vとしてそれを整理して取りまとめて,全体で3部構成になっていたが,今回は各委員の個別の御意見は,皆この中ヘ取り入れることにして,一つにまとめてしまった。まとめたのが第2の「現代の国語をめぐる諸問題」というところである。
 ここには皆様からお寄せになった言葉がそのまま入っているとは限らないし,これでは不十分だというお考えもあろうかと思うけれども,一応ここにこうやって取りまとめてある。
 これをまた続いて読んでいただこうと思う。


〔4〜6ぺージを朗読〕

林(大)主査

 ありがとうございました。
 ただいまお聞きになった部分は,昨年6月以来,度々御覧いただいたりお耳に入ったりしていることであるが,このたびはこういう形でまとめてみたわけである。
 項目の順序を多少変えてみたところもあるし,また言葉遣いをいろいろ変えたところがあるけれども,従来の各委員から御提出になった御意見を取りまとめてまいったら,こういう結果になったわけである。一々の御説明は省略させていただこうと思う。

沖原副会長

 どうもありがとうございました。

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