国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 審議状況について1

坂本会長

 御質問がおありだとは思うけれども,後ほどまとめて伺うこととして,引き続いて第2委員会からの御報告を水谷主査からお願いする。
 なお,ワープロなどにおける漢字の字体については,ワーキンググループの座長をお務めになった石綿委員からお願いすることになっているので,よろしくお願いする。

水谷(第2委員会)主査

 第2委員会は,資料2の1ぺージの下の方にあるように,先ほど御報告があったが,前回の総会以後3回会議を開催した。それから,字体に関するワーキンググループも2回。このほかに,ヒアリングなども行って情報収集を継続してきた。
 仕事の段取りとして,国際化に対応する部分のことが先行していて,前回の総会以後,新たに情報化への対応の領域に入っていったわけで,出来上がっている内容というのも,その部分によって違っている。
 まず,1の「情報化への対応に関すること」から御報告をさせていただく。
 今,会長の方から御紹介があったように,「ワープロ等における漢字の字体」の部分は7ぺージ以降のところにあるが,それについてはワーキンググループを作って,総会以前からヒアリングを行うなどして仕事を積み重ねてきている。この成果については,後で石綿座長に報告をお願いしようと思っている。
 1ぺージの1の「情報機器の発達とこれからの国語施策の在り方」の部分については,押上,山崎,森山の各委員による小学校,中学校,高等学校の教員に対するアンケート調査などもしていただき,その結果なども踏まえて議論が進んでいる。アンケート自体については,限られた対象であるために,問題点を考えていくのに慎重でなければならないだろうということはあるが,私どもが議論を展開する上では大変役に立つお仕事をしてくださった。
 そのほかに,委員会で議論する資料を探すというような作業もして,そこで得られた意見,問題点,情報といったものを列挙したのが,この1ぺージから7ぺージにかけての内容である。したがって,これは意見が列挙されているだけであって,まだ報告書の形へ向けての整理はしていない。できれば,きょう少しでも方向付けについての御意見を賜って,今後の委員会での仕事に力を添えていただければ有り難いと思っている。
 1ぺージの下の「情報機器の発達とこれからの国語施策の在り方」というところでは,たくさん○を付けて意見が並んでいるが,これらの中でポイントを二つ三つ挙げていくとすると,2ぺージの四つ目の○の部分,ワープロ等の情報機器が急速に普及したのは近年のことであり,こうした機器が人々の書記能力,文章表現力,思考力にどのような影響を与えるかについては今のところ未知数である。
 そして,次の○にかかっていくが,こうした情報機器が言語生活にどのような影響を与えるかについての研究が積極的に行われるように提言していくべきではないだろうかという考え方が,一つのポイントになっているのだろうと判断する。
 もう一つ,もしポイントを挙げるとすれば,次の3ぺージの(2)のところになるが,「ワープロ等の使用者の用途に応じた多様なソフトの開発など」の前のところに,先ほど申し上げた3人の委員の方にアンケートをとっていただいた結果についての要約,書記能力,文章表現力,思考力等について並べてあるが,これも一つのデータとしてお考えいただきたい。
 (2)の下から二つ目の○の部分,多種多様な機能が開発され操作が複雑化する反面,基礎的な仮名漢字変換等の面では余り進歩がないのではないか。機能は多く,複雑化してきているけれども,やはり使用者にとってもっと使いやすいものが必要ではないかという意見。
 また,次のぺージにかかるが,4ぺージの上から三つ目の○の部分,現在の機器のことについて,説明書(マニュアル)の文章が非常に難しい,不完全である。このマニュアルについて,十分使いこなせないという状況があることに対しての問題指摘をするという可能性も高いのではないか。
 それから,(3)の「交ぜ書きの問題」になるが,交ぜ書きの問題のことになると,使った時間がかなり少なくなってきて,その次の縦書き・横書きの部分もそうであるが,もしかしたら意見の偏りが存在しているかもしれない。これから十分に情報を集めて,より妥当性の高い情報の収集を図る必要があるだろうと思っている。
 「交ぜ書きの問題」に関してのポイントをもし挙げていくとすれば,アの「「補てん」「ばん回」「伴りょ」のように,単語の一部を仮名書きにするいわわゆる交ぜ書きは,読み取りにくかったり,語の意味を把握しにくくさせたりする場合もあるので,言い換えなどの工夫や,必要に応じて振り仮名を用いて漢字で書くなどの配慮が要望されることが多い」というところである。これは実は前期の報告の中にも入っていた事柄であるが,この問題に関して違う考え方が出てきている。
 イの「交ぜ書きの現状」という部分は,現状についてのコメントであるが,5ぺージの真ん中辺り,エの「交ぜ書きに対する考え方」という項がある。ここのところに,先ほど申した前期から出ていた考え方に対する批判的な見方というのが載せてある。
 二つ目の○,「交ぜ書きも一概に否定することはない」というパラグラフであるが,真ん中ほどから「また,言い換えをするよりも元の言葉を使う方がよい場合に,交ぜ書きの形で表記するのはやむを得ないと思われる」,あるいは次の○の中の後半の部分にあるように,「ルビを振って難しい漢字を使うということは,漢字表を設けている趣旨にも合わないのではないか」という考え方が出てきている。審議会として,どのようにして交ぜ書きに対する考え方についてコンセンサスを形成していくかが,今後の課題になるかと思う。

水谷(第2委員会)主査

 6ぺージに入るが,(4)の「縦書き・横書きと書体の問題」というのがある。これも一度だけ話し合った結果がそこに載せてあるが,三つ目の○の中にある「横書きに適した書体の開発ということはなおざりにされてきたのではないか」という考え方とか,個々別々の御意見として,一番最初の○の「情報機器の表示装置に使われている文字(フォント)にしても,もっと工夫すればはるかに読みやすくなるだろう」とか,縦書き用に作られた漢字だから,横書き用に工夫する可能性があるだろうとか,そういったような意見が出ていた。これは,内容についての事柄自体についても,情報を収集していく努力をしなければならない課題だと思う。
 以上が,「情報化への対応に関すること」の中の1の「情報機器の発達とこれからの国語施策の在り方」という部分に属する内容についての話合いの結果についての御報告であるが,最初に申したように,この部分では,盛り込むべき,あるいは取り上げるべき,指摘すべき内容について,まだまだ足りないかと思うので,その内容をこういう面からも,あるいは報告書へ向けての方向付けとして,こんな方向で考えていく方がいいだろうということについての御助言が賜れればと思う。
 7ぺージの2の「ワープロ等における漢字の字体の問題」については,先ほども申し上げたように,ワーキンググループの石綿座長の方から御報告をお願いしたいと思う。

石綿座長

 「ワープロ等における漢字の字体の問題」は,漢字の字体の問題は広くあるが,その中で,最近極めてしばしば問題にされるワープロ等における漢字の字体の問題を中心にして,その周辺にあるいろんな問題についても一緒に取り上げるという考え方である。
 したがって,その中の1「表外字の字体の問題の現状」は全体を概観したもので,9ぺージにある2の「混乱の現状」が本日多少詳しくお話し申し上げたい事柄である。
 7ぺージの(1)の「表外字の字体の問題の現状」のアは,「常用漢字表審議の過程での表外字の字体についての考え方」で,これについては前回の総会でお渡しした資料に挙げてあるとおりで,ここの部分は詳しい説明は省略させていただく。
 イの「人名漢字の字体」も同様である。
 ウの「新聞における表外字の字体」は,朝日とか,読売とか,毎日,特に朝日は大幅に略体の採用をしているという話で,これも前回の資料に挙げてある。
 それから,エ「書籍出版における表外字の字体」,オ「辞書における表外字の字体」,カ「教科書における表外字の字体」も前回の資料にあるということで,御質問でもあれば別であるが,省略させていただく。
 8ぺージの下のケからが新しいことかと思う。
 9ぺージであるが,学術用語の中で,表外字を使ったものがあって,例えば2行目に「」という字が挙げてあるが,こういう略体の字が使われている。これなどはどういうふうにしたらいいのか。それから,3行目の「頚」とか,4行目の「躯」とか,そういう字が医学用語で使われているという話がある。
 それから,9ぺージのコ「情報検索における表外字の字体」。これは表外字が計算機によっては違う表現になる。表現というのは,文字と数字を組み合わせたコードと言われているものであるけれども,違う字になると,検索をしているときに一手余計になる。もう一つ,その字を書いてやらないと検索ができないという問題であるが,これも詳しく説明すると長くなるので,省略する。
 次に,「戸籍事務の電算化に伴う漢字の取扱いについて」。これは今法務省がやっていることで,そこに要領よく書いてあるので,これも省略させていただく。
 8ページのキとクを抜かしたが,それと9ぺージの「混乱の現状」というところを含めて御説明を申し上げる。
 8ぺージのキのところに,JIS漢字とある。これは通産省で決めているのだけれども,昭和53年(1978年)制定のJIS漢字では,次の行に「鴎」「涜」という字があるが,例えば「鴎」については「」が入っていた。「涜」も,今の略字でない字が昭和53年のJIS漢字には入っていたが,昭和58年に字体が変わってしまった。それで,「」の代わりに「鴎」になり,「」は「涜」になってしまったということがあって,それが普及しているのである。
 その下の説明は省略させていただいて,クのところであるが,「ワープロ・パソコンにおける表外字の字体の現状」は,そこに書いてあるが,「パソコン系のワープロソフトにおいては,JIS漢字は昭和53年の規格に基本的によっているものが多い」。しかし,新しいというか,そうでないものも混在している。ワープロ専用機においては,昭和58年改正規格を全面的に採り入れているものもあり,部分的にしか採り人れていないものもあり,いろいろである。
 このようになっていると,例えば「」を出そうとすると,あるワープロ,あるパソコンでは出てこない。そこで非常に大きな問題が起こって,9ぺージの「混乱の現状」としてまとめられているところに移るわけである。
 9ぺージのア,「上記改正を全面的に採用しているワープロ機種においては,表外字について「鴎」や「涜」のように辞書や教科書と異なる字体が搭載され,ユーザーからの疑問や苦情が絶えないという実情がある」。この問題は,学術用語のようなある特定の人たちの間の言葉ではなくて,全国至る所,すべての家庭におけるワープロ・パソコンで起こっているので,問題として非常に大きく出てきているわけである。

石綿座長

 イのところへ行くと,「上記改正の際に表外字に略字を採り入れたのは」とあるが,上記改正というのは「」を「鴎」にしたということである。次に,「同時に制定されたJIS「ドットプリンタ用24ドット字形」」というのがあるが,これは駅などの電光ニュースとか非常に小さい機械等で,24ドット――ドットというのは点で,点と点で字を書いているわけであるけれども――点の少ない字体で表すために,漢字の画数を非常に省略したわけである。実は,ずっと前の漢字プリンタは24ドットであったので,それからの伝統があって,それがかなり普及していたということもあり,この時は24ドットの字形を決めたのだけれども,それにおいて低画素数の見やすい字形を用意するという見地から,略字が仕方なく多く採り入れられたので,それとの整合を図ったためであると説明されている。そういうわけで,昭和58年の改正の時に「鴎」という字になったのである。
 ウは,低画素数用の見やすい字形に対する需要自体は今後もなくならないと思われるけれども,我々が今議論しているのは普通の漢字,つまり印刷するときのもので,低画素数のものは別に考えたい。そういうふうに考えなければならないと思うので,この辺りは転換しなければいけない部分だと思う。
 そこで,その後,実はまたJISの方で漢字を5,000字ほど追加した。その追加では,さっきの「」がまた入っている。ただ,それを採用しているワープロやワープロソフトがまだ発売されていないというか,発売されているのかもしれないけれども,非常に少ない。それから,メーカーによっては「」がそのまま出るものもあるけれども,それは言ってみれば今のJIS規格には合っていないわけである。
 そういうようないろんなことがあって,現在,非常に混乱しているわけである。
 10ぺージの下の方に,「字体の問題についての考え方」というので,実はワーキンググループで議論を進めている中でいろいろ出てきた意見を並べてあるが,時間がないので,全部は説明しない。これはその時に出た意見ということで,ここで皆さんから意見を出していただく場合の種というか,手掛かりというか,そのために並べてあるだけで,決定したものではないので,是非新しい意見などを出していただきたいと思う。
 今説明した中で非常に大事な点は,11ぺージの上から四つ目の○と五つ目の○で,さっきの「鴎」などは,最近のJISの補助漢字を全面的に採用すれば解決する。今はそれを採用していないワープロなどを使っているので,いろいろ問題が生じている。どうして教科書のとおり出ないのかとか,そういう問題が出てきているわけである。
 次の○は,「機械のメーカーは受身であって,文字そのものは需要があれば作らざるを得ないが,共通のコードを与えて互換性を確保するということになると,個別の対応とは別の問題になる」。機械のメーカーの方は,値段は高くなるかもしれないけれども,必要ならばそういうのをどんどん出すと言っているわけであるから,そういうものをみんなが買えば,こういう字が出ないという非難については解決されるわけである。
 そのほかのことも説明したいけれども,時間をとり過ぎたので,以上でとどめさせていただく。

水谷(第2委員会)主査

 続けさせていただく。
 「国際社会への対応に関すること」であるが,この部分は,実は前回の総会でもここにお出しして,いろいろと御助言を賜った。その内容については,基本的には変わっていない。
 変わったことは,一つは前回の総会で指摘をいただいたこと,あるいは委員会の中での意見などに従って,不適切であるものは削除したり変えたりした。全体としては基本的に変わらないのであるが,それを分かりやすい形に整理したということである。枠組みも多少変更し,前よりも枠の数が減った。
 枠の部分だけ御覧いただくと,例えば12ぺージの1に「基本的な考え方」というのがあるが,これは変わらない。
 13ぺージに,2として「日本人の言語運用能力の在り方」。
 15ぺージの上から4行目に,3として「日本語の国際的な広がりへの対応」とあって,小さな項目として,(1)「日本語の国際的な広がりについての考え方」,続いて16ぺージに(2)として「日本語の国際的な広がりを支援するための方策」という柱がある。
 19ぺージヘ行って,上から9行目に4「外来語の増加や日本語の中での外国語の過度の使用の問題」という柱があって,これについては小見出しというか,括弧で小さな柱が立ててあり,(1)「外来語・外国語の使用の現状,使用の意識について」,そして20ぺージの真ん中ほどに(2)「外来語・外国語の問題を国語施策の上でどのようにとらえるか」というふうになっている。
 そして,20ぺージの下のところに,5として「その他」という項目が立ててある。以前独立した項目になっていた「日本人の姓名のローマ字表記の場合の在り方について」の議論が,ここに含まれている。「その他」という項目にすることについても,まだ議論が完全に煮詰まってはいないが,今はこの形でそこに添えた。
 全体としては,前にも御覧いただいているので,内容的には繰り返して申し上げるのも時間の無駄になってしまうと申し訳ないが,確認の意味で,主なポイントを少しずつ御覧いただいて,報告に代えさせていただこうと思う。
 12ぺージの一番最初の「基本的な考え方」であるが,この柱の中でのポイントを挙げるとすれば,最初の○の2行目辺りから書いてある「日本語を中心としつつ他の言語をも視野に入れた,総合的な言語政策という観点から考えるべきではないか」という考え方。

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