国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 審議状況について2

水谷(第2委員会)主査

 二つ目には,三つ目の○の部分であるが,「言語は文化の基本であり……コミュニケーションにおける効率性の確保だけではなく,国際社会の中で日本語を含めた多様な言語の使われることが,真に活発な交流と相互理解の前提であるという認識に立つべきではないか」ということ。
 三つ目には,その次の○であるが,「国際社会においては,独自の言語・文化をそれぞれが保持することが極めて大切であり,日本語及び日本文化を愛し,その伝統を尊重するという精神を議論の出発点にする必要があるのではないか」。
 今の三つの観点が,「基本的な考え方」の軸になるのではないかと思っている。
 そのほか,説明等があるが,これもやや手は入れたが,前回に出ていたとおりである。
 それから,13ぺージの2の「日本人の言語運用能力の在り方」についてであるが,このことに関しては専門家の方たちにお願いして,日本女子大の井出先生とか国語研究所のメンバーなど,情報収集のためのヒアリングを行う機会を作ったりして,内容を固めていく努力をした。
 運用能力の部分であるが,一番最初の○は,「日本人が国際社会において期待される役割を十分に果たすためには,多くの日本人が国際社会において必要とされる言語運用能力(相手や場面に応じて――目的というのを入れるべきか――自らの意思を言語によって正確に表現・伝達し,かつ言語を通して相手の意思を的確に理解し得る能力)を高めることが不可欠ではないか。このため,外国語によるコミュニケーション能力の向上,日本語能力(特に論理的思考力・表現力)の涵(かん)養,通訳・翻訳能力の向上,についてそれぞれの重要性を認識すべきではないか」。これがまず基本的な考え方だと思う。「ノーと言えない日本人」「顔の見えない日本人」ということが問題にされている国際化の進む現在の日本にとって,あるいは日本人にとって,どのような言語観が求められているかということが,一つの大きな課題になっているかと思う。
 14ぺージの下の方から二つ目の○の部分では,この審議会からの報告は行政的な政策を立案していくための具体的な示唆を出す責任があるかと思うが,それへ向けての一つの在り方として,二つ目のパラグラフから読ませていただくが,「国語科教育と英語科教育とは現在別々に行われているが,教科相互の関連を考慮しつつ,言語としての共通性に着目した分野を国語科教育若しくは英語科教育の中で,一層充実することを考えるべきではないか」。また,異文化の理解についても,日本語と他の言語及びその文化の特質が明らかになるような内容を具体的に考えていく必要があるのではないか。そして,そういう趣旨を理解して,的確に対応し得るような教員の養成を考えるべきではないかというようなことをそこに述べているわけである。
 15ぺージに行って,3番目の柱であるが,「日本語の国際的な広がりへの対応」。さっきも申したが,ここは小さな柱が二つ立っている。
 (1)は「日本語の国際的な広がりについての考え方」で,「「日本語の国際的な広がり」あるいは「日本語の国際化」と言われる現象は次のような側面を持つと考えられる」として,@は,世界における外国人の日本語学習者が急増している。日本語も国際語としての性格を認められる過程にある。A,日本語の中への外来語の流入や外来音の定着といった日本語そのものの変化が進行している。B,数は少ないが,日本語の語彙(い)が諸外国の言語の中に流入しつつある。これは検討する余地が多分あるだろうと思うが,こういったような広がりについての考え方をも示しておくということで,ここに一つのポイントがあると思う。
 次に,具体的な方策を打ち出していくやり方として,16ぺージの(2)に「日本語の国際的な広がりを支援するための方策」。
 その前に,これも大事なポイントだと思うが,今読んだ(2)の前の○,「国際化によって起こる日本語の変化は,必ずしも日本人にとって好ましいものになるとは限らず,日本の言語習慣にはなかったような言い回しなどが氾濫するという意見もある。そうした事態を国際化の当然の結果として受け止めるのか,伝統的な日本語の保持に努めるのかについて,今後各方面で十分議論されることが期待される」。こういう議論をすべきだということをかなり厳しく,繰り返し訴えていくことが,特に国際化のような問題に関しては必要になってくるだろうと個人的には思っている。
 (2)の「日本語の国際的な広がりを支援するための方策」であるが,最初の○は「日本語の国際的な広がりを支援する上で重要な視点として,次のようなものがある」として,@は「日本語教育の推進」,Aは「海外における日本語使用の支援の問題」を挙げている。
 「日本語教育の推進」については,前回までも出ていたし,各界でその問題が指摘されているけれども,二つ目の「海外における日本語使用の支援の問題」というのは,実は私どもの方で新プログラムという大きいプロジェクトを組んで,国際社会における日本語の実態を追究していくという調査をしている。
 その中で,少しずつ分かりかけていることの一つに,日本語を学んだ人たちに対して,それを使うためのチャンスが用意できていない,中国などの場合でも,英語を学んだ人たちが英語を使う場が十分に用意されているのに対して,日本語の場合は十分ではないということがある。こういったことも考えると,日本語を教えるということだけではなくて,実際に使える,使って生かしていけるような環境を作っていくことについての施策というものが大切ではないかということを今感じ始めている。これは報告とは直接関係がないことであるが,そういう問題があるので,やはりこういう項目を入れておくべきであろうと考える。

水谷(第2委員会)主査

 17ぺージの中ほどの「今後」から始まる項であるが,「次の点に重点を置いた日本語教育の施策を推進すべきであろう」という形で,具体的な項目として,@「日本語教育関連機関相互の連携促進と長期的・総合的な施策の推進」,A「日本語教育に対する国民の理解の促進」,B「地域における日本語教育の推進」,C「日本語教育を推進するための支援ネットワークの構築」,次の18ぺージのD「高度情報化に対応した日本語教育の推進」,E「外国人のための日本語辞典の作成の支援」,F「その他」となっているが,こういったことが考えられるだろう。先ほど内容については固まりかけていると申したが,こういったことについては,まだまだ考えられる方策を検討すべきであろうと思っている。
 そのぺージの二つ目の○の終わりの方に,「国際機関や国際会議での会議用語としての,日本語の役割の増大について検討する必要がある」と書いてある。国際会議での言葉,公用語として日本語がどういう役割を果たし得るかということについて真剣に考えるべきであろう。
 例えば,次の○であるが,「日本語を国連の公用語に加えることを,我が国として積極的に主張すべきかどうかについては,今後,各方面で十分議論されることが期待される」。その下に「積極的に主張すべきとの意見」として@,A,Bと挙げている。「慎重に対応すべきとの意見」についても,その後に@,A,Bとして挙げている。
 こういった形で問題提起をしていくということの妥当性も,考え直してみる必要があるかもしれないが,これは世の中ヘアピールしていくための一つの方法ではないかと思っている。
 19ぺージの上から7行目の4の柱であるが,「外来語の増加や日本語の中での外国語の過度の使用の問題」については,「外来語・外国語の使用の現状,使用の意識について」という部分で,下の方に外来語・外国語の増加に対する肯定的な意見の例を列挙したこと,次のぺージには,増加することに対して何らかの歯止めが必要だという意見として@,A,Bを列挙したということ,フランスの例を挙げたということ。
 そして,(2)「外来語・外国語の問題を国語施策の上でどのようにとらえるか」については,それを考える視点を挙げ,二つ目の○のところに「上記のような点を考慮に入れながら,外来語・外国語の使用について,その適否を判断することが大切ではないか。特に,官公庁,マスコミ等の外来語・外国語の使用については,慎重な配慮が必要ではないか」とある。この考え方自体は,前期の審議会から受け継いできているものであるが,ここの部分はこんな形でまとめていけるのではないか。
 最後の5「その他」のところであるが,姓名をローマ字表記する場合に,姓と名のどちらを先にするかということについては,そこに様々な可能性についての考え方を列挙してあるが,一番最後の部分に「この問題は国際社会とのかかわりに配慮しつつ,日本の文化の中でどう考え扱っていくかが大切であり,今後,各方面で十分議論されることが期待される」ということで締めくくっている。
 この国際化への対応に関しては,最初に申し上げたように,恐らく今期に責任を持って打ち出せる範囲というものは限定する必要があって,余り広くしてしまうと責任が持てなくなる。その意味では,もしかすると,これよりももっと絞る必要があるかもしれないなと感じている。絞っていくことについての御意見があれば,それも承りたいと思うが,今一番必要なのは,一つ一つの文の表している内容や表現についての御示唆,こんな方向でやったらどうだ,こういうふうに変えていったらどうだということが承れれば幸いである。
 以上,第2委員会からの報告である。

坂本会長

 ありがとうございました。

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