国語施策・日本語教育

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I 言葉遣いに関すること

4 その他

(1)語彙・語法等の問題

ア いわゆる「ら抜き言葉」
 いわゆる「ら抜き言葉」とは可能の意味の「見られる」「来られる」等を「見れる」「来れる」のように言う言い方のことで,話し言葉の世界では昭和初期から現れ,戦後更に増加したものである。  「ら抜き言葉」 (例:「見れる」)を専ら可能の意味に用い,受身・自発・尊敬(「見られる」)と区別することは合理的であり,五段活用の動詞(例:「読む」) における可能動詞(「読める」)と同様に可能動詞形と認めようとする考え方や,「ら抜き言葉」の増加は可能表現の体系的な変化であり,話し言葉では認めてもよいのではないかという考え方もある。書き言葉においても分野によってはその使用例が報告されている。
 しかしながら,この言い方は現時点ではなお共通語においては誤りとされ,少なくとも新聞等ではほとんど用いられていない。世論調査(平成7年文化庁) においても,「食べられない/食べれない」「来られる/来れる」「考えられない/考えれない」についてどちらを使うかを聞いたところ,3例とも本来の言い方(「食べられない」「来られる」「考えられない」)を使うという答えが,平均7割を上回った。
 国語審議会としては,本来の言い方や変化の事実を示し,共通語においては改まった場での「ら抜き言葉」の使用は現時点では認知しかねるとすべきであろう。さらに, 「ら抜き言葉」については,次のような観点から今後の動向を見守っていく必要があろう。
@  話し言葉か書き言葉かによっても,違う面があること。
A  一段動詞全体のどこまで及ぶか。語形の長さや使用頻度,また,活用形によって,「ら抜き」化の程度が異なると思われること。
B  北陸から中部にかけての地域及び北海道など,従来「ら抜き言葉」を多く使う地域があるといった地域差の問題を考慮する必要があること。また,近年は東京語自体も様々な地域の言葉の流入によって変化しており,「ら抜き言葉」の方がリズムやスピード感があってよいとする声もあること。

イ いわゆる「若者言葉」
 若い世代特有の言葉,いわゆる「若者言葉」は,新鮮で好感の持てるものもあるが,好ましくないものも多い。それらの多くは次々に現れては消えるものであり,仲間内で使われる分には特に問題はないと思われるが,仲間以外の相手や改まった場面で,適切な言葉遣いが無理なくできるよう,学校・家庭・地域社会等の言語環境を整備し,指導していくことが望ましい。

ウ 慣用的な表現や語法のゆれ
 これらのことについては,次のような具体例が話題になった。

@  慣用句の意味・用法のゆれ(「気がおけない」を「信用できない」の意味で使うなど)
A  副詞の意味・用法のゆれ(「やおら」を「素早く」の意味で使うなど)
B  五段活用動詞十使役の助動詞「せる」「させる」のゆれ(「行かせる/行かさせる」など)
C  形容詞の連用修飾のゆれ(「すごく速い/すごい速い」など)
D  形容動詞型の連用形の語形のゆれ(「きれいでない/きれくない」「〜みたいに/〜みたく」など)
E  連濁の有無のゆれ(「サンガイ/サンカイ(三階)」など)
F  並列表現の後の助詞を省略する傾向(「〜たり〜たり」「〜なり〜なり」「〜とか〜とか」などの後の「たり」「なり」「とか」を略すなど)
G  数字の読み方におけるイチニ系・ヒトフタ系のゆれ(「イチダンラク/ヒトダンラク(一段落)」「ミヘヤ/サンヘヤ (三部屋)」など)
H  「助動詞「ない」+すぎる」と「助動詞「ない」+さ+すぎる」のゆれ(「読まなすぎる/読まなさすぎる」 など)
I  「形容詞語幹十め」と「形容詞終止・連体形十め」のゆれ(「熱め/熱いめ」など)
J  格助詞の使用のゆれ(「200メートル走る/200メートルを走る」「1週間経った/1週間が経った」など)
K  動作性の名詞の動詞化(「段取りをする一段取る」など)
L  動作性のない語のサ変動詞化(「主婦する」「家族する」など)
M  「〜べき」「〜のでは」による文終止の増加
N  助数詞の使い分けが行われない傾向(「1歳上」を「1個上」など)

 @〜Dについて,国語審議会は安易に認める姿勢を取るべきではないと思われる。一人一人が言葉遣いについて関心を高め,できるだけ本来の意味・用法等を辞書などで確認する習慣を持つことが必要であろう。
 E〜Mについては,その適否の判断は個人の語感によるところが大きく,中でもK,L等は日本語の造語力の一端との見方もあって,どの程度まで認めていくかの判断が難しい。
 Nの助数詞の使い方については,現代の日本語として使い分ける語を整理して示すことが必要であろう。
工 外来語・外国語・和製英語・省略語
 外来語・外国語の使用は,避けられない場合もあろうが,新奇な片仮名言葉や和製英語,省略語(「アポ」「トラブる」など)は,安易に使わないようにすべきであろう。
 特に,官公庁等においては,その公的,公共的性格から,新奇な片仮名言葉等の使用を避け,平明で的確な言葉遣いに努めるべぎであろう。

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