国語施策・日本語教育

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U 情報化への対応に関すること

2 情報機器の発達とこれからの国語施策の在り方

(2)交ぜ書きの問題

 「補てん」「ばん回」「伴りょ」のように,漢語の一部を仮名書きにするいわゆる交ぜ書きは,文脈によっては読み取りにくかったり,語の意味を把握しにくくさせたりすることもある。これは,情報化の問題というより表記の問題として位置付けられるものであるが,ワープロ等の仮名漢字変換により漢字が簡単に打ち出される現在,情報機器の広範な普及という観点からも,検討されるべきであろう。


ア 交ぜ書きの現状
 交ぜ書きは,戦後,「当用漢字表」(昭和21年)が定められたことに伴い,表外字を含む漢語を書き表す一つの便法として行われてきたものである。
 その後,「当用漢字表」に代わって「常用漢字表」(昭和56年)が定められたが,これは字種の幅を広げるとともに「当用漢字表」の制限的な性格を改めて漢字使用の「目安」としたものであり,また,各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではないことも明記されている。
 「常用漢字表」のこのような趣旨により,公用文等においては専門用語その他必要に応じて表外字を使用することが一般に多くなっており,その際,読みにくいと思われるような場合は振り仮名を用いる等の配慮がなされている。法令については,「法令用語改正要領」(昭和29年内閣法制局,昭和56年一部改正) において「常用漢字表にない漢字を用いた専門用語等であって,他にいいかえることばがなく,しかもかなで書くと理解することができないと認められるようなものについては,その漢字をそのまま用いてこれにふりがなをつける。」としている。
 日常的に交ぜ書きが最も目に触れやすいのは新聞であるが,その新聞においても,現在の紙面に見える交ぜ書きは主として社内原稿(報道記事)に属するもので,社外からの寄稿については括弧内に読み仮名を添えたり,振り仮名を用いたりして元の漢字を残すことが多くなっていると見受けられる。
 また,新聞各社とも表外字のうち「亀,舷,痕,挫,哨,狙」の6字を使用することにしており,社によっては更に「冤,腫,腎,拉」等を使用することとしているが,このような措置によって「き裂」「左げん」 のような交ぜ書きは解消している。
 一般の雑誌や書籍においては,交ぜ書きを見ることは少ない。
 教科書においては,漢語の一部に未習字を含む場合に交ぜ書きが現れる。現行の教科書では,未習字に振り仮名を用いて,交ぜ書きを避ける配慮も見られる。

イ 交ぜ書きに対する考え方
 交ぜ書きも一概に否定することはないが,交ぜ書きによって,読み取りが困難になったり,語の意味が把握しにくくなったりする場合には,言換えなどの工夫や必要に応じて振り仮名を用いて漢字で書くなどの配慮をする必要があろう。ただ,振り仮名を安易に使用することが,難しい漢字を多用する傾向につながっていくのは好ましくないと考えるべきであろう。

 表外字を含む漢語については,現在,交ぜ書きのほかにも下記のような書換えや言換えの方法が行われている。
・同音の漢字で書き換える
  臆測→憶測    蒐集→収集    抜萃→抜粋
・全体を仮名書きにする
  斡旋→あっせん  石鹸→せっけん  澱粉→でんぷん
・別の語に言い換える
  隠蔽→隠す    狭隘→狭い    湧出→わき出る

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