国語施策・日本語教育

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V 国際社会への対応に関すること

1 基本的な認識

(1) 国際化と言語の問題

 日本社会における国際化の進展に伴って,諸外国との交流が広範な分野にわたって日常化し,様々な場面での異文化接触が多くの国民にとっても次第に一般的なものとなりつつある。このような社会の変化は,日本に限らず世界的な現象として共通するものである。
 こうした広い範囲にわたる国際化の現象は,互いに異なる言語・文化を持つ者がいかに意思疎通を図るか,という問題を切実なものにしてきている。このことは優れて言語の問題であると言うことができよう。なぜならば,言語は,異なる言語・文化を持つ他者を,理解するための最も基本的な手掛かりとして位置付けられるからである。
 互いに異なる言語を持つ者がコミュニケーションを図る場合,自分の言語を使用するか,相手の言語を使用するか,あるいは,そのどちらでもない別の言語を使用するか,の三つの形態を取り得るが,現実には英語のような一つの言語を選んで,効率的な異言語文化圏間における共通媒介語とすることが行われてきた。こうした考え方は,今後も有力なものとして存在し続けるものと思われる。
 しかし一方で,国際社会にあっては,それぞれの言語・文化を尊重し,異なった言語・文化の持つ固有の知見や可能性を互いに認め合うことが,当然の前提として求められている。こうした前提に立つことは,国際社会の中で尊重されるべきルールとして,将来にわたって重視されるものと思われる。したがって,国際社会の中で多様な言語の使われることが真に活発な交流と相互理解の前提であるという認識に立つことが必要であろう。
 上記のことは今日の国際化という現象が,効率化と多様化という相反する二つの側面を持ちつつ進展していることを示していると考えられよう。日本語及び日本文化を愛し,その伝統を尊重するという精神を大切にしつつ,この二側面のバランスを考えながら,国際化の問題に取り組んでいくことが議論の大前提となろう。
 以上を踏まえて,「国際社会への対応に関すること」というテーマを検討するには,国語を日本語としてとらえ,日本語を中心としつつ他の言語をも視野に入れた,総合的な言語政策という観点から考えていく必要がある。

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