国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 委員会の設置について3

山口委員

 決まったことに何かを言うというのではなくて,例えば委員会が三つあって,15人ぐらいずつ入るという案はどうして採らなかったのかといつも不思議に思っていたので,この際,ちょっと伺っておきたいなと思う。説明いただければと思う。

大島国語課長

 前期の第20期においても,第1委員会と第2委員会を設置していただき,その際にも御希望のある方はお寄せいただきたいということで,それを考慮して振り分けたわけである。結果的に,それぞれ12人から15人ぐらいの委員会になったという経過がある。
 三つのグループというか,三つの委員会を作って,45名だから,それぞれ15人ずつというのも確かに一つのやり方としてあると思うけれども,第20期においても,一つは言葉遣いの問題を担当する第1委員会,それから情報化・国際化の問題を担当する第2委員会,この二つの委員会を設置していただくことをお決めていただいて,御希望を踏まえて,それぞれに12名,15名の委員会の所属が決まったという経過だったと思っている。

清水会長

 これまでも,このようにして,御希望が大体この程度来たというような経緯があるようだけれども,もちろん全員の皆様方からどちらかに御希望をちょうだいできれば,また,それなりのやり方もあるかと思うので,できるだけ積極的に委員会の方に御参加いただくということはいいことだろうと思う。

松岡委員

 委員会を一つ,ニつ,三つと作る方向で御意見が出たけれども,ちょっと単純な疑問が生じたので伺いたい。この20期の経過報告を拝見すると,目次に「言葉遣いに関すること」「情報化への対応に関すること」「国際社会への対応に関すること」と三つある。第1委員会ではこの目次のT,第2委員会ではUということで,Vがどっちに入るのかなという感じがする。
 実は,Vの一番最後のところに姓名のローマ字表記の問題がある。私は個人的に,この問題にも結構関心がある。英語でぺーパーを書いたり発表したりというときに,私は個人的には姓・名の順で書いてきており,それこそ,これからインターネットで世界的に通信をやり取りするということになってくると,この問題は基準を割に早めに出した方がいいのではないかなという気がする。だから,3番目は第1と第2にどういうふうに振り分けるのか,ちょっと疑問を感じたのである。

清水会長

 これは,第1委員会がIとVというふうにお考えいただいて,先ほどもお話があったように,もし必要なら,更に第3の委員会をそこで作っていくということも当然考えていいんじゃないかと思う。

大島国語課長

 第20期の審議では,Vは第2委員会の中で御議論いただいたわけであるが,ローマ字の姓名をどういう順番で書くかということは,それぞれ両論を併記した形で,そのことについて国民の皆さんに大いに御議論いただきたいということで終わっている。今期もこの問題について,もし取り上げるとしたら,第2委員会が字体の委員会ということなので,第1委員会ということになろうかと思うが,20期の御議論の中では,これは一つの慣習の問題であって,国語審議会として,こうしよう,ああしようというふうに言える問題かどうかという御意見もあった。
 だから,理屈の上では,いわゆる受け皿は第1委員会になろうかと思うが,第1委員会でそれを議題として正面切って取り上げるかどうかということになると,今の段階では何とも言えないなというのが正直なところである。

今泉委員

 私も19期,20期とやってきたけれども,何委員会にも属していない。要するに,ああ,そういうふうに決まったんだな,皆さんやってくれるなということである。確かに委員会の通知は来る。自由に出席できますというのは来るけれども,おれは委員じゃないのに,わざわざ出ていくことはないな,というのが楽であるということになる。
 そこで,まず一つは,どちらの委員会にというのは出さなくてはいけないものか,二つ目に,これを出した人を何によって選ぶのかを伺いたい。出さない人は入らなくていいということであれば,出さない方がいいかなというのが,実は私の正直なところである。

大島国語課長

 選択肢としては,第1委員会への所属を希望します,第2委員会への所属を希望します,両方の所属を希望しませんという三者が,もちろんあり得るわけである。選択に当たっては,いろいろな御自身の御日程とか,そういうものもおありの中で,かなり無理をお願いして委員として御就任いただけるという方もたくさんいらっしゃるし,両委員会への希望はあるけれども,出席は無理であるとか,いろいろな御事情があると思う。そういうものを総合的に勘案していただいて,所属を希望する委員会があったら○を付けていただくということで,もし御希望なさらないということであれば,特に事務局の方にお申し出いただく必要はない。

宇治委員

 私もマスコミの人間だが,ちょっと議論を伺っていて思ったことがある。
 各論の部分の議論として,例えば「ら抜き言葉」とか,「超何とか」 とか,日本の国語というものが,今,確かにゆれているということは皆さん認識としてお持ちだと思うけれども,そういうゆれは,国語審議会でいかに縛っても,時代の流れの中でどうにもならないものだという認識に立つのか,ある程度正しい日本語というか,美しい日本語のために,国語審議会が,これはどうであろうかという一つの目安を出していくのがいいのかという議論になると思う。
 私は,どちらかというと後者を採るべきだと思っているが,そういう日本語の総論の部分について,これまでのゆれや最近のゆれの検証も含めてやっていくということであるとすれば,私は,個人的関心としては,そちらの方をやってみたいなと思う。
 さっき浅野委員がおっしゃったように,マスコミの側からすると,特に新聞社の場合はどうしてもワープロ用語用字には関心を持っているが,そこへ本当に業界でみんな入るのがいいのかということになると,私も疑問を持っている。
 そういう意味では,敬語の問題も非常に大事だと思うし,ワープロ用字も大事だと思うけれども,これまでも議論されてきたのであろうが,正しい日本語とはどういうものかという総論部分の理念とか,歴史的過程とか,そういう部分について検討する委員会があるとすれば――今,場合によっては第3委員会を設けるということであったけれども――そういう委員会があれば,そういう委員会を最初から希望される方もいらっしゃるんじゃないかと思う。

秋岡委員

 私もマスコミの一員だが,今のお話にちょっと触発されて考えたことは,国語審議会の権限というか,性格というようなものについてである。私の認識が誤っていれば御指摘いただきたいが,今おっしゃったお話は,字体と言葉遣いとを分けて考えるべきものではないかと思う。
 言葉遣いに関して,「目安」「よりどころ」「ゆるやかな」というのは,この前,江藤委員か,どなたかが反発されていたけれども,私は「目安」「よりどころ」でいいだろうと思う。
 ただ,字体に関して,とりわけ不快なのは,あるいは不審なのは,私自身が素人で分からなかったが,略体のJIS漢字がなぜ出てきてしまったのかということである。それは, 国語審議会というものの性格が非常にあいまいであるという根源的な問題が根っこにあるのではないか。この辺の私の認識が誤りであれば,御指摘あるいは教えていただきたいのだが,つまり康熙字典体を本則とすると言った場合に,少なくとも官,つまり通産省なりエ業技術院なりはそれを守るべきである。私ども新聞社は,それぞれ勝手な字体をというのは許されるのかどうか分からないが,ある程度自由であろう。しかし,NHKも含めて,官は,恐らく国語審議会の経過を十分に踏まえなければいけないのではないかと思うが,その辺は認識が違うのであろうか。

大島国語課長

 若干のお時間をいただきたい。お手元に「国語審議会答申・建議集」という資料を配布させていただいている。その248ぺージをお開きいただきたいと思う。
 これは昭和56年の「常用漢字表について」という答申の一部で,字体に関する記述もある。248ぺージから249ぺージである。そして,この答申は内閣告示・訓令という形で,少なくとも内閣訓令という各役所を縛る拘束力のあるものになる基になる答申である。
 249ぺージの段落の2番目に,「なお,明治以来行われてきた活字の字体とのつながりを示すために,いわゆる康熙字典体の活字を適宜括弧に入れて掲げた。」と書かれている。これは常用漢字表の漢字について,いわゆる康熙字典体の活字を適宜括弧に入れて掲げたことを説明したものである。
 次に,「常用漢字表に掲げていない漢字の字体に対して,新たに,表内の漢字の字体に準じた整理を及ぼすかどうかの問題については,当面,特定の方向を示さず,各分野における慎重な検討にまつこととした。」 としている。このようにして,国語審議会自身が,常用漢字表以外の漢字については字体の基準を示さなかったという経過がある。
 そして,301ぺージ,これは第20期の審議経過報告の中にあるものだが,「ワープロ等における漢字の字体の問題」の(1)「混乱の現状」の@を御覧いただきたい。「情報交換用漢字符号」ということで,一般にJIS漢字と言われているものであるが,6,355字ある。これは常用漢字表の1,945字を4,000字ぐらい上回っている漢字の表であるけれども,いわゆる常用漢字表の表外字については, 国語審議会としては特に基準を定めてこなかった。その中で,各分野でいろいろな検討がなされて,JISについては,昭和58年のJISの改正の時点で,いわゆる康熙字典体というものではない略体が採用され,ワープロパソコンから辞書で引けない漢字の字体が出るようになったということである。
 さらに,ワープロ・パソコンの急速な普及というものが近年あったので,そのワープロ・パソコンから打ち出される漢字の字体が.直接国民の国語の表記に大きな影響を及ぼすようになった。そういう観点から御審議をいただく必要があるだろうということになったわけで,国語審議会自体が基準を定めてこなかったという辺りが,今のいろんな字体が並び行われている一つの原因になっているということは言えると思う。

秋岡委員

 それには制度的な問題があるのかなという感じがする。つまり,国語の基準を作るときに,法務省も通産省もそれぞれが漢字というものの字体を定めるということに――法律的にはそれなりの根拠があるのであろうが――根源的な問題があるのではなかろうかという気がした。ここで議論して,康熙字典体が望ましいよ,本則だよと言っても,JISは知りませんよということになるのではなかろうか。

江藤副会長

 今の秋岡委員のお話というのは非常に鋭いと思う。私は17期から国語審議会委員をしている。17期,18期まで,国語審議会は何をやっていたかというと,これは昭和41年に大臣から諮問があったことに基づき,表記の問題を延々とやっていたわけである。その間に,常用漢字表というものも当用漢字表から改められたものとして出てきているわけである。私がやった17期,18期というのは,外来語表記の問題に2期費やした。
 ところが,その間,国語審議会が国語を取り巻く環境が激変することを全く想定しないでやってきたにもかかわらず,現実には例えば昭和58年のJIS規格改正に伴う現象が出てきたわけである。これは大変だ,それに対応しようということで,外来語表記が一段落した第19期には,国語の現状を見渡して問題点を洗い出し,それに関して何十年ぶりかに大臣の諮問が行われたのが第20期冒頭である。これをどう考えるか。つまり第19期で,どこかのダムか湖みたいなやつがぽかんとあって,合切袋で,一体どんな現状になっているんだろうということでやったわけである。それで,問題は多分こういうことじゃないかというので,20期になって,先ほどからいろいろ御批判が出ている言葉遣い,情報化,国際化,三つぐらいにだんだん流れが分かれてきた。
 そして,ここへ来て,両岸がかなりはっきりしてきたというか,流れの速度も付いてきて,こんなことをしていてはだめじゃないかというおしかりがいろいろ出ているわけである。私は,これは非常に自然な流れで来ていると思う。しかし,自然な流れで来ているけれども,横を見たら対応できないままに別のものが出てしまっている。そこに恐らく秋岡委員が御指摘の制度的なものもないとは言えないと思うのである。私,副会長の身でそんなことを言っていいかどうか分からないけれども。
 だから,国語は国語審議会,人名漢字は法務省,JIS漢字は通産省だ,エ業技術院だと言っていたらどうしようもないということを私は随分言ってきて,それでやっと取り組むことになったのである。康熙字典体を本則としてというので, やっと今巻き返そうとしているのではないか。少なくとも官は国語審議会の示すとおりやれよと21期ではどさっと言いたいところではないか。それは新聞社もある程度斟(しん)酌してくださらないと困るんじゃないか。

井上委員

 かねがね疑問に思っていたことであるが,今も話に出た通産省とか法務省の関係者と国語審議会との関係がどうなっているのか。この委員には,内閣法制次長の方がいらっしゃるが,通産省,法務省の人は入っていない。
 質問は二つである。一は,オブザーバーとしての出席を要請しているのか,もう一つは,審議会の委員にほかの省の者はなれないのかということであるけれども,いかがか。

大島国語課長

 通産省のJIS漢字を担当しているのは情報電気規格課というところであるが,審議の状況については,もちろん非常に関心を持っていただいており,担当者同士はよく情報を交換し合っている。そして向こうのサイドでは,国語審議会の審議のために必要なJIS関係の資料は全部出すということ,それから,国語審議会の審議によってJIS規格を改正する必要が生じれば,それは必要に応じて対応するという話は担当者レベルでは聞いている。しかし,具体的に,会議にオブザーバーとして出席するようにという要請はしたことはない。法務省に対しても同じである。
 それから,審議会のメンバーでよく話題になるのは,官庁OBの人が多いじゃないか,そういうものはおかしいじゃないかということであるが,国語審議会については,従来法令用語,公用文というところに大きく関係する御審議をいただいているので,内閣法制局の代表の方に委員に加わっていただいており,事柄に応じて,役所の関係者も委員になるということを排除するものではないというふうに理解している。

井上委員

 それでは提案する。審議会委員に私の代わりに入ってもらう方がずっといいんじゃないかと思うが,そんな御苦労は掛けたくないので,せめてオブザーバーとしての出席を要請するのはお願いしたいと思う。実務に携わるジャストシステムとか,富士通とか,その方がいらっしゃりはするものの,やはり通産省の人には出ていただきたいと思う。この審議会で,某氏がこういうことを言ったとか,大勢としてはこんな意見が出たということは,かなり重要だと思うので,実務者レベルでの間接的な話合いよりは,ここに実際に出てくださることがいいと思う。JIS漢字は,本当に今大変な問題だし,急を要する問題なので,是非お願いしたいと思う。

三次委員

 今,たまたま浮川委員と私の名前が出たので,感じたことを申し上げたいと思う。
 一つは,先ほど課長がお読みになった資料の中にもあったけれども,「常用漢字表に掲げていない漢字の字体に対して」云々とあって,「当面,特定の方向を示さず,各分野における慎重な検討にまつ」というのは,当時としては正しかったと思うが,その後相当時間もたっているし,これは日本のいいところだと思うのだが,教育が非常に普及して,略字体の書き方というのが決められていない分野にまで,相当広がってしまっているのではないか。国語審議会で扱ってきたのは,古くは当用漢字,新しくは常用漢字,その限りであるが,その他については決まっていない。康熙字典体ということで決めている業界もあるが,必ずしもそういう業界ばかりではない。そういう状況の中で,当用漢字のように簡略化された漢字の方が書きやすいということもあり,それが世の中に広まってくる。
 JISの方は,世の中にある文字を引っ張ってくるから,そういった文字がいつの間にかJISに入ってしまう。そういうようなことが,時間の経過でだんだん出てきてしまったと思う。だから,決められるものならどこかで決めることが,将来の混乱を防ぐという点では必要だと思う。一,ニ年ではなくて,10年単位の時間であるから,相当広まってしまうと思う。
 例えば,前期において,医学関係の用語辞典を編纂(さん)されている先生のお話を聞いたが,医学用語では「頚」という字も簡略化した書き方(「頚」)になっていて,本来の字は出てこないということである。国語審議会のスピードが世の中と歩調を合わせていくということも非常に大切ではないか。

前田(富)委員

 先ほど申し上げたことにかかわるけれども,今のようなお話になってきたので,ちょっと付け加えさせていただく。
 当用漢字の字体を決めたときに,その根拠がはっきりと示されていない。その資料が出されていない。それで私などよそから見ていて,後から疑問に思うところがいろいろあって,当用漢字を制定する時の委員だった方に,そういうふうなことをきちんとした形でどうして示さなかったのか,十分な例を集めて検討していないんじゃないかというふうに実は申したのである。その方は,いや,それなりに一生懸命やったんだという話をなさっていたけれども,外に見える形では出ていない。ということは,当用漢字の字体として決められた精神というか,方針というものが,例をもって示されていなかったところに,後の枠外のものが非常に恣意的な形になってきた理由があったと思うのである。
 だから,今度のこういう問題については,先ほど言ったように,やはりはっきりとした資料をもって,根拠をもって,こう定めたというふうなところが少なくとも内部的にははっきりしていて,それをどこまで外に出せるかということは後の問題として,やはり資料というふうなもの,根拠というふうなものが必要ではないか。何かを決めるに当たっては,そういったことをやはりきちっとしておく必要があるのではないかというふうに私は思って,先ほどのようなことを申した次第で,余分に付け加えさせていただいた。

清水会長

 いろいろと御意見をいただいて,国語審議会が方針,例示をきっちり出すということは,先ほど中学校の問題も出てきたけれども,大変大事なことであり,言葉遣いも含め,日本語の標準を示す大事な役割をここが持っているというふうに私は思う。
 世の中の変化のスピードの方が速かったものだから,遅ればせながらここまで来たという感じがするが,この21期では,少なくとも第2委員会では,さっき申し上げたように,はっきりした答申が欲しいということである。また第1委員会についても,いろんな問題が絡んでいるけれども,これからの方向付けをどうきっちりしていくのかということについては,何かしっかりしたものを出したいと思う。そういう意味で,この二つの委員会をよろしくお願い申し上げたいと思う。
 ほかに特に御意見がなければ,この辺で二つの委員会を発足させることとし,先ほど申し上げたように,委員構成については私どもにお任せいただければ有り難いというふうに思うので,よろしくお願い申し上げる。
 それで,御希望は,できるだけ早くいただきたいということで,先ほどお話し申し上げたように,資料の一番後の方にお申出をいただく用紙が入っている。実はこれを,できれば9月中に発足させたいというふうに考えていて,御希望は9月24日までにちょうだいできれば有り難いということである。電話でもファックスでも結構であるので,お申し出いただければと思う。そして,10月に第1回の委員会を,早々に開催したいと考えている。
 それでは,この二つの委員会を発足させることについて,総会として御了承を得たということでよろしいか。
 委員の選考については,今申し上げたような経緯を経て,指名させていただきたいということも御了承いただきたいと思う。

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