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次第・議事要録 第2委員会における論議の概要について2

水谷(第2委員)主査

 「イ 新たな略字化を考える場合」には,具体的にはどうなるか。

 字画の一部分(@くさかんむり,Aしめすへん,B食へん,Cしんにゅう)は表外字もすべて統一する。ただし,それを代表字体として,それ以外の字体も許容する。

 この辺りのところは,後ほどの説明で具体例を見ていただきながら,御理解いただきたいと思う。
 この類の問題点はもっとたくさんあるので,このことについては,恐らく次回の総会で,ワーキンググループでの検討を踏まえた上で更なる内容を用意した御報告ができるかと考えている。
 新たな略字化を考える場合に,「くさかんむり」は,常用漢字の中では3画になっているが,十を二つ並べた4画の「くさかんむり」はどうするのか,それから「食へん」はどうだ,2点の「しんにゅう」はどうだといった問題がある。資料3にあるような文字群の検討作業を始める前には,JISでは「2点しんにゅう」はそんなに多くないのではないかと思っていたのだが,実際に見ていくと,「2点しんにゅう」の康熙字典体は意外に多く採られているんだということを感じている。どんな問題にも言えるのだろうが,個々の人間が想定することと実態の間にはかなりの差があるということを謙虚に見詰めながら,作業を進めなければならないと思っている。イの二つ目と三つ目の○については説明を省略させていただく。
 「ウ 新たな略字化は考えない場合」。これは非常にはっきりしているが,「康熙字典体を本則とし,略字体については現行のJIS規格や新聞などで用いられているものに限っては許容する。」という第20期の報告以来の行き方である。これとは別にそこには書いていないけれども,一切許容しないで,JISも新聞の場合も全部康熙字典体に戻ってくださいということも,可能性としてはある。しかし,その場合にはそれを決めるためのきちんとした理屈を用意する必要があるだろうと思う。
 「(3)代表字体の提示」。これらの法則,決まりを提示する場合に,どのような方法で示すか。(1),(2)にあることを確定した上で,具体的な字形によって示すことになるわけだが,それがゴシック体なのか,明朝体なのか,教科書体なのかというような書体に関連する問題が残る。明朝体なら明朝体を使って示したとしても,あるいはもっと極端に言って,細い線のようないわゆる等線体で示したとしても,具体的に示されるものは抽象的なものとは違うので,字形に関して具体的な影響を及ぼすことも十分考えられる。文字素といった概念と目に見える具体的な文字の形によって示されるものとの間には差がある。この問題についても慎重な配慮をして,示す手段を選択しなければならないだろうと考えている。
 それでは,この後,多分5分ほど時間をいただいて,先ほど申し上げたJISの漢字の実態について御報告を続けさせていただく。

小林(第2委員会)副主査

 それでは,字体について御説明申し上げる。資料3のプリントをお手元に御用意いただきたい。
 資料3の1枚目,夕イトルは「JIS漢字における「()←→()」等の扱いについて」と書いてあるが,これはこれから御説明申し上げる事柄の一つを代表としてタイトルにしてあるにすぎないので, 誤解のないようにお願いする。
 1枚目は,具体的にどこに掲げられているものであるかということを見ていただくために,お手元の冊子のうち,「漢字字体関係参考資料集」の「JIS情報交換用漢字符号(第2分冊)」の22ぺージを御覧いただきたい。1枚目と同じものが22ぺージに掲げられている。
 次に,プリントの2枚目以降を御覧いただくと,「くさかんむり」「しめすへん」「しんにゅう」「食へん」の四つのプリントが用意されている。これは別の冊子「JIS情報交換用漢字符号(第1分冊)」の方に載っているものである。
 まず,気になる「しんにゅう」のところを開けていただきたいのだが,それは64ぺージ,真ん中下のところに載っている。前後には,ほかのへんの字が載っているわけだが,162番という番号が付いている「しんにゅう」の部分に御注目いただきい。
 先ほど主査から説明申し上げたプリントの2ぺージ目の下に,「2 代表字体の選定にかかわること」とあり,「(1)選定の方針にかかわること」の「@JIS漢字の位置付け及び扱い」のアのところに「JIS規格で問題となる漢字の確認(第2次規格(昭和58年)での字形変更との関係等)」とある。このことにかかわるのは, 資料3の1ぺージ目,第2分冊で見ていただくと22ぺージの6.6.4というところに「過去の規格との互換性を維持するための包摂規準」として掲げられた29字種が端的な例である。ここにある文字群をお目に掛けることで,皆さんに私どもがこういうことを頭に入れながら検討しているということをお知らせしたいと思う。

小林(第2委員会)副主査

 そのぺージを見ていくと,四角で囲ってある字が右と左に略体と正体とが並ぶ形で29字取り上げた表になっている。特に左側3字目のところに, 問題になっている「鴎」と「」が載っているが,これを取り上げて,この表がどういうふうに作られているかということをお知らせしたい。左側すなわち(A)の行に「鴎」が載っており,右側にすなわち(B)の行に「」が載っているが,更にその右側に小さな字で「鴎」とあり,上に「18-10」となっている。これは,この字がJIS規格の中で18区の10字目のところに載っているということで,この6.6.4の説明を見ると,上から4行目のところに「さらに,次のそれぞれの(B)に示す字体の漢字も,その区点位置に対応する。」とある。これはどういうことなのかということをお話し申し上げる。
 つまり,ワープロ,パソコン等で「かもめ」と打つと「鴎」で出てくるのだが,これは,昭和58年(1983年)の第2次規格で「鴎」の字体を採用したからである。左側の29字はすべて同様に略体が採用されている。これらは昭和53年(1978年)の第1次規格では「」等右側の字体で載っていたものである。「鴎」を代表として言えば,昭和53年には正体で載っていた「」を昭和58年に略体を採用して「鴎」に変えて,載せたということで,そこにある29字も同様である。したがって,ワープロを打つと,「」で出ないで「鴎」で出てくるということで,しばしば問題になってきて,議論になってきたということである。
 要するに,「(B)に示す字体の漢字も,その区点位置に対応する。」ということの理解は,「鴎」が出てくるけれども,この「鴎」に「」も包摂されている,実は同じコード番号が振られているということなのである。第2次規格の時に「」から「鴎」の形に変えて載せたのは,そういう考え方で説明されるということである。したがって,両方出ないで片方しか出ない,片方しか出ないけれども,「鴎」の方が「」を含んでいるという理解になるということである。そういうふうに説明をしているわけである。
 私どもは,前の20期の検討以来の,例えば「」と「鴎」とが両方出てくれば問題ないのだがというような考え方を受けながら,今どうすべきかということを検討しているというふうに御理解いただければよろしいかと思う。それが主査が2の(1)のアのところで御説明申し上げたことになる。
 続いて,資料2の3ぺージ目,(2)のイのところで「新たに略字化を考える場合」として示された「字画の一部分(@くさかんむり,Aしめすへん,B食へん,Cしんにゅう)」とかかわるものが,JISの第1水準,第2水準ではどんなふうに出てきているか,目で追っていただくために,資料3の2枚目以下のプリントができているわけである。JISの第3次規格から抜き出したわけである。最初に「しんにゅう」のところを御覧いただく。資料3だと2枚目,広げていただいている冊子だと,第1分冊の64ぺージであるが,162番ということで「しんにゅう」が載っている。
 これを皆さんに眺めていただきたいのであるが,プリントの方だと,氏原調査官の作業によって,○で囲ってあったり,×が付けてあったり,●が付けてあったりして,分かりやすいと思う。第1水準,第2水準の漢字が一覧表になって掲げられているが,その中で●が付いているのは常用漢字表内の字で,御覧のように「1点しんにゅう」になっている。字全体が○で囲ってあるものは,表外字であるけれども,第2次規格(1983年)の時に略体化され,「1点しんにゅう」に変えられたものである。これら○で囲ってあるものは第1水準の字であり,第2水準にある「しんにゅう」は,すべて「2点しんにゅう」であるという状況を目で追って御確認いただきたいと思う。
 そこで,文脈をちょっと外すが,「しんにゅう」の表の左上2字目の「辺」という字を御覧いただきたい。つくりの部分は常用漢字表と同様「刀」になっているが,一番下側の列の右側から2字目には正体の「邊」が入っているということが確認できる。正体であるから,「2点しんにゅう」。さらに, 同じ行の右から4字目には,異体の「邉」も入っているということを御確認いただきたい。したがって,ワープロの中には,常用漢字表内字の「1点しんにゅう」の「辺」,そのほかに正体及びその異体の「2点しんにゅう」の2字も入っている。こういう形であれば自分の望むものが出てくるということになる。
 下の「食へん」を御覧いただくと,同様に,へんの形が,表内字の場合は「」,表外字の場合には○で囲った字以外は「」の形であることが目で追って御確認いただけると思う。○で囲った3字はいずれも第1水準内の字である。こういう形で両方の「食へん」が入っているということである。これを全部統一してしまうか,どうするのか,このままでいいのか等を検討しているということである。
 「くさかんむり」については,プリントの2枚目のところに出ている。
 これを見ていくと,「くさかんむり」は,初めから終わりまで画数で言えば3画で出ているということが確認できるかと思う。現在,辞書では正体の4画で書くものを掲げているけれども,明朝体活宇として一般に出てくるものは,明治以来,3画になっているのが通例である。そういう実態に倣っているということも,これで確認できるということである。もし表外字の「くさかんむり」は4画にするということだと,全部作り直すということになり,通例を破るということになるわけである。こういう状況も確認できるかと思う。
 なお,次の「しめすへん」についても,目で追って,どういう具合になっているかということを御確認願いたいと思う。
 多少時間を超過したが,こういう資料を見ながら,第2委員会では具体的に検討を進めているということを御報告申し上げた。

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