国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 協議

清水会長

 大変難しい事柄を,一つ一つ洗っていただいているというのが実情であるけれども,このことについて何か御質問,また御意見があれば,伺わせていただきたいと思う。

井上委員

 この審議会は文部省に所属するものであるが,通産省の方にもおいでいただいて,大変有り難いと思う。それから,法務省関係の方も御出席であろうが,同じ日本政府の中で,幾つかの省庁が漢字政策にかかわっているわけである。ローマ字まで入れると外務省までかかわるけれども,ここでは言及しないことにする。
 漢字について,今,通産省のJIS規格を基にして国語審議会で審議しているわけであるが,同じ文部省の中でも,大学局の中では,御存じと思うが,東大と京大で,少なくとも日本で使われているすべての漢字を異体字まで含めてコードを付けようとしているわけである。それとJISとの関係がどうもよく分からないのだが,今の「1点しんにゅう」,「2点しんにゅう」,「くさかんむり」がどうのこうのというのは,そもそも情報交換用として,大学の研究機関としては別のコードを与えられるべきものなのである。
 法務省の方でも,戸籍について,個人の好みとでも言うのか,その家の伝統を電子計算機の上にも反映させようとしているわけで,どうしても「1点しんにゅう」,「2点しんにゅう」についても別の記号を与えざるを得ない状態になっていると思う。
 通産省の方ではどう動くか,JISの方ではどう動くか,よく分からないけれども,残念なことに国語審議会は大変無力で,JIS規格でどうするかによって,我々の意見がかなり変わってくるのではないかと思う。
 今のことをもう一度別の観点から申すと,電子計算機が普及したおかげで,コードの付け方については,日本の国内ではすべての異体字にコードを振ろうという動きがあるし,前にも申し上げたが,ISO(国際標準化機構)でも同じようにすべての字体にコードを与えようとしているわけである。そういう動きがあるということを踏まえた上で,国語審議会でもどれを選ぶかということを考えるべきじゃないかと思う。これは大きな観点であるけれども。
 それから,通産省との関係で申し上げたいのだけれども,今回のJIS規格は大変検索もしやすくなったが,同じという意味で,繰り返すときに「々」というのを書くけれども,ワープロでは「どう」を打つと,その文字がさっと変換されたりする。それから「〃」という繰り返しのもあるけれども,それも「どう」を打つと,すぐ出てくるのだけれども,JISの方ではそんなことは考えない。ワープロメーカーが工夫しても,政府の機関では採用しないようである。
 もう一度,国語審議会の話題に戻すと,我々が文字としてとらえているもののうち,ローマ字は一応国語審議会の議題になって,仮名についても議題になった。ここで論じている漢字であるが,漢字との間に記号があって,「々」というのは漢字なのかどうか,それから「ヶ」が漢字なのかということがはっきりしない。だから,学校教育なんかでも,あれは漢字でないから使うなと言ったりしているわけである。前にも申し上げたことの繰り返しであるが,それも第2委員会では考慮していただけるのか。国語審議会で何も言っていないから使うべきじゃない,禁じられているんだ,そんなふうにとる動きもあるので,配慮していただきたいと思う。

江藤副会長

 今,井上委員がおっしゃったことは大変大事なことだと思う。国語審議会や,関連省庁がそれぞれやっていらっしゃるだろうけれども,日本の国語政策の中心に位置する審議会であるならば,ここではたまたまJIS規格にのっとって,非常な御苦労の上いろいろお調べいただいたことの中間的な御報告をいただいたわけであるけれども,なかんずく,大学局とおっしゃったか,すべての異体字を含めてコード化するという東大,京大の試みは非常に大事なことで,それは主査がおっしゃった2枚目の国際社会との関係というところに直接かかわってくる問題である。漢字を使用して国語を表記している日本人としては,やはり東大,京大のやっていらっしゃることも併せて視野に入れながら,この問題を見据えざるを得ないのではないか。通産省においでいただいて,ここでの審議の細かいところまでくみ取っていただいているのは大変うれしいことだと思うけれども,今大学で行われている試みは非常に重要なことだと思う。
 つまり,私どもが使える文字が,国際的に,外側から一方的に切られてしまうおそれがあると私は理解しており,そうであってはならないと思う。やはり略体を定めるにしても,それは国民的合意の上でやらなければいけない。そのための私どもの審議会であると考えると,これは第2委員会の御苦労に更に重荷を背負わせるようなことになるけれども,そこは是非ひとつおくみ取りいただきたいとお願いしたい。

大島国語課長

 井上委員の先ほどのお話について,事務局として少し補足的な御説明をさせていただきたいと思う。今のJISサイドの動きとして,先ほど法務省の戸籍に使われる文字云々というふうなお話があったけれども,第3水準,第4水準というものを考える際には,およそ日本で現在生きている方の使われている姓名の漢字については,網羅的にコードを振って,情報交換できるようにしたいというようなお考えで動かれていると承知をしている。
 それから,先ほど先生が一つの例として「々」(同の字点)のことをおっしゃったわけだが,それもJIS規格としてコードが振られているので,そのコードを介してコンピュータ同士でやり取りする,あるいはコンピュータの中で処理することができる。JlSのサイドとしては,世の中に存在する漢字なり記号について情報交換用に必要な限りコード振ろうということで,そういう範囲を広げようとしている。井上委員が以前おっしゃった丸付き数字も,第3水準,第4水準の中では取り人れるように,御工夫になるような話を伺っている。
 それから,国語審議会が字体の問題を考えるに当たって,JISの方で考えが打ち出されてきたら,それに影響を受けざるを得ないということもおっしゃったかと思うが,私どもは逆に考えていて,JISの方では,字体を特に決めようということではなくて,ある漢字についてコードを振るまでがJISの役割である。字体を決めるということは,こちらの国語審議会の役割ではないか。それで,JISの担当課とも話をしているのだが,国語審議会の方でこういう字体に決めるべきだということが一つの方針として出されるならば,JISとしては国語審議会の意見を尊重して,必要に応じてJIS規格に示されている字体を変えていきたいという話も伺っているところである。補足説明をさせていただいた。

清水会長

 そういう意味では,JISがどうだからというのではなくて,やはり国語審議会としてそれなりの権威を持って決めていくということだと思うので,どうぞひとつよろしくお願いしたいと思う。
 ほかにどうぞ。

山口委員

 初歩的な質問をさせていただきたいのだけれども,この資料を見ると,「くさかんむり」は一斉に全部3画になってしまっているが,なぜこんなにきれいに変わっているのか。ほかの「しんにゅう」とか,「食へん」とか,「しめすへん」は2種類ずつあるけれども,「くさかんむり」がなぜこんなにきれいに変わったのか,まず一つ教えていただきたいと思う。

小林(第2委員会)副主査

 先ほど触れたように,明治以来,「くさかんむり」は活字として3画が使われ続けている。ただし,辞書ではもちろん正体として4画で掲げるものが多いということである。だから,ある字体の使われ方の一つの習慣がここにもはっきり表れてきているというふうに御理解いただければよろしいかと思う。ほかのものについては,本来,「しめすへん」は「示」というのが正体の文字である。それを筆記体で書くときには「ネ」の字の形になる。それを大正の「漢字整理案」や,昭和の「漢字字体整理案」を作るときに,幾つかの日常使用の頻度の高いものについては「ネ」で書く形のものを許容し,戦後,当用漢字表では「ネ」で書く略体を採用したという流れがあって,使用頻度の高いもの,目慣れのあるものは「ネ」の形になる。「食へん」についてもそのように理解をしているわけである。

山口委員

 そうすると,「くさかんむり」はすべてこういうふうになっているとか,「しんにゅう」もすべて「1点しんにゅう」でよろしいとか,「食へん」はすべてこうなっているというと,書く方や使う方から言うと,有り難いのだが,そんな意見は言ってもよろしいのだろうか。

小林(第2委員会)副主査

 言うことは幾らでも自由であるけれども,そこら辺から,いわゆる手書きの場合とか,辞書収載とか,頻度の問題とか,使用習慣の問題とか,いろんな要素が絡んでくるので,単純に全部なびいて,筆写の場合の文字の形にしてしまうというようなことは簡単には行かないところがあり,その辺を今慎重に1字1字検討しているということである。

水谷(第2委員会)主査

 「くさかんむり」の問題も,実は仕事にかかるまでは,活字は恐らくみんな4画でやっているだろうというのが私たちの意識で,3画の活字がこれほど一般化しているとは思わなかった。辞書には実際に4画で出ているし,学校教育の場でも,先生たちは4画のを書いたりしながら説明することもあるだろうと思う。もともとはこうだということを踏まえた上で行かなければいけない。しかも,今の「しんにゅう」なり,「くさかんむり」なり,それぞれについてみんな違う歴史を持っている。みんな違う感覚を持っている。期待度が違う。それでどうやって共通のルールを作るか,これは大変だということである。
 それから,井上委員と江藤委員には大変いい御助言をいただき,感謝申し上げる。第2委員会としては,これ以外のことは何もやらないという考え方はないので,先ほどの「々」のような記号類の問題もどこかで取り上げて,全体像を見ていきたいと思うし,国際化に対応する姿勢についてもきちんと用意しておくことは,更に何回か会議をするどこかの段階で,それについて必ず話合いの機会を用意するという形で今後進めていきたいと思う。

徳川委員

 山口委員より一層素朴なことを言うかもしれない。明朝体と教科書体の問題があろうかと思うが,教科書体にもこの字体の考え方は及ぶのだろうか。

小林(第2委員会)副主査

 字体の問題について,どういう活字を採用するか云々という主査の説明が先ほどあったが,今徳川委員のおっしゃってくださった問題に深く細かく踏み込んだところまで,まだ十分に議論が行っていないということである。

徳川委員

 先生が黒板に字をお書きになるときに4画が出るというのは,そのことと関係があるのではないかという気がしたものだから,素人だけれども,ちょっと申し上げた。

小林(第2委員会)副主査

 御承知のように,現在の常用漢字表は3画で書く。したがって,学校教育では3画の「くさかんむり」で学習する。ただ,主査がお話し申し上げたように,先生が,文字の成立とか,いろいろ説明するときには4画というような正体のものを取り上げることはあるだろうということで,先ほどの主査の説明を私は理解している。

清水会長

 第1委員会も,第2委員会も難しい問題を扱っていらっしゃって,特に第2委員会は,これからワーキンググループが集中的に詰めて,1字1字拾うというような作業が控えていて,大変御苦労をお掛けするわけである。今日は時間もなかったが,いろいろ御意見をちょうだいしたので,それを踏まえて,また第1委員会,第2委員会とも作業を進めていただくということである。よろしくお願い申し上げたいと思う。
 何か特別御発言がないようなら,これからの日程について事務局の方からお話しいただきたい。

大島国語課長

 これからの日程についてであるけれども,御確認をお願いしたいと思う。
 次回の総会は第6回になり,10月14日(火曜日),午後2時から4時を予定している。さらに,次の第7回総会について,併せて御確認をお願いする。12月16日(火曜日),午後2時から4時ということで,また改めて御案内申し上げるけれども,よろしくお願い申し上げる。

清水会長

 総会としての日程はそのようにさせていただきたいと思うが,第1委員会,第2委員会がどのような日程で開かれるのかについては,また御案内を差し上げることにしているので,御関心の向きは御出席くださるようよろしくお願い申し上げたい。
 それでは,今日の総会はこれで終了する。

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