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次第・議事要録 第2委員会における論議の概要について1

清水会長

 それでは,第2委員会の主査にお願いする。

水谷(第2委員会)主査

 第2委員会の御報告を申し上げる。
 資料2の「第2委員会における論議の概要−4」の内容に従って,朗読しながら,報告させていただきたいと思う。
 第2委員会は,先の第5回総会以降,7月1日,9月16日の2回開催され,「第2委員会における検討事項」に掲げられた項目について更に論議を重ねた。
 以下に,これまでの論議の概要を報告する。
 なお,第2委員会(第9回)の開催後――この件は,先ほど国語課長から既に御紹介があったけれども――8月1日,8月11日,8月12日,8月25日,8月26日,27日の6回にわたって,ワーキンググループ(字体小委員会)を開催し集中的な検討を行った。
 この一連の小委員会で検討した内容は,第2委員会(第10回)の了承を得て,今回の「論議の概要−4」の骨子となっている。
 この骨子をこしらえるねらいの一つは,実は最終的な方向の骨組みをきちんとしておくためである。もちろんまだ未完成であり,部分によっては文章化されたところもあるが,ある部分はここで当然触れられるべき内容についての見出しだけが付けてあるというような形になっている。この第2委員会の基本方針は,既に総会を通して御承認いただいている四角の中に書かれている考え方に基づいて進めてきているが,読ませていただく。

<今期第2委員会の基本方針>
 現実の文字の使用状況(ワープロ等の表外漢字における字体問題を中心として)について分析・整理し,漢字の字体問題に関する基本理念を提示するとともに,併せて,印刷標準字体・許容字体を示すという方向で答申をまとめることとする。

 すなわち,印刷標準字体と許容字体というのを打ち出していこうということで進めてきている。
 以下,3ぺージにわたって資料があるが,全体は二つの部分に分かれており,四角のすぐ下,「I 総論(基本理念)にかかわること」が第1部,2ぺージの下3分の1のところの「U 印刷標準字体の選定にかかわること」の二つの部分に分かれている。
 「総論にかかわること」の中に幾つか柱を立ててあるが,その柱について順を追って読ませていただく。

1 表外字の字体問題に関する基本的な認識
(1)表外字における字体問題の経緯
 ワープロ・パソコン等に搭載されている漢字は,日本工業規格(JIS X 0208:第1水準2965字,第2水準3390字)に準拠している。
 この規格は1978年(昭和53年)に制定され,その後83年,90年,97年に改正されて現在に至っている。もともと情報交換用につくられた規格であるが,ワープロ等の急速な普及によって,一般の人々の文字生活に深くかかわりを持つようになったものである。現在,早急な解快が求められているのは,83年の改正によって,鴎(←),祷(←),涜(←)のような略字が広く採用され,括弧内の字体(いわゆる康熙字典体)か排除されたことによる,表外字の字体の混乱である。

 このことは,実は今日要望の出ている文藝家協会からの指摘の中にもあるわけである。先を続ける。

 ここでの問題は,@辞書などで用いられているが打ち出せないこと,A鴎とのどちらの字体を標準とすべきか,すなわち表外字の字体の基準がないこと,のニ点にまとめられる。今期審議会はこうした問題の解決を目指すものである。

 字体問題の経緯とこの審議会の報告の目標というものをこの部分で出しておく必要があると考え. このようにしたものである。
 「(2)表外字について,いわゆる康熙字典体を印刷標準字体とする理由」。これは「いわゆる康熙字典体を標準字体とする」という前提で述べている。これは実は第20期の国語審議会の報告の中でも既に出してあって,私どもはそれを受けて仕事をしているが,第20期の報告の中では,※で示したような形で提出されている。

 表外字の字体については,手書き文字や低画素数の文字のことは一応別のこととして,社会一般における印刷文字の安定すなわち異体字をこれ以上増やさないという観点から,伝統に基づく標準性,略字的なものの現在の普及度,機械や技術の進歩による将来性などを総合的に検討しなから考えていく必要があろう。そういう意味での一つの考え方として,現在の社会生活での慣行に基づき,康熙字典体を本則とししつつ,略体については現行のJIS規格や新聞などで用いられているものに限って許容していくという方向も考えられる。

 我々としては,この20期の報告に示された方向を守っていこうということである。実際,いろんな調査を重ねてきて,その結果を見てみると――後ほどその調査の中身については御紹介するが――印刷業界というか,印刷の世界では,この方針を結構守ってきている。鴎のようなものは,意外に使われていないということも分かってきた。
 (3)以下は,タイトルだけが挙がっているものであるが,これは触れなければならない項目の候補だとお受け止めいただければ有り難いと思う。

  • (3) 過去の漢字政策(略字体の採用) との関係
  • (4) 「表外字字体表と常用漢字表との関係」及び「現代の文字生活における常用漢字表の意義」

水谷(第2委員会)主査

 ここではっきり表外字の字体表という言葉を使っている。
 表外字の字体表を打ち出すということを前提にしているが,それは常用漢字表との関係でどう位置付けられるか,ということについてである。
 (5)は「表外字字体表が示す字体の範囲及びその理由」。表外字字体表というのを作るとすると,その表にどの範囲の字体を載せるのか,なぜそれを選んだのかという理由を述べなければならないであろう。
 (6)は「表外字字体表に示されない表外字の字体についての考え方」。(5)で拾い上げた字体以外については,どう考えるかということが,ここで述べられることになる。
 こんなことで,表外字の字体問題に関する基本的なことについてまとめていけるのではないかと考えているわけである。
 2へ行って,「表外字字体表の性格」。
 表外字の字体表は,それではどういう性格を持っているのかということについて述べていく必要かあるであろう。ここには3行半しか書かれていないが,これだけでは少し足りない。何か落ちていることもあると思うので,今日少しでも多く御意見がいただければ有り難いと思っている。
 読んでいく。

法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,表外漢字を使用する場合の字体のよりどころを示すものである。ただし,表外漢字の使用を推奨する趣旨のものではなく,常用漢字表の尊重がその前提である。また,各種専門分野や固有名詞(人名・地名) については対象としない。

 3へ行って,「字体・字形・書体にかかわる問題とその考え方」。今期の審議会が出発した当初から,字体等に関するいろいろな意見について,言葉の定義が大切であろう,きちんとした概念の把握ができていないと議論が行き違ってしまう,考え方が人に伝わらない,用語の定義をきちんとしようということから出発して,ここまで来ているものである。

(1)字体・字形・書体の定義
字体は文字の骨組み(抽象的なもの)であり,その字体が印刷や手書きによって具体的な形として実現されたものを字形という。字形に一定のスタイル(例えば,明朝体であれば,縦画を太く横画を細くして,横画の終筆部にウロコという三角形の装飾を付ける)を与えたものを書体とする。書体には,印刷文字字形としての明朝体,ゴシック体,正楷書体,教科書体等,手書き字形としての楷書体,行書体,草書体等がある。同一字体でかつ同一書体であっても,字形のレベルでは微細な相違が生じ得る。この相違を常用漢字表では,「活字設計上の表現の差,すなわち,デザインの違いに属する事柄であって,字体の違いではない」としている。

 このことに関しては定義の明確化,なかなかうまくできないかもしれないが,できるだけの努力をしなければならないだろうと考えている。 
 (2)以下は. 触れるべき中身の見出しのようなものである。
 「(2)筆写体と活字体との関係」。これは前のぺージのI−1−(2)の問題にもかかわるわけである。手書きの問題から出発すべきだという意見も当初は出ていたけれども,印刷字体の問題に限定していくということ,限定するからには,筆写体とはどういう関係にあるのかということに触れておく必要があるであろう。
 「(3)関係する用語の定義」。先ほどの(1)では,字体・字形・書体という言葉だけを取り上げているけれども,印刷標準字体とか,許容体とか,ほかにもたくさんあるので,こういった類の周辺の用語についても触れておく必要があるであろう。趣旨を正確に理解してもらうための用語の定義が(3)である。
 「(4)康熙字典体の位置付け」。これは時々委員会の中でも議論が出てくるのであるが,常用漢字表では,「いわゆる康熙字典体」という言葉が使われており,その「いわゆる康熙字典体」の意味というのは何かということである。常用漢字表のときに「康熙字典体」という言い方をしないで,「いわゆる」を付けたことの意味が伝えられる必要があるであろう。「康熙字典体」という言葉を使わないで,明治以後,印刷で普通に使われていたというような別の言い方の可能性もあるわけだが,「いわゆる康熙字典体」の定義付けというか,位置付けの問題に触れるべきであろう。
 「(5)「字体の差(鴎かかなど)」と「同一字体におけるデザインの差(「耳」の5画目をとめるか,ぬくかなど)」との関係」。これらについては例示して,ここでは何を定めているのかということをはっきりさせる,特に基本的な考え方について提示する必要があるであろう。実際には,Uの「印刷標準字体の選定にかかわること」の中で詳しく示すことになると思うが,考え方は繰り返し出ていていいわけで,ここの部分で出しておく必要があるであろう。
 「4 その他関連する事柄」。「(1)固有名詞に用いられる漢字の字体についての考え方」。これはまだ煮詰まっていないことだが,固有名詞は表外字の字体表の適用範囲外であるという方針で来ている。でも,固有名詞に用いられる漢字というのは身近な漢字であって,よく使う漢字である。その問題を放棄するわけにはいかないであろう。しかし,固有名詞に用いられる漢字を検討するといっても,どこまで,どうできるかということは大きな課題である。この点についても,こんな形で拾い上げることができたらというアイデアがもしおありなら,是非教えていただきたい。ヒントでも結構であるから,教えていただきたいと思っている。
 「(2)学校教育との関係」。「ア 生徒が常用漢字表の枠の中で学習するという基本線は堅持する」。「イ 「国語科における漢字教育」及び「教科書の表外字」との関係」。この辺りも整理し切っていないので,先ほどの第1委員会のお話の中にも敬語の問題と学校教育との関係のことが出たが,表外字の字体の問題と学校教育との関係についてももう少しきちんと詰めて,理屈を整理して立てておく必要があると思う。教科書体と明朝体との関係はどうなのかとか,教科書で用いる表外字の字体――実際に表外字は随分使われている面がある――について,我々はどういう見識を持っているべきなのかというような課題がある。それについての検討が仕事として残っている。

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