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次第・議事要録 第2委員会における審議状況について

清水会長

 余り時間もなくて,申し訳ないのであるが,次へ入らせていただいて,樺島主査にお願いする。

樺島(第2委員会)主査

 それでは,第2委員会から御報告申し上げる。
 資料2を御覧いただきたい。資料2は,第2委員会における論議の概要で,その5ぺージから第2委員会での具体的な作業の手順,基本的な考え方が別添として付けられている。しかし,最後に,参考として,A3の用紙に一覧できるようなまとめ方をしておいたので,今日はそちらの「印刷標準字体と簡易慣用字体の選定について(概要一覧)」で説明する。
 左の一番上の箱に「目的」が書かれている。常用漢字表外の漢字について,印刷標準字体を示す――印刷をするときの標準字体で手書きは考えていない――とともに,現在使用されている簡略字体の使用についての基本的な考え方を示す。
 この作業をするときの「基本的態度」をその下に書いた。

1 法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活の中で使用される印刷文字字体のよりどころを示すものである。

 それから,漢字というのは何万かあるわけだけれども,その全体ではなくて,印刷標準字体を考える対象として,

2 常用漢字とともに使われることが多い表外漢字に範囲を限って,印刷文字字体のよりどころを示す。

次に, どういう態度で印刷標準字体を選定するかということであるが,

3 現在の印刷文字の使用状況に大きな変化をもたらさないことを最優先する。そのための具体策として,以下の4及び5の考え方を基本とする。

 この「使用状況に大きな変化をもたらさない」というのは,印刷業界など実際に文字を使うところに大きな変化をもたらすと,字体の変更による大きな混乱が生じるなどの問題があるので,できるだけ大きな変化はもたらさない。

4 明治以来,活字字体として最も普通に用いられてきた印刷文字字体で,現在も頻度高く用いられている字体を印刷標準字体として提示する。
5 現在の文字生活の中で十分に定着していると考えられる簡略字体を簡易慣用字体として提示する。

 「簡易」というのは,常用漢字に準じて簡略化された文字で,「慣用」というのは,簡単な形の文字であるが,従来慣用として使われてきたというものである。
 余り時間がないので,詳しい説明は申し上げられないが,真ん中の一番上に,それでは印刷標準字体を考える対象とする文字をどのようにして決めるかということで,資料1,資料2,資料3と挙げてある。前期及び今期の検討過程で使用した資料は,左の一番下の「表外漢字字体関係参考資料集」という箱の中に挙げてある。

樺島(第2委員会)主査

 資料1は,第21期国語審議会審議経過報告「表外漢字字体表試案」における検討対象漢字,資料2は,今回お手元の机の上に置いてあるが,『漢字出現頻度数調査(2)』に基づくものである。(2)となっているが,続きというわけではなくて, (1)は前期資料として使用した資料である。この(2)の中の,凸版印刷の調査における出現順位3227位までを累積すると,使われている総漢字数の99.669を占めるというふうに, ほとんどの漢字が入るという漢字集合の中から表外漢字を抜き出したものが資料2である。資料3は,同じ資料集の中に入っているが,読売新聞で調査された出現順位2606位までの表外漢字集合である。この三つの資料を用いて,三つの資料に共通して出現する漢字は対象漢字として入れる。資料1,資料2のどちらかだけに出現する漢字,資料3の新聞だけに出てくる漢字については, これを1字1字検討して,造語力とか使用範囲の広さ――範囲の広さというのは,いろいろな分野で使われているかどうかということである。さらに,頻度数などを検討して対象漢字を選定した。
 それから,資料1にある「現行JIS規格の「6.6.4過去の規格との互換性を維持するための包摂規準」に掲げる29字」,それから,「平成2年10月20日の法務省民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取扱いに関する通達等の整理について」の「別表2」に掲げる140字」, JIS漢字や名前に用いられる漢字が特に簡略化された文字などを含めているので, これらは対象として欠かせない漢字であると判断した。
 そういうものを対象として,印刷標準字体を決める文字として,何を,どういう範囲で選ぶかを決めたわけであるが,右の箱の中に「対象漢字確定の方針」として三つほど挙げてある。別の用法を持つ字は別字扱いにする。常用漢字の中に含まれている漢字の異体字であっても,特にそれを使わなければならないものは入れるとか,固有名詞にだけ使われるものでも,使われることが多いものを外すことはしないというようなことが書いてある。
 印刷標準字体の範囲を決めて,矢印の下,真ん中に置いてあるが,印刷標準字体を選定する。印刷標準字体を選定するためには,左下の資料集Fに書いてあるが,『明朝体活字字形一覧』を使ったりして,それによって標準字体とすべきものを確認する。異体字がある場合には,それをデザイン差とするか,別字体とするかということは考えることになっている。ただ,今のデザイン差については, これから少し審議しなければいけないので,まだ印刷標準字体とする範囲は完全に決まっていない。
 それから,簡易慣用字体であるが,簡易慣用字体については,右の箱にあるように, 3部首については, 2点しんにゅうとか,そういうものを印刷標準字体とはするけれども,実際に,常用漢字に倣った字形を常用漢字外の文字に適用している場合は変更することを求めない。また, これらの字形を用いることは妨げないというふうに3部首については簡易慣用字体に準じて認めることにしている。
 そのほかのものに関しては,真ん中の下に書いてあるように,○のところから読むことにする。「3部首以外で,簡易慣用字体とする略字体は次の1〜3のどれか」というのは,検討の範囲を決めるものである。 1,『漢字出現頻度数調査(2)』(平成12年)の「凸版調査」における出現順位4504位までに入ってくる略字体,それから「読売調査」における出現順位3015位までに入ってくる略字体, 2,現行JIS規格の29字及び氏名に使える略字体の140字, 3,上記1及び2以外でJIS漢字の第1水準内の略字体を対象として考える。
 その中で,簡易慣用字体をどうやって決めるかというと,その下に「選定基準」の1と2がある。
 1は,略字体と康熙字典体の出現回数を合わせて,つまり同じ漢字だけれども,略字体とそうでない康熙字典体とがある場合には,それを一つに合わせて,資料2のところで検討対象漢字として選んだ範囲の中に入る140回以上,すなわち資料2の3227位の出現頻度数に準じた数ということである。だから,二つの字体に差がないと考えた場合には,お手元にある頻度数調査の資料の中で,対象とする範囲に入るということである。
 選定基準の2は, そういうふうに略字休と康熙字典体とが共に使われている場合に,康熙字典体の出現回数の15%よりも多く略字体が使われている場合にはそれを簡易慣用字体としようということである。

樺島(第2委員会)主査

 資料2の一番最後のぺージを御覧いただきたい。一番最後に「略字体・俗字体等で,印刷標準字体及び簡易慣用字体とするもの」という表が1枚付けてある。ただし,デザイン差とするものがまだ確定していないので,最終的なものではない。
 左半分が印刷標準字体に入ってくる略字体・俗字体である。 1,2,3と並んでいる左側の字が,略字体・俗字体で印刷標準字体になるものである。 1の「刃」という字はいろいろあるが,これはデザイン差とするかどうか,これから検討するものである。「個デ」というのは,特定の文字に限ってデザイン差とする字形を認めるかどうかを今後考えるものである。それ以外は,括弧の中には康熙字典体が入っている。それから,別字扱いとするものは,括弧の中のものと左のものとは別字扱いにする。デザイン差とするものとしては,例として17から23まで挙げてある。 17で言うと,「月」の中の二本の横画の形が真っすぐ横に2本並んでいるものと斜めになっているものがある。 18番の「」は,「冬」の中の点の向きが違う。これらはデザイン差であるから,同じ字体であるとする。これからデザイン差をどうするかということをはっきり決める作業に入る。
 右側が簡易慣用字体として,しんにゅうをはじめとする3部首以外に,簡易慣用字体として入れるもので,括弧の中が印刷標準字体となるもの,括弧の外が簡易慣用字体となるもので, 22番まで選ばれている。10分間でということであったが,15分ほど掛かってしまった。余り詳しくは御説明申し上げられなかったが,このような基準を設けながら,資料を使って,第2委員会では印刷標準字体と簡易慣用字体とを選定する作業を進めているということである。

清水会長

 ただ今お話しの資料2にあるような基準で選ぶと,一番最後のぺージのような形になるということだと思う。
 何か御意見,御質問があったら,いただきたいと思う。
 デザイン差については, まだ最終的なものではないという注釈が付いた部分があったけれども,それ以外は,大体これということだと理解した。

樺島(第2委員会)主査

 デザイン差を決めれば,印刷標準字体として示す範囲が決まるということである。

小林(第2委員会)副主査

 副主査を務めている小林である。今,参考でA3の大きな紙の説明を樺島主査がなさってくださったけれども, これは樺島主査の御労作で,第2委員会の方では,このぺーパーによってお互いの共通理解が非常にすっきりとできるようになったということを御報告申し上げたいと思う。
 資料2の方には,これに基づいて今進んでいる審議が概略書かれているということになるが,その概略については,総会で主査の方から今まで次々と御説明いただいているところに基づいて,着々と進んでいるということである。

清水会長

 このように関連をきちんと書いていただいたので,よく分かるということである。何か御質問はないか。
 最終的な報告書にも,こういう図解のような形のものを入れていただくと分かりやすいと思う。この点は大分御苦心をいただいて,ここまで整理をしていただいた。また,いろいろな資料から,先ほどの基準によって選定してまいったので,この辺で答えが出るのではないかなというふうにも思う。
 また,御意見があったら,第2委員会の樺島主査の方にお出しいただきたい。

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