国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 その他

清水会長

 それでは,御意見をいただきたいと思う。外来語の問題もあるけれども,姓名の問題は長いこと議論されているようである。順番は別に構わないので,御意見があったら伺わせていただきたいと思う。

松岡委員

 外来語に関してであるけれども,小さなことかもしれないが,一つ御考慮いただきたいというか,御考慮の中に加えていただきたいと思うことがある。それは,中黒と言うのであろうか,Vの例に「ハード・ウェア」とあるけれども,これはもしかしたら「ハードウェア」という一語にした方がいいのではないかと思うし,逆に,次の「バリアフリー」というのは「バリア・フリー」の方が分かりやすい。多分「バリアフリー」という言葉を知らない人でも,「フリー」は知っているだろう。そこから類推できるかもしれない。外来語に初めて接したときに,ある推測できる道を付けるということも,きちっと中黒を入れればある程度できるんじゃないかということもあるし,外来語の過度な流入への反対意見として,日本人の外国語習得の障害となるというのがあるけれども,私も長いこと英語教師をしていて,外来語がかえって邪魔になるということは大分考えていた時期がある。それもやはり変なところに中黒が入っていると間違って覚えてしまう。一語であるはずなのに二つの分かれた単語の複合語だというふうに誤解されることもあるので,小さいことであるけれども,そのことも1点入れていただけたらと思う。

水谷(第3委員会)主査

 決して小さいことではないと思う。今おっしゃってくださったような,外来語の表記自体の問題についての話合いはやっていないので,これは是非取り上げて進めたいと思う。

松岡委員

 それは話し言葉だけではなくて,書き言葉だと,例えば,「B」と「V」を「ブ」と「ヴ」に書き分けるかということも新聞社によって違うとか,いろいろと私自身も経験があるけれども,それもある指針というか,何か方向性を付けられるといいのではないかと思う。

水谷(第3委員会)主査

 実は,発音と表記の問題についてはひそかに心配していた。外来語の表記は既に国語審議会から出した答申が内閣告示になっており,「ブ」と「ヴ」についてはそこで扱われているが,あの告示の内容を既に突破した表記が一般社会では使われている。その問題をどう認識するか,委員会として方針を決めるのかどうかというのは,むしろ今後考えなければならないかもしれないが,どこまで踏み込めるか,今やれるかどうかは分からないけれども,そのことを前提にして考えていなければ,いいかげんにすると危ないとは思う。

清水会長

 どうぞ御自由に御発言いただきたい。

小林(第2委員会)副主査

 この報告に「外来語・外国語」とお書きになっていらっしゃるのから触発されて思っていることがある。日本語の表記の在り方というのは,一般的には漢字仮名交じり文で,縦書きでなされている。欧米圏の言葉を取り入れるときに,縦書きの中に横書きスタイルのローマ字を入れて書くには紙を縦にしたり横にしたりといことがあってできかねるから,歴史的に片仮名化して取り込んできたという事情があるのどうか,よく分からないが,そういうようなことをちょっと考えてみたのだけれども,縦書きの問題と横書きの問題というのも議論の中に入ってくるであろうか。
 横書きの場合の文章であると,欧米系のローマ字の言葉というのは,容易に原つづりのまま,つまり外国語のまま取り入れ得る可能性が非常に楽にあるというふうに思う。漢字仮名交じり文と言うときの仮名というのが,和語の場合には平仮名表記ということになるけれども,外来語として片仮名表記で取り込んでくるという形で縦書きの意識の中で考えると,片仮名表記とか,ここにもあるようなBODとかCAIという略語形だったら縦書きでも取り入れられるけれども,日本語の表記体系それ自体が横書きを意識していったら,漢字仮名外国語交じり文というような方向へ進むことも考えられるのではないか。今既に専門領域の中ではかなり進んできていると私には見える部分もあるので,そういう表記体系は視野の外なのか,それも配慮の中にあるのかということを若干思っていた。
 何でこんなことを言うのかというと, 20世紀前半の教育レベルと20世紀後半の教育レベルというのは,中学校での外国語教育,主として英語というのが選択でもって学習され続けてきて,国民の外国語の知識レベルが上がってきた。21世紀に入ると,教育課程の中で中学校の外国語というのは必修になっていくということになると,片仮名表記の問題よりも,むしろ漢字仮名交じり文ではなくて,漢字仮名外国語交じり文の方向へ日本語というのは当然行かざる得ないというところがあるのではないか,ということは考えてもいいのではないかということも思ったりしたわけである。
 もう一つは,工学とか経済とかいうような特定の専門領域の中では,外国語そのものであった方がむしろ鮮明によく分かる,概念がつかみやすいということがあるので,専門領域における言語の問題・表記の問題と,新聞や雑誌のような一般の領域の問題は分けて考えなければならない面もあるのではないかということも, ちょっと思ったりしたので,発言してみた。

水谷(第3委員会)主査

 今のお話の後の方の専門領域と一般の人というのは,割合繰り返し議論している。受け手の立場に立ち,先ほど申したように,普通の人は専門領域の語には触れていないので,そのような語を扱う場合には配慮を要するという,そこは多分打ち出すことになると思うけれども,前の方のお話に関しては,今期の第3委員会が責任を持って答えを用意できるかどうかというのはちょっと難しい。
 私どもの関心の中に,「外来語・外国語」と両方を中黒でつないで出していることの意味というのは,現状のことを考えると,それこそNHKのテレビ番組でも「ニュース9」と書いて「ナイン」と読む読み方が一般化している。「11・イレブン」というのがある。実態としては,日本語の助数詞,数詞のセットの「ーつ,ニつ」系列のほかに,「1,2,3」系列があるという言い方では済まなくなって,「ワン,ツー,スリー」のセットがイレブンまで行っているという状況がある。こういうことが一般的なレベルでもあり,一方,専門領域の話題として,片仮名語にわざわざ替えて覚える必要があるのか,英語で入れればいいではないかということが学術用語の委員会で問題になったことがあるが,そういう現実のことを考えると,これについては我々は何か見通しを持っていなければいけないということを感じる。しかし,責任を持って報告の中に入れられるかどうか, ちょっと気になっている。
 こういった問題を解決していくためには,非常に広い視野が多分求められ,必要になってくる。漢字が日本に初めて入ってきたときには,漢字の文字の表記が入ってきたので,そこでは今のような問題はなかっただろう。現在は, 日本文字があるために,その日本文字の仮名への移替えが可能な段階が存在していて,その先に私どもが位置付けるローマ字で入る部分があるわけである。この辺の問題は, もしかすると継続してしっかりやらなければいけないかなと思っており,そのことについては次回の委員会で是非話をしたいと思う。

甲斐委員

 私は,国立国語研究所で行った外来語の実態調査にかかわった関係で,1年間,外来語のことを考えてきたのだけれども,最近は,辞典は『外来語辞典』というのは大変少なくて,9割以上は『カタカナ語辞典』というように名称を変えていることが分かった。例えば出版社で言うと,三省堂の『コンサイス外来語辞典』というのが昔あったが,中身は余り変わっていないけれども,『コンサイスカタカナ語辞典』というように名称が変わってきている。これは今お二人の委員がおっしゃったように,外来語・外国語を併せたものを搭載しているからだと私は思っている。
 今日の6ぺージの試案のところで一番問題になるのは,VのB「国際的に共通に使われている語」だと私は思っている。これは国際的に共通に使われているから使用していいではないかということであろう。実は私どもが「白書,広報紙等における外来語の実態」の報告書を作成して,新聞社が取り上げてくださったら,たちまちにある省から質問が来ている。国際的に使われている語である,国語研究所はどう思うかというような質問が来ているわけであるが,国際的に共通にという「共通」が専門領域だけではなくていろいろな分野で「共通に」であれば,私は良いと思うけれども,ここのところを第3委員会では今後問題にしていかなければいけないのではないかと思っている。

牛島委員

 全体的に拝見して, とてもすばらしい方向に行っていると思う。大変注目されるべき, また興味のあるというか,国際化の時代において大変バラエティーに富んでいるというか,あらゆる方面に配慮されているなということを感じる。
 ただ,ーつ気になるのは,先ほどからのお話で,「センター」とか「サービス」という一般化されてしまった言葉に対しても,行政に対してなるべく使わないような方向でということを提案すべきではないかということが書いてあるように,私には感じられた。日本において,特に地方行政においては,新しい言葉を使うことによって地方全体が活性化したり,新しいイメージになったり,夢のある生活を提案したりということで,行政の方はとても頑張っていらして,元へ戻すというのであろうか,古い言葉に直すことによって,逆に抵抗があるという部分があるんじゃないかと私は思うのである。世の中がこれほど新しく動き,言葉が歩いているというか,先に進んでいて,実際上はここまで来ているのに,国語審議会がこうあるべきじゃないかという指針を示すのは大変重たいことだと思うので,その辺はもうちょっと考えた方がいいんじゃないかなという気が私はした。
 実際に,国際語的なものであれば, どんどん使ってもいいんじゃないかと私は思っている方なのである。もちろん縦書き,横書きの問題も関係していて,審議会の資料も全部横書きになっているし,新聞とちょっとした週刊誌ぐらいが縦書きで,国語の教科書以外は全部横書きになっているところを見ても, どんどん進んでいるな,止めようもないなという感じがしているわけである。
 そんな中で,なるべくこれはやめましょうという方向で行政機関にまで働き掛けるというのは,私はちょっと心配である。逆に,今時,審議会は何を考えているんだ,古いと言われるんじゃないかという気がする。むしろ国際化ということを考えていくんだったら,それを余り強く出さない方がいいんではないかという気がするので,ちょっとお考えいただければと思う。

水谷(第3委員会)主査

 本当に,基準を決めるというのは難しいことである。縦横みたいな,そういうたぐいの問題,外国語を日本語の文章に入れるかどうかという問題もあるが,資料を御覧いただくと,各都道府県の方針が県によってばらばらなのである。地域差が随分ある。こういう地域の差があるような日本の状況を考えると,どこに標準を当てて,この線で行こうという方針を立てるか。――もし,外来語に対して緩やかな姿勢で方向を設定すると,割に保守的な方策を採っているところの人たちにどれぐらい荷物を背負わせることになるのかなという,その辺りがすごくつらいと思う。

小池委員

 姓名のローマ字表記のところで,ささいなことかもしれないが,ちょっと気になったことは,つまり日本人とは何かという話なのであるが,例えばニューヨークタイムズの大変優秀な文芸記者に日本人名の女性がいるわけである。彼女は当然アメリカ人だと思うが,確か「by Michiko Kakutani」と,当然のようにアメリカ人として日本人名の書き方をしているだろう。つまり国籍の問題と民族の問題と文化の問題と言語の問題をどう考えたらいいのか,その上でこういう問題にどう結論なり何なりを出すべきなのか,出さざるべきなのか。これは意見というよりは思い付きで,少し気になるなというところである。

水谷(第3委員会)主査

 これも話合いをさせていただく。

清水会長

 姓名の表記の仕方は,今期で何とか答えを出そうということであろうか。

水谷(第3委員会)主査

 今期に出さなければならないようであるが,今のような問題にすっきりしたナイフとフォークを用意して意見が出せるか,だんだん自信がなくなってきたので,委員会でしっかり話し合いたいと思う。

清水会長

 各委員会からもその点で御意見があったら,いただきたいと思う。
 まだ御発言いただいていない方が大勢いらっしゃるかと思うけれども,ちょうど時間となったので,この辺で議事を終わることにしたい。最後に次回の予定を事務局の方から連絡してもらう。

鎌田国語課長

 9月8日(金曜日)2時半から4時半まで,同じ東條会館で開催したいと思う。開催通知は後ほどお送りする予定である。また,各委員会の開催予定についても,後ほどお送りしたいと思う。

清水会長

 9月8日,午後2時半からということで調整をお願いしたいと思う。
 この辺である程度のまとめ,そして12月に報告という格好になろうかと思うが,各委員会にはいろいろと御苦労があるけれども,またよろしくお願い申し上げたい。
 これで総会を終わらせていただきたいと思う。

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