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外国(中国)の地名・人名の書き方に関する主査委員会
◎決定したこと
- この案の規定は,主として民国以後のものに適用する。
- 原則1の中国音を基準にするのは,中国名の地名人名だけに適用し,辺境のモウコ系その他の地名などには適用しない。
例外は8地名とする。このうちカントンは市名の場合(現地名はコワンチョウ)だけとし,省名の場合にはコワントンとする。 - 原則2の「なるべく中国音に近い,発音しやすい‥‥」のうち「中国音に近い」の文句は,原則1と重複するのではぶく。
- 四声,寛音・窄音の区別はつけない。寛音・窄音はn.ng と表現を改める。
- かな書きの方法は,ペキン語の411音節を基礎とし,これを実用的見地からやわらげる。説明にはウェード式を用いてもよい。
- 一応の審議がすんだら,5社の代表と協議し,さらに外務省,逓信省,地理調査所,水路局その他関係方面の意見を聞く。
◎問題となった議論の要点
1 有気音,無気音の問題
- ウェード式では区別しないので外電を受けた新聞社の翻訳係が困る。
速さをたっとぶ報道面では,実行が困難である。 - 無気音を濁音字であらわせば同音の地名を少なくできる。区別することを本則としても,必ずしも新聞などでの書きわけを厳密に要求しなければよい。
- 以上の議論が対立したが,中国地名2,000を調査の結果,区別すると406,原案のままなら550,漢字の日本よみでは569の地名が同音語となって消える。
2 オー,オウの問題
- 日本人の耳には区別がむずかしい。書きわけても一般に行われがたい。
- 日本人にもいいわけができる。区別して書けばそれだけ同音の地名が減る。また書きわければ,かな書きのものからローマ字や漢字を引き出すのに便利である。
3 ティ,トゥの問題
- 5社側としてはティーは残したい。が,ティエ,ティエンはむずかしく,ティエンはチエンときかれるおそれがある。トゥー,トゥンは語中に出てくると,アナウンサーはいいにくい。印刷上はトウン,トウーとよまれるおそれがある。
- ティを採るならトゥも採るべきである。万一まちがって読んでもトゥーをトーと発音するからかまわない。
4 ミウ,ティウ,ニウ,リウ,チウ,シウの問題
- リウといってもリューと聞く。アナウンサーにも発音の区別を徹底させにくいから1本の長音としてあつかいたい。
- すじの通った方をとりたい。教えるときはリウと教える。ただし,リューと読んでもゆるせばよい。
〔第6回〕
昭和24年4月28日 午後1時半から 国語研究所で
(議 事)
有気音,無気音の書きわけの可否について審議し,「有気・無気は区別しない。ただし,必要ある場合には区別してさしつかえない。」とすることに決定。ただし,必要ある場合の内容は厳密には規定しない。
その他 案の全体について検討,修正を行う。