国語施策・日本語教育

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外国(中国)の地名・人名の書き方に関する主査委員会

〔懇談会における意見等要領〕

(水路局)

 かな書きには原則的に賛成だが,海図からローマ字をはぶくことはできない。かな書きよりも,むしろ英名かウェード式1本を希望する。

(地理調査所)

 外国地名は,現地音にもとづき,日本人に発音しやすいように書くが,慣用名のあるものはそれに従うのが原則である。シナも外国だから,結局はこの3原則によるべきものと思う。

(外務省)

 外務省としては,あいての立場習慣を尊ぶから,外交文書などについてこの案を使うには,その点からの研究が必要である。

(逓信省)

 中国向け郵便物をあつかう職場にシナ文字の素養のある職員を配置しなければならなくなる点で問題になる。

(和田氏)

 同文のシナ文字をかなにする必要はない。かなで書くとしても日本音で書くのがよい。シナ音は多数の日本人にとっては無用であり,国際的にもかなで書いたのでは通用しない。

(石田氏)

 日本人の大多数は中国語を日常生活に必要としない。シナの名でも,たいていは当用漢字の組合せでできているのだから,制限外の漢字についてだけ考えればよいのだ。

(菊地氏)

 シナの現代音を日本のかなでは正確に書きあらわせないとすれば,これを採用するのはどんなものだろうか。

(清田氏)

 この案の前提となった当用漢字すら,まだ実験中のものであるのに,放送や教科書など独占的なものに適用し,国民に強制しているのはけしからん。こんどの案も,もう放送局で実施しているが,適用のしかたについて慎重にやってほしい。

(放送協会)

 放送局では2・3年来研究して,反対論がなかったので実施に移した。
漢字をシナ音で読むのではなくて,上海はシャンハイとするのである。有名人の名は4割が当用漢字外のものが用いられている。国民の多数は今でも中国の地名・人名を漢字で読み書きできず,将来はいっそうである。支持者がある限り,放送局は,これを続けて行きたい。

(共同通信社)

 わたくしどもは,次代の国民のため,できるだけ当用漢字表を守りたい。過渡期の現象と根本精神を混同しないでほしい。

(毎日新聞)

 中国の地名・人名の読めない漢字をそのままにできないとすれば,かな書きにするほかない。かなで書けば上をシャンと読むのだと教える不便もない。ウランバートルでもチャムスでも,かなで書けば,ずっとわかりやすくなる。中国向けの郵便物は漢字で書けばよいのであって,欧米向けのものを,それぞれの国の文字で書くのと同じである。

(文部当局)

 当用漢字・現代かなづかいは決して試験中のものでなく,国家としては決定したものである。われわれは,国語の簡素化がさきの吉田内閣以来の基本的な政策としてきまっているので,事務的に国語審議会案を支持するのである。

(安藤会長)

 むずかしい漢字をへらすのが,漢字制限である。

(原主査委員長)

 これからは,漢字を考えないで,カントンならカントンでおぼえてしまおうというのが,この案の趣旨である。これはシナ語を学ぶ便利のために用いるのではない。

(松坂委員)

 これまでのように,知識階級にさえ便利ならば,国民大衆はどうでもよいというのではいけない。中国の地名人名でも,少数学者にしかよめない漢字よりも,だれでもわかるかな書きの方が国民大衆にとってよいのである。

(倉石委員)

 中国の地名・人名を漢字の日本音でよむのは,中日の連絡をはばむものである。少しでもむこうの音に近いものを知れば外交上にもよい。

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