国語施策・日本語教育

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次第 開会のあいさつ

開会のあいさつ(安倍会長)

 本会は,さきに第11回の総会において現代かなづかい,第12回の総会において当用漢字表,第13回において当用漢字音訓表ならびに当用漢字別表を可決しまたが,それらはすでにそれぞれ内閣訓令同告示によって,各官庁の公用文,文部省発行の国定教科書に実施されることになったばかりでなく,一般社会においも,大多数の新聞と雑誌がその採用にこれと歩調をあわせておりますのは,われわれがそれらを議決した趣旨が実際にその効果を表わしていると認められる事実でありましてまことに喜ばしいことであると考えます。しかるに今日社会の一部では,これら国字問題解決の具体案について,なお疑いの念をいだいている人々もあり,かつ反対の意見を発表している人々もないではありません。しかしながら,われわれはえらばれた社会の良識として責任を感じるとともに,国民生活から一刻もゆるがせにしがたい国字問題の解決には,それらが最善の第1歩であることを確信するのであります。
 漢字の使用は,われわれの生活の伝統の中に深くゆきわたり,国語表記に幾多の便利を与えるものである一方において,解決すべき多くの問題をもつものであることは,いなむことのできない事実であります。漢字に関する問題としては,これを約言いたしますと,三つの問題,すなわち漢字の種類および数の問題と,そのよみ方――音訓の問題 その形――字体の問題とが考えられます。
 われわれは昭和21年度において当用漢字表を審議するに当って,その音訓と字体との整理については,決定を後日に期したのでありましたが,音訓の整理に当用漢字音訓表によって解決され,今日はその字体に関して,「当用漢字字体表」を議題にのぼすことになったのであります。
 漢字の字体は,音訓の複雑さにおとらず複雑なものであります。その複雑さは字源的に複雑な点画構成によるばかりでなく,時代時代の変形がすべて今日に併存するところに生じております。しかも,それは,権威のある標準が定められていないことによって,簡単な字体がいつまでも正体としての地位をえず,諸種の字体の併存が放任されているのであります。従来試みられた字体整理の案は,あるいは教科だけに,あるいは新聞だけに実行されたにとどまり,全国民的な規模において標準となったものではありませんでした。それゆえに教育上・印刷上,あるものは新聞を,あるものは康煕字典を,あるものは説文をというようにまちまちな標準をとって漢字を書くこととなり,いよいよ文字生活を複雑なものとして来たのであります。
 今日われわれが,この字体表を議決し,文部大臣に答申いたしましたならば,所定の手続きをもって内閣から公告されることになるでありましょう。その時には,この字体の整理統一の仕事が,全国民的な標準として,その効果を国民の文字生活の上にもたらすでありましょう。主査委員会において原案となったものは,新聞ならびに印刷関係者を主とした,活字字体に関する協議会の作成するところであります。印刷界ならびに新聞界では,かような統一的な権威ある標準を期待しているのであります。
 どうかじゅうぶんな御審議を願いたいものと存じます。

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