文化庁月報
平成23年6月号(No.513)
連載 「言葉のQ&A」
「破天荒」は,「豪快で大胆」?
インターネットで「破天荒」という語を検索してみると,「
- 問1 「破天荒」は中国の故事に由来する言葉だと聞きました。元々の意味を教えてください。
- 答 「破天荒」は宋の時代の説話集『
北夢瑣言 』にある故事に由来する言葉です。元々この言葉は,「誰も成し得なかったことを初めて行うこと」という意味で使われたものです。
「破天荒」は,中国,宋の時代の説話集『北夢瑣言』にある故事に由来する言葉です。「天荒」とは、まだ開かれていない土地,未開の地のこと。唐の時代の
(「天荒」は天地未開の時の混沌たるさまで,これを破りひらく意)今まで誰もしなかったことをすること。未曽有。前代未聞。「―の大事業」
・『明鏡』(大修館書店)
今までだれも成し得なかったことを初めて行うこと。未曽有。前代未聞。「―な試み」
では,実際の文章の中で,どのように使われてきたのかを見てみましょう。次に挙げるのは,石川啄木の小説です。語り手が久しぶりに帰ってきて見た故郷盛岡の様子について語っています。
……県庁は,東京の某省に似せて建てたとかで,今は大層立派な二階立の洋館になって居るし,盛岡の銀座通と誰かの
「北夢瑣言」の故事のように,誰かが偉業を成し遂げるという内容ではありませんが,盛岡の街に,かつてはなかったものが,新たに見られるようになった未曽有の変化を「破天荒な変化」と形容しています。「豪快で大胆な様子」として捉えると文脈が通りません。
- 問2 「破天荒」について尋ねた「国語に関する世論調査」の結果を教えてください。
- 答 全ての年代を通して,本来の意味ではない「豪快で大胆な様子」を選んだ人が多くなっています。

平成20年度の「国語に関する世論調査」で,「彼の人生は破天荒だった。」という例文を挙げて,「破天荒」の意味を尋ねました。結果は次のとおりです。(下線を付したものが本来の意味。)
(ア)誰も成し得なかったことをすること・・・・・・・・・・・・・・・16.9%
(イ)豪快で大胆な様子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64.2%
(ア)と(イ)の両方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.4%
(ア),(イ)とは全く別の意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.3%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12.2%
年代別の結果を示すグラフからも分かるとおり,この言葉については,全ての年代を通じ,本来とは違う「豪快で大胆な様子」という意味で使う人が多くなっています。60歳以上では半数を下回るものの,それを除いた年代での割合は,7割弱〜7割台後半になっています。
「破天荒」の故事のうちの,「未曽有」「前代未聞」という部分が,「破・天・荒」という漢字のイメージと結び付いて,ほかでは見たことのないような破れかぶれで大胆なことをする様子や荒っぽく豪快な様子などを指す言葉として用いられるようになったのかもしれません。その結果「豪快で大胆な様子」という意味で捉える人が多くなっているのでしょう。

