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文化庁月報
平成23年10月号(No.517)

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連載 「いきいきミュージアム エデュケーションの視点から」

この夏のプログラム,ベビーカー・ツアー

愛知県陶磁資料館主任学芸員 佐藤一信

目次

  1. 1 はじめに
  2. 2 ベビーカー・ツアー実施まで
  3. 3 当日の様子
  4. 4 これからに向けて

はじめに

 この夏,愛知県陶磁資料館では初めてベビーカー・ツアーを実施しました。ベビーカー・ツアーは,ベビーカーを押した親が自ら美術鑑賞を楽しむと同時に,美術鑑賞をとおして子どもの世界を広げたい,そんな希望をもつ子育て世代に向けたプログラムです。
 ベビーカー・ツアーは,基本的には同内容で8月17日(水)と20日(土)の2回実施しました。参加者は事前募集しましたが定員(6組12名程度)はすぐに一杯になり,期待の高さが窺われました。後にわかったことですが応募者の全員が当館初来館でした。

ベビーカー・ツアー実施まで

 本プログラムは,当館のごく近隣に位置し,親と子のためのさまざまな「遊び」のプログラムを行ってきた愛知県児童総合センターとの共同企画「土・泥・ねんど 2011」の一環として行ったものです。当館と児童総合センターとの連携は,アートと遊びと親子をテーマに児童館と美術館とを繋ぎ,自在に行き来して楽しんでもらいたいというねらいから始まりました。
 当館では10年以上前から親子を対象とした美術鑑賞を行ってきました。対象となる子どもは小中学生が中心でした。そして鑑賞の方法はグループでの対話型です。
 こうした当館でのこれまでの美術鑑賞プログラムの展開と,文化庁の平成20年度芸術拠点形成事業に採択された当館と児童総合センターとの共同企画「アートと遊びと子どもをつなぐプロジェクト 親子で遊ぶ!土・泥・ねんど」に始まる連携から,今回のベビーカー・ツアーは実現しました。
 児童総合センターの遊びのプログラムを立案実施するスタッフの中には,保育や臨床心理を専門とする方もおり,準備段階でのきめ細やかな助言から,シミュレーションの実施,そして実施当日の手厚いサポートまで,言うなれば背中を押され,さらに支えていただき,何とかベビーカー・ツアーを実施出来たというのが実情です。
 また愛知県内の美術館学芸員,フリーランス・エデュケーター,大学教員,学生等が参加し活動しているアート・エデュケーション研究会の協力も大きな後押しとなりました。具体的には,参加者に企画の意図を伝えるコンセプトカード作成や当日の鑑賞ガイド等を共に行っていただきました。

子どもたちと楽しく

子どもたちと楽しく


子どもたちと楽しく

子どもたちと楽しく

当日の様子

 当日のプログラムの流れは1回目と2回目では若干変更しました。ここでは1回目の反省を生かした2回目を主に紹介します。参加者には受付時に企画の意図を伝えるコンセプトカードをあらかじめ配布し,待っている時間に目をとおしていただくように伝えました。
 全員が集まった後,まず,スタッフ,参加者全員の簡単な自己紹介から始め,保護者の方々に今回の企画意図や,作品を見ること,見ていく方法などについて説明しました。
 そして現代陶芸作品が並んでいる展示室に入り,まず全員一緒に同じ作品を見て気付いたこと,感じたことを各保護者にそれぞれ話していただきました。同時に,子どもに対し,ガイド役だけでなく,保護者の方にも話しかけてもらいました。すでに言葉が話せる子や,話せない子の場合も目の動きや指さしといった反応も含めてさまざまなお子さんの気付きを受け止めてくださいと伝えました。
 子どもと一緒に楽しむ鑑賞の具体的な仕方については,例えば見る高さについて,保護者の方が普通に見た後で,「では,今度は○○ちゃんの目の高さで見て,○○ちゃんの世界に近づいてみましょう。」というような促し方をしました。ある参加者は「(鳥のような生き物の作品を見て)見る高さで表情がまったく違う,目のところが変わって見える,下から見ると少し笑っているようにも見える」と発言し,子どもに「◯◯ちゃん,笑っているよ。みてごらん」と話しかけて一緒に見ていました。

これからに向けて

 今回のベビーカー・ツアーはわずか2回の実施でしたが,多くの課題が明らかになりました。例えば,鑑賞の主体を親と子にどうバランスをとるか,0歳から3歳までとした広い対象年齢の設定の見直し等です。全員が作品鑑賞の時間を楽しく問題なく過ごすためには,他の対象向け鑑賞会とは異なる配慮が必要だということも実感しました。
 しかし,開催中の参加者の反応や,終了後にびっしりと記された感想からは,企画に対する参加者の一定の満足が読み取れ,また今後のプログラム継続への期待の声も寄せられました。
 終了後の感想には,「……親の方としては,普段は子連れでどうしても足早に作品を見なければならず,今回のように逆に子どもをきっかけにじっくり作品を見れたのはとても痛快でした。」「自分たちが楽しめただけでなく,娘もとっても楽しそうで,家族のいい思い出になりました!……うちのような言葉が出かかってる年齢の子には,いろんな言葉を話せるいいきっかけにもなりそうです。」等が記されていました。
 今後はこのベビーカー・ツアーをどのような形で継続させていけるかを模索し,子育て世代の方々も安心して美術鑑賞を楽しめるよう,努力していきたいと考えております。

愛知県陶磁資料館

〒489-0965  愛知県瀬戸市南山口町234番地

お問い合わせ
0561-84-7474
開館時間
9:30〜16:30
(7月1日から9月31日の間は,17:00まで開館。ただし,入館は閉館の各30分前まで)
休館日
毎週月曜日(休日の場合はその翌日。12月28日から1月4日まで)
観覧料
常設展示 一般 400円(320円)  高大生 300円(240円)  中学生以下無料
※( )内の料金は20名以上の団体
ホームページ
http://www.pref.aichi.jp/touji/top.html別ウィンドウが開きます

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