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文化庁月報
平成23年11月号(No.518)

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連載 「言葉のQ&A」

「枯れ木も山のにぎわい」の意味

文化部国語課

 「枯れ木も山のにぎわいですから,是非パーティーに来てください。」 ……人を招待するときに,このような表現を使うのを聞いたことはありませんか。この場合「枯れ木も山のにぎわい」は,参加者が多くいた方がにぎやかになっていい,という意味で使われているようですが,本来の意味とは異なっています。「枯れ木も山のにぎわい」の本来の意味を確かめてみましょう。

  • 問1 「枯れ木も山のにぎわい」の本来の意味を教えてください。
  • 答 「枯れ木も山のにぎわい」の本来の意味は,「つまらないものでも,ないよりはましである」という意味です。

まず,「枯れ木も山のにぎわい」の意味を国語辞典で調べてみましょう。


・「広辞苑」第6版(平成20年 岩波出版)

 枯木も山の(にぎ)わい 枯木も山の風致を添えるものである。転じて,つまらない物も数に加えておけば無いよりはましであることのたとえ。

・「大辞林」第3版(平成18年 三省堂)

 枯れ木も山の(にぎ)わい 枯れ木でも山に趣を添える。つまらぬものでも無いよりはましであるという意。


 辞書が示す「枯れ木も山のにぎわい」の意味は,つまらないものでもないよりある方がまし,という意味です。木が生えていない土ばかりの山では殺風景である。たとえ枯れてしまったつまらない木であっても,多少の趣を添えることができ,ないよりもあった方がにぎやかになってよい。……「枯れ木」は「つまらないもの」の例えですから,人を招待するときや目上の人に対して用いるのは失礼になります。本来は,招待を受けた側が,「私のような者がお招きにあずかるのは畏れ多いことでございますが,「枯れ木も山のにぎわい」と言いますから,是非参加させていただきます。」などと用いる言葉なのです。


 続いて,近代の小説から,「枯れ木も山のにぎわい」の使い方を見てみましょう。林不忘(はやしふぼう)の「丹下左(ぜん) こけ猿の巻」の中の一部分です。

 二重三重の剣輪が,ギッシリ左膳をとりまいている。こうなってはいかな左膳でも,空を()け,地にもぐる術のない以上,一本腕のつづくかぎり,斬って斬って斬りまくらなければならない……。
「ウフフ,枯れ木も山のにぎわいと申す。よくもこう木偶(でく)の坊がそろったもんだ」
 刀(きず)の影深い片ほおに,静かな笑みをきざませて,左膳は野太い声でうめいた。

(林不忘「丹下左膳 こけ猿の巻」昭和9年)


 ここに示されている「枯れ木も山のにぎわい」は,取り巻く剣陣の数は多いのに,左膳一人も倒すことのできない相手陣を見下してのせりふの一部分です。ここでは,「木偶の坊」がそろっている状態について,「枯れ木も山のにぎわい」と捉えた上で,「弱くてつまらない者でも,いないよりはいる方がましと言うからな。」と笑っているのです。

  • 問2  「枯れ木も山のにぎわい」について尋ねた「国語に関する世論調査」の結果を詳しく教えてください。
  • 答 本来の意味で使っている人が38.6%で,本来とは違う意味で使っている人が35.5%となっており,余り差がありません。30代と60歳以上では,ほとんど同程度になっています。

 平成16年度の「国語に関する世論調査」で,「枯れ木も山のにぎわい」の意味を尋ねました。結果は次のとおりです。(下線を付したものが本来の意味。)

(ア)つまらないものでも,ないよりはまし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38.6%
(イ)人が集まればにぎやかになる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35.5%
(ウ)(ア)と(イ)の両方の意味で使う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.5%
(エ)(ア)と(イ)のどちらの意味でも使わない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12.1%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9.2%

枯れ木も山のにぎわい

 この言葉については,本来の意味である「つまらないものでも,ないよりはまし」という意味で使うと答えた人の方が,本来の意味ではない「人が集まればにぎやかになる」を選んだ人よりも多くなっていますが,両者の差は,3ポイントと小さく,年代別の結果を示すグラフからも分かるとおり,60歳以上ではほとんど差がなく,30代では後者を選んだ人の割合の方が1ポイント高くなっています。
 「枯れ木も山のにぎわい」が「人が集まればにぎやかになる」という意味として用いられるようになってきたのはどうしてでしょうか。一言で言えば,「枯れ木」=「つまらないもの」という意識がなくなってしまい,「人が集まればにぎやかでよい」というところだけに力点が置かれるようになったためだと考えられます。

 元々は,招待を受けた側が,「つまらない者でも,いないよりはまし」という謙遜の気持ちで使っていた言葉でしたが,そのことが相手に理解されなくなり,単純に「人が多い方がにぎやかでよい」という意味で受け取られるようになっていったのでしょう。それが,招待する側からも用いられるようになり,相手を「枯れ木」=「つまらないもの」になぞらえてしまっていることに気付かないまま,「人が多い方がにぎやかでよいので,来てください」という意味で使われるようになっていったのではないでしょうか。

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