HOME > 文化庁月報 > 連載 「いきいきミュージアム 〜エデュケーションの視点から〜」

文化庁月報
平成24年3月号(No.522)

文化庁月報トップへ

連載 「いきいきミュージアム 〜エデュケーションの視点から〜」

あなたにとって心地よい美術館は?「みんなの美術館プロジェクト」

女子美術大学美術館学芸員 梅田亜由美

目次

  1. 1 みんなの美術館プロジェクトとは
  2. 2 課題を共有し,共にデザインしていくワークショップ
  3. 3 プロジェクトの発見を,全国へ

 あなたにとって心地よいのは,どんな美術館ですか?一人で行く時,家族で行く時,友達と行く時……その時々で,美術館に「こうあってほしい」という思いは,変わるのではないでしょうか?
 今回は,そのようなさまざま(・・・・)な思いから出発して,美術館のあり方を考える「みんなの美術館プロジェクト」についてご紹介します。

みんなの美術館プロジェクトとは

 「みんなの美術館プロジェクト」は,美術館を利用する人,利用したいけれど利用しづらいと感じている人など,さまざまな立場の人の「こんな美術館だったらいいな!」というニーズ(思い)を共有することから,美術館の課題や魅力を発見し,さまざまな人にとって心地よい美術館を目指すプロジェクトです。
 しかし,美術館だけで「心地よい美術館」を考えると,ひとりよがりなアイデアになってしまう可能性があります。そこで,このプロジェクトは,私のような学芸員や美術施設だけでなく,NPOや大学の研究者など多様なメンバーから成る「美術館×インクルーシブ×デザイン実行委員会(※注)」によって運営しています。また,さまざまなニーズを知り,美術館を変えていくアイデアを生み出すために「インクルーシブデザイン」の手法を用いたワークショップを行っています。

展示室を観察(メインユーザーは乳幼児連れ)

展示室を観察(メインユーザーは乳幼児連れ)

課題を共有し,共にデザインしていくワークショップ

 「インクルーシブデザイン」とは,高齢の人や障がいのある人など,これまでデザインのメインターゲットになりにくかった人に,積極的にデザインに参加してもらう手法です。ワークショップでは,視覚・聴覚に障がいのある人,乳幼児連れの人,外国語を母語とする人など,回ごとに特性を設定し,特性をもった美術館利用者が「メインユーザー」として参加するとともに,特性をもたない美術館利用者も一緒に参加します。参加者は5〜6名(メインユーザー1名を含む)のグループとなり,グループごとに以下の作業を行います。

相談しながらメモを整理中

相談しながらメモを整理中

アイデア発表はイラストで楽しく!

アイデア発表はイラストで楽しく!

(1)展覧会だけでなく,美術館全体を観察する。設備,サービス,人,安全,ストレス,楽しさ……など,利用時のあらゆることについて,メインユーザーの気づきを中心に良い点・改善点をメモする。

(2)メモの内容を共有しながら,内容の近いメモをまとめ,分類する。

(3)メモをヒントに,「こんな美術館あったらいいな!」というアイデアを作り,発表する。

 作業内容だけでは,生真面目でむずかしい印象を受けるかもしれませんが,実際には作業テーブルにお菓子が置いてあったり,「考えるアイデアは必ず青天井」という制約(?)から突拍子もないことを考えて話が盛り上がったり,和気藹々とした雰囲気で楽しく進めています。このワークショップはこれまでに,横浜市民ギャラリーあざみ野と当館で実施しており,いずれの会場のワークショップでも,当館の学生ボランティアが運営サポートとして参加しています。

プロジェクトの発見を,全国へ

 2009年から本格的に始動したプロジェクトは現在,ワークショップから生まれたアイデア(解決策)を少しずつ試行し始め,ワークショップで得られた課題やアイデアを整理・公開して全国の美術館(ミュージアム)と共有することを目指しています。それは,各館にやり方を見習ってもらいたい,急激な変化を求めたいということではありません。私たちの活動を何らかのヒントやきっかけとして,各館がそれぞれに合ったやり方,ペースで,心地よい美術館作りに少しずつ動き出すことを願っています。
 今年の秋には,シンポジウムを開催する予定です。ミュージアムに関心をもつ方に,広く参加していただければ幸いです。
みんなの美術館プロジェクト別ウィンドウが開きます

※注

美術館×インクルーシブ×デザイン実行委員会
エイブル・アート・ジャパン
横浜市民ギャラリーあざみ野(公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団)
平井康之(九州大学大学院芸術工学研究院 准教授)
半田こづえ(筑波大学大学院博士課程)
松浦昇(東京藝術大学大学院映像研究科博士課程修了)
ライラ・カセム(東京藝術大学大学院美術研究科修士課程)
梅田亜由美(女子美術大学美術館 学芸員)

女子美術大学美術館

〒252-8538 神奈川県相模原市南区麻溝台1900 女子美術大学相模原キャンパス10号館1階

お問い合わせ
042-778-6801
開館時間
10:00〜17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日
火曜日(特別開館の場合あり),年末年始,展示替え期間
観覧料
展覧会に応じて設定
ホームページ
http://www.joshibi.ac.jp別ウィンドウが開きます(女子美術大学ホームページ内)

トップページへ

ページトップへ